61 まずはジャブから
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ボクはこの状況に対し、さっそく内心で舌打ちをした。
わざと紫波雪風には本来の集合時間より一時間後集合と連絡してあり、そこで一回キノからの好感度減少を狙ったのだが失敗してしまった。
ボクからのメッセージだと絶対に警戒すると思って、わざわざキノ名義で送ったのにな。
ちなみにどうやったのかというと、実はグループライン自体に細工をしてある。
具体的には、ボクのスマホには
ひとつは、キノとボクと紫波雪風
もうひとつは、ボクと紫波雪風とキノ
要するに、真に三人が登録しているグループラインというのは存在せず。
ふたつのグループをボクが無理矢理繋げているのだ。
キノがグループラインに送ったメッセージをボクがキノ名義でサブスマホから紫波雪風に送り、紫波雪風のメッセージは同様の手口でキノに送る。
このやり方は非常に面倒ではあるが、メリットも大きい。
まず、キノと紫波雪風のメッセージ内容を検閲できること。
次に今回のように、偽りの情報をボク以外の名前で送信できること。
これにより、下手に紫波雪風から距離を取るよりもより効率的に妨害工作が出来るようになる。
ーーまぁ、何故か今日は失敗したが。
万が一の想定で一時間以上前に到着しているとは。
根は用心深い性格をしているらしい。
その用心深さ、疑り深さは確かに
ここから先の計画も、もしかしたらある程度勘づかれている可能性もあるかもしれない。
目を見て何かを察せられると困るから、取り敢えず視線は合わせないでおこう。
「じゃあ、ちょっと予定が早まったけど、早速行こうか」
ついでにさっさと話題も逸らそう。
そう思って、率先して発言をする。
「最初の予定って、何ですの?」
あえて今回の予定はふたりには伏せてある。
表向きの理由は「キノをサプライズで楽しませる」だけどーーいや、その理由もちょっとはあるんだけど真の理由は別だ。
真の理由はずばり、紫波雪風自身にこちらの作戦を予測させないこと。
今まではなんか先手ばかり取られてきたが、ここから先はそうはいかない。
こちらから仕留めにいこう。
ここでボクは、最初の罠が待ち構えているエリアを口にする。
「最初は、モールに併設されてる映画館へ行く予定だよ」