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53 愛の告白はこうするんだ!(Ⅳ)

 ▽▲▽


 放課後。

 ひと足先に屋上にたどり着いた(わたくし)たち四人は、入り口の裏にある物陰に隠れて遠野花鈴の到着を待つ。


「だ、大丈夫ですよね、本当にやるんですよね!?」


 緊張であたふたし始める杖助くん。

 それを月乃さんが隣で、大丈夫だと落ち着けようと声をかける。


「宮古くんは優しいし、いい子なのはリンちゃんもわかってるから充分成功の目はあるよ」


「ほ、本当ですか?」


「本当だとも! 我ら『宮古杖助応援隊』を信用しなさい!!」


 そういって私はなんか適当にカッコいいポーズを取ってみせる。

 するとすかさず月乃さんとアヤメちゃんも私の後ろに回って、なんかカッコよさげなポーズを取り、さながら戦隊の決めポーズみたいになる。

 風が強い分、殊更ヒーロー感出てる気がする。


 本当ノリいいよね貴方たち。

 そう言うところ大好きよ。


 そんな事していると、ガチャっと入り口のドアノブが鳴る。

 ーー来た!


「き、来ました! ど、どどどどうしましょう!?」


「どうもこうも、腹を括って行くんだよ!」


 げしっと踏ん切りがついてない杖助くんに蹴りをお見舞いして物陰から追い出す。

 つんのめるように出た杖助くんの姿を、ドアから現れた遠野花鈴が目撃する。


「え、宮古く、ん?」


「ーーはい、宮古杖助です」


 どちらも緊張しているのだろう。

 様子がぎこちない。


「宮古さん大丈夫っすかね?」


「まぁ、一応(わたくし)たちなりにベストは尽くしたわ」


 告白にロマンチックさを求める月乃さんと、シンプルな実直さを求める私との折衷案。

 放課後に無人の屋上に暮れる夕日のコントラスト。

 嫌味にならない、過剰な感じもしない程度にシチュエーションには拘り、そして告白の言葉はシンプルに。

 大好きですとか、愛してますとか。

 僕と付き合って下さいとか。

 そんな感じで言葉をかける手筈になっている。


 私たちが物陰から見守る中、とうとう杖助くんが口を開く。


「ぼ、ーーは、とーーさーーことが、だーーきでーー!!」


「え!? なに!?」


「ーーとつきーーてくーーい!!」


「なんて!?」


 ーー嘘でしょ。

 風が強すぎて伝わってない!?

 しまった。

 乙女ゲームや少女漫画では、屋上告白はテッパンだったから失念していた。

 屋上は基本、風が強い!

 声が、少し離れた位置からだと風の音にかき消されて全然届いていない。


「(宮古くん、もっと近づいて!)」


 月乃さんが小声でそう声援を出す。

 しかしこの声が届くわけがないから、多分思わず出ちゃった感じだろうか。

 杖助くんも声が聞こえていない事態に少しテンパって来たみたい。

 ちょっとあたふたして来てる。


 そして次の瞬間、彼は思いがけない行動を起こした。


 ズンズンと遠野花鈴に近づいていき、ガッシと両方を掴むと、至近距離でこう叫んだ。




「僕の隣にずっといてください、花鈴!!」

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