52 愛の告白はこうするんだ!(Ⅲ)
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光陰矢の如し。
瞬く間に太陽は傾き、白亜の校舎を朱に染める。
有り体に言って、放課後になってしまった。
HRの終わりと共に、誰にも気付かれないようにこそこそと教室を後にする。
自分でこう言うのはアレだが、ボクはソコソコ人気者なのだ。
これもまぁ、キノを導く為に色々コネクション作りに勤しんだ副産物である。
だからこそ、放課後の予定を聞かれたり誘われたりするパターンが割とある。
しかし、今回はソレを避けなければならない。
無論それは告白の呼び出しという、外せない上に非常に口外し辛い用事があるからだ。
「
こっそり呟き、なるべく親しい人たちがいそうなルートを避けて、屋上へ繋がる階段がある方へ向かっていく。
正直に言うと今日一日中、ずっとソワソワして気が気じゃなかった。
前世でのボクは、普通に思春期の男子高校生。
ちょっとエッチなラブコメ漫画なんかをこーっそり読んだりしていた、健全少年だった。
だからこそ、可愛い女の子からの告白とか密かに憧れてはいたのだ。
「まぁ、今回の相手は男子だろうけど」
いつにも増して独り言が多いのも、多分そのせい。
考え事をする時、ついついソレを声に出してしまう。
自分の口で考えを言うことで、思考を整理しようとする悪い癖だ。
焦っていたり慌てていたり、無意識でいたり動揺していると今でもついやってしまう。
「つまり、今のボクはちょっと冷静ではない」
屋上へ向かう階段を登りながらひとりごちる。
そう言えば、この学院の屋上って確か閉められてたはずだな。
この手の青春モノの屋上って、だいたい開放されてるけど現実の学校だと安全面の理由で閉鎖されてる場合が殆どだ。
以前はこの世界も創作物の中なのだから屋上は立ち入れると思っていたが、入学早々に調べてみたら駄目だった。
鎖と南京錠でガッチガチに拘束されていた。
じゃあ何故差出人は、屋上を指定したのだろうーーそう思っていたら階段を登り切った。
屋上へ続くドアは、以前と同じように鎖と南京錠で封印されーーてなかった。
どちらもキチンと外されていた状態だった。
「何故外れて、いや今は後回しか」
ドアノブに手をかける。
ここに来て、いよいよ緊張してきた。
この先に誰がいるのだろうか。
ドキドキと心臓が高鳴る。
ーーそして、高鳴るついでにある事に思い至る。
「いや、ちょっと待て。よくよく考えたら、今のボクって
ボクは女の子として生まれ、育ってきたが、中身は男子だ。
正確には男子の記憶が目覚めただけなのだけど。
つまり、今のボクの性自認はどちらなのか?
男子なのか、女子なのか。
なんやかんや確認してこなかった難問に、今ちょっとぶち当たった。
果たして、ドアの先にいる男子にボクは恋愛感情を抱けるのか?
「ーーえぇい、南無三!」
ここまできたら、どうにでもなれ!!
そんな気持ちで、ボクはドアを開けた。