77 ピンチとチャンスは紙一重(Ⅴ)
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「──あの、リンちゃん?」
恐る恐るといった感じで月乃さんが遠野花鈴に話しかける。
「しばらく休む? 追加で水もらう?」
あれから坦々麺を完食した遠野花鈴は、机に突っ伏して動かなくなっていた。
汗を流しすぎて、さながら人間加湿器の様になった彼女は死屍累々としていながらも声を上げる。
「心配、む、無用ぅ」
そういって右腕を天に向かって突き出し、親指を突き立てる。
原因と現状はだいぶ下らなさそうなのに、何故だか妙にカッコ良かった。
──そもそも、これってもしかしてミオちゃんが何かやったのかな?
今から思い返すとあの不自然な停電とか、なんかサムズアップしてみせたミオちゃんの姿とか、妙な胸騒ぎがする。
何か要らぬサポートとか何かしたのかも知れない。
いや、その結果がコレなのも謎だけども。
取り敢えず、この店を出たらちょっとミオちゃんを撒こう。
ふたりにもそれとなく協力してもらって。
そう心に決めておいて、取り敢えず次の予定を聞いてみる。
「ちなみに次ってどういう予定だったりします?」
「つ、次は──」
▽▲▽
なんとか、食べ切った──。
食べ終えた器をテーブルの隅に追いやり、思わず机に突っ伏す。
我ながら頑張った、よくやったよボク。
ぶっちゃけもう何も隠し通せてない気はするけど、言質取られなかったらきっとセーフ。
セーフとする。
「──あの、リンちゃん?」
恐る恐るといった感じでキノがボクに話しかけてくる。
「しばらく休む? 追加で水もらう?」
「心配、む、無用ぅ」
激辛で喉がやられてて、若干変な声になったかもしれないが心配しないように言及しておく。
「ちなみに次ってどういう予定だったりします?」
いや紫波雪風。
もう少しはボクを労われ。
明らか満身創痍やろ、死屍累々だろ。
死体に鞭打つな、優しくして。
──いやまぁ、自業自得な気も若干するけど。
次の作戦は、ちょっと様子みるか。
連チャンで失敗続いたし、これ以上続いたらマジで身が保ちそうにない。
いやでも、ここまで来たら全力で駆け抜ける方が──。
色々とぐちぐち考えながら、それでも口は勝手にその答えを放つ。
「つ、次はゲーセン」