60 決戦開始のファンファーレ
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「天気、よし! 服装、よし! 待ち合わせ時間、余裕あり!」
完璧ではないか、と私は内心で自分自身を褒め称える。
天気は、晴れ。
突き抜ける青空というよりは、ちょっと雲の比率多め。
しかしそのせいか日差しはやや弱めであり、初夏にしては案外涼しくて過ごしやすい気温になるだろうと今朝の天気予報は告げていた。
次に服装。
クリーム色をベースにしたチェック柄のエレガントワンピース。
高級ブランドではなく、大衆ブランドの商品で、ソレでいて高級感があるシンプルなデザインのモノをチョイス。
「あんまり高いブランドモノ着て行くと嫌味になりますよ。あと、お嬢様は素材がいいんですから、シンプルな服装がベストです」
そう言って選ぶのに協力してくれたミオちゃんに感謝!!
さらに待ち合わせ時間。
昨日グループラインで月乃さんから「11時に駅前の噴水近くで」と言う連絡が来ていた。
そこで私は万全を期してーー。
「一時間半も前に到着済みだったり!!」
現在、午前九時半。
だいぶ早い時間の到着である。
ーー我ながら早すぎたかな?
よく考えたら、これからココで一時間半ひとりで時間を潰さなきゃならないのでは?
「もしかして、これはある意味しくじり?」
今から何処かで暇を潰す?
でも、大体のお店って十時とか十一時の開店だったような。
じゃあコンビニ?
そうやって私が額に手を当てて、うんうん悩んでいると、遠くからひとりの少女が歩いてくるのが見えた。
欠伸を噛み殺しながら気怠げな表情をしている彼女の名前はーー。
「え、遠野花鈴?」
「ーーげ、紫波雪風」
お互いがお互いを嫌な顔をして見つめ返す。
今日の彼女は、黒タイツとホットパンツにカットソーというボーイッシュな装い。
そのファッションは彼女にはピッタリ合っていて、可愛いのだけど、絶対にその感想は口にしないでおこう。
まぁ、それよりも気になるのが。
「まだ待ち合わせ一時間以上前ですわよ?」
「へ? あ、あぁうん。ソウダネー」
私の言葉を何故か変に誤魔化そうとする遠野花鈴。
ーーうん、怪しい。
追加で言及しようと口を開こうとした時、遠野花鈴とは別方向にあるバス停の方からタッタッタという軽快な足音が聞こえてきた。
「あ、みんなおはよー!」
足音と声に振り向くと、そこにいたのはやはり月乃さん。
ポロシャツと長めのデニムスカート、赤いチェックのアウターを着た美少女。
ーー私服だとかわいさ倍増感がやばい。
でも、びっくりだ。
一時間以上前に全員揃ってしまった。
「お待たせしちゃったかな。でもみんな早いね!」
「いや、みんな早すぎるくらいでは?」
「そうかな?
ーーさん、じゅっ、ぷん?
その言葉を聞くと同時に、遠野花鈴の方へ顔を向ける。
彼女は、私と目線を合わせない。
ーーーーうん。
さっそく仕掛けてきたな、遠野花鈴!