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74 ピンチとチャンスは紙一重(Ⅱ)

 それでは、紫波雪風を貶める第二作戦を始めよう。


 さっそくボクは、バックの中からあらかじめ取り出してポケットに忍ばせておいた小瓶に指先を触れさせる。

 この小瓶は市販のラー油瓶の中身を入れ替えたモノ。

 じゃあ中身は何かというと、真っ赤な濃縮ハバネロエキスである。

 事前にカレーに2〜3滴垂らして試食してみたが、とても人類が食べれる辛さではなかったように思う。

 あまりの辛さに、お腹壊したから。

 これを、隙をみて紫波雪風の坦々麺に混入させる。

 ボクたちの前で悶絶し、醜態を晒すがいいわ!


「美味しそうだね、私は辛いのちょっと苦手だから坦々麺は食べれなさそうだけど」


(わたくし)もそこまで得意じゃ無いですけど、激辛じゃなければ大丈夫ですわね」


 馬鹿め、これから貴様の坦々麺は激辛になるのだよ!!

 それではさっそく、隙を作ろうか。

 小瓶に触れてる右手とは逆の手でスマホを操作し、アプリを使って自宅PCに遠隔で指示を送る。

 瞬間、ふたりのスマホが同時に鳴り出す。

 今、ボクは自宅のPCからふたりのスマホに対して偽造迷惑メールを送信したのだ。

 一瞬、視線がそれぞれ自分のスマホに移る。

 その瞬間を見逃さず、小瓶の蓋を開け、身を乗り出しさっさと紫波雪風の坦々麺の器に濃縮ハバネロエキスを数滴混入させる。


「──あれ、リンちゃんどうかした?」


 乗り出した身体を戻す時、ちょっとキノに目撃された。


「あー、いやちょっと虫がいてね」


 そう言って手で虫を払うジェスチャーをする。


「先月あたりから増えてきたよね、夏が近いからかな?」


「暦的には6月はもう夏らしいですわよ」


「だったっけ?」


 ──よし、上手く誤魔化せた。


「じゃあ、ボクたち麺類だからキノには申し訳ないけど先に食べていい?」


「気にしないでいいよー」


「それでは、お言葉に甘えまして──」


 そうやって、紫波雪風が手を合わせる。

 ちゃんといただきますと仕草込みでやろうとしているあたり、やはり育ちはいいな。


「いただきま──」


 さぁ、激辛に苦悶するがいい!

 醜態を晒すがいいわ、紫波雪風!


 だが次の瞬間。


 ──バチン!


 いきなり店内の全照明が消えた。

 日中で、窓も多いから真っ暗にはならないものの、一瞬で薄暗くなる店内。

 いきなりの停電に、小さな悲鳴が所々で上がる。

 ボクも停電になった瞬間、反射的に真上の照明を確認してしまった。

 スタッフが慌てないように客たちに呼びかけてる。


「大丈夫、ただの停電っぽい。慌てないで」


 ボクもふたりに言って、慌てない様に促す。

 キノと紫波雪風のことだから、これぐらいで動揺することはないとは思うけど一応念のため。

 これは何が原因の停電だろうか?

 外はどうなって?


 そんなことを一瞬考えたが、答えを出す間もなく店内の明るさがまた戻る。


「い、今のなんだったんだろ?」


「さぁ、わからないわ」


 停電は時間にして1分未満くらいだろうか。

 まぁ、ここは考えても仕方なかろう。

 原因を調べるわけにもいかないし。


「まぁ、気を取り直して食べようか」


 ボクはそう言って紫波雪風に対して食事をはじめる様に促す。

 紫波雪風とボクは同じタイミングで手を合わせた。



「「いただきます」」

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