69 昼食にて(Ⅱ)
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現時刻はピークである正午をだいぶ過ぎたあたりなのだけれど、それでも入店まで10分くらいかかりそうな感じがあった。
そうなると、会話の内容は自然とさっきまで見ていた映画の内容になる。
「さっきの映画、リンちゃんはどうだった?」
「結構面白かったよ。ボクは原作読んでいたけど、いい意味でオリジナルの要素も混ぜ込んで昇華させてたと思う」
「え、どこが原作になかったの!?」
──突然だけど、三人組で話をする時ってひとりなかなか話に入れない人いない?
相槌くらいはできても、程よく会話に混ざれなくてなんだかんだ黙ったままになっちゃう人。
ずばり、私がまさしくそのタイプです。
前世でも今世でも友達全然いなかった人間ですから?
所謂グループトークに慣れてないとしたって当然だろう。
完全に蚊帳の外になってしまった感じがある。
だが、ここで蚊帳の外になったとしても流石に友達同士でいるのにスマホ開いて暇潰しをするのは感じが悪い。
いやまぁ、私は悪役令嬢ですから感じが悪くても良いのかもしれないが。
「あ、えっと──」
「やっぱり配役は絶妙だったと思う。話題性だけのキャスティングじゃなくて、キャラクターに合わせにいってたよ」
「そうよね、なんか見てて違和感なかったもの」
「それでね──」
「──う」
ダメだ、今もう完全にふたりだけで盛り上がってしまってる。
私が入り込む余地がない。
もしかして、上映前になんかやっちゃったこと根にもたれてしまったんだろうか。
嫌われてしまったのだろうか。
わざと、月乃さんは無視してるのだろうか?
段々と嫌な想像が頭を埋め尽くし始めた。
──どうしよう。
▽▲▽
紫波雪風が会話に入りきれてない。
この状況は意図していたモノとは違うが、これは嬉しい誤算だろう。
確かに思い返してみれば、紫波雪風は友人関係が広いタイプの人間じゃない上にその存在感や肩書きから
だからこそ、複数人グループで自分が中心にいない状況に置かれた経験が殆どないのだろう。
その結果、今回会話にあぶれてしまった。
まぁ、だからなんだという話だけども。
今は列に並んでいるという都合上、キノも視野が物理的に狭くなって自然とボクのみと話が弾んでしまっているだけだ。
入店してテーブル席に座れば、そんなことは無くなるだろう。
だから、紫波雪風がちょっと嫌な思いするのは今だけ。
しかし、さっきは痛い目を見せられたのだ。
偶然だとはいえ、この状況を最大限に利用させてもらおう。
ボクはそう思って
体調不良の為、三日ほど更新を休止します。
申し訳ありません。