59 決戦前夜(Ⅱ)
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深夜。
ボクは、唐突にパチっと目が覚めた。
「いや、違うか」
正確には、全然寝れてないから目が覚めたも何も無い。
なんとなく、ようやく眠気が来たかなって時にいきなりまた眠気が遠のいたのだ。
暗闇の中、ベッド横のスタンドに置いたスマホを手探る。
手に触れたソレの電源を入れると、真っ暗な世界に目に優しく無いブルーライトが入る。
急なその光に対して少し目を細めたボクは、時間を確認する。
「成る程、草木も眠る丑三つ時と言うやつか」
要するに、午前二時。
まだ午前二時と捉えるべきか、もう午前二時と捉えるべきか。
「寝なきゃならないんだけどな」
元々、ボクにはそう言う性質はあった。
テストや旅行の前日とか、そう言う日は何故だか眠れない。
自分としては特別緊張しているといった自覚は全然ないのだけど。
こういうのは遺伝するのかな、とも思ったが転生してその前提が崩れた今でも性質は変わらない。
コレはもう身体の性質ではなく、
「機会があれば一回研究してみたい気はする」
同じ
コレを比較検証することで、人間の本質に迫れるーー的な。
ーーまぁ、戯言か。
そんな無意味な
「いや、確かに現実逃避はしたい」
ここのところ、中々疲れる日々が続いていた。
キノの攻略対象のはずである宮古くんがボクに告白してくるし、断ったのに何故かグイグイくるし。
なんかキノと紫波雪風は変に仲良くなり始めたし。
あと、妙にふたりが宮古くんに構うというか、変なパスを出すというか。
まぁ、それは多分気のせいだとは思うけど。
兎にも角にも、最近は思い通りにならない事が多すぎて慢性頭痛に悩まされる日々。
しかし、それもきっと明日で終わりだ。
「キノの誕生日だ、
明日、キノと紫波雪風の仲を引き裂いて紫波雪風の排除へ王手をかける。
さすれば、ボクとキノの未来は安泰だ。
間違いない。
ーー間違いない、よな?
「いやもう、取り敢えず早く寝よ」
この日のために色々準備してきたんだ。
寝不足で万全を期せないのなら意味がない。
そう決意して、ボクは布団を頭からかぶった。