55 告白アフター(Ⅰ)
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ばたん。
ドアを閉めるその音は、心なしか大きく響いた気がする。
そこからボクは、ひと息に階段を駆け降りる。
普段ならこんな事はしない。
危ないし、割と優等生で通っているボクのキャラではないから。
しかし、今だけは許して欲しい。
「ーーっ!」
心臓は早鐘のように、もしくは競輪の
早く、早く、痛みを伴って身体を熱くする。
駄目だ、コレは駄目だ。
今のボクは、冷静さを欠いている。
宮古杖助はキノの相手になるはずの男子で、そんな彼に告白されたことは、計画の大きな妨げで。
マイナスな感情を感じなければおかしい。
ーーおかしい、はずなのに。
「完全に、予想外だぁぁぁぁぁ!!」
まるで青春映画のワンシーンのように、叫びながら学院を飛び出す。
あぁ、知ってしまった。
今のボクは、
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立ち尽くす杖助くんの元に駆け寄った
慰めるように杖助くんに寄り添う月乃さんとアヤメちゃんが、こちらを見てさっきの発言に対してこう聞いてきた。
「脈アリってどういうこと? あれはどうみてもーー」
月乃さんの言葉には、少し棘があった。
それはきっと自分たちが行ったことへの罪悪感の裏返し。
これ以上杖助くんを傷つけるようなことを、無責任なことを言わないで。
そんな意志を感じる。
彼女の言葉に対し、私は確信をもって答える。
「いや、アレは脈アリよ。宮古杖助が遠野花鈴と付き合える確率はまだ高いわ」
その言葉に、杖助くんが何かに縋るように私の方を見る。
彼の状態を確認して、話を続ける。
「よく考えて、思い出して下さるかしら。遠野花鈴は
「あぁいう言動?」
「人を傷つけそうな言葉、というか人との関係性を断つような厳しい言葉を使う子だったかしらということよ」
私の指摘に、月乃さんは口元に手を当てて考えてこむ。
「確かに、普段のリンちゃんっぽくなかったかも」
そう、遠野花鈴は普通は相手を傷つけそうな言動は絶対にしないのだ。
単に彼女が優しいからというわけじゃなく、多分理由としては関係性の維持を何より重視しているから。
いつもの彼女なら、杖助を傷つけない優しい言葉を掛けつつ
彼女がそれをしなかったーーいや、出来なかったと言うことは。
「遠野花鈴は、動揺していたし慌てていた。つまり、宮古杖助の告白はちゃんと
「そ、そうなんですか?」
まだ不安そうに、杖助くんは言ってくる。
直接拒絶された彼は、やはりダメージをだいぶ喰らっているからだろうか。
だからこそ、私は言うのだ。
「明日からが真の勝負ですわよ」