46 陰キャゲーマーと悪役令嬢(Ⅳ)
「あの遠野花鈴を好きになる人間がいるとは」
それが何故か攻略対象の一角だなんて。
「なんかこんなコトワザあったよね? なんだっけ、虫が選り好みするやつ」
「
「それだ!」
まぁ、実際は遠野花鈴は蓼とは言い難い。
容姿は私や月乃さんと比較しても遜色ないほど、全然良い。
加えてコミュ強で、男女ともに交友関係が広い。
もしかしたら、真っ当な見方をするなら月乃さんや私よりモテる要素が多いかもしれない。
認めたくないけど。
「よし、ちょーっとタイム」
「え?」
両手でT字を作り、杖助くんに一時的に
そして私は教室の隅に移動して、アヤメちゃんを手招きで呼び出す。
「なんですか、ユキちゃん様」
「いや、これどーしようかと思って」
杖助くんが遠野花鈴に恋をしてる。
この場合の
「どう諦めてもらうか、です?」
「そうだね、うん」
アヤメちゃんは私の意図をしっかり理解して返してくれた。
しかし、私はソレに対して歯切れの悪い言葉を漏らしてしまった。
「なんか、ちょっと釈然としなさそうですね」
「うん、ちょっと釈然としてない」
乙女ゲームな世界だから、杖助くんは月乃さんと付き合うべきーーみたいな感じはある。
けど、残念ながら此処は現代日本。
一夫多妻でもなければ、一妻多夫という訳でも無い。
つまり、
ひとりが選ばれれば、当然他の男の子は失恋だ。
ーーそんなのは当たり前のことだ。
逆ハーレムなんてあり得ないのだ。
そんな選ばれない人が絶対に出る。
本心で月乃さんを思って恋愛バトルして勝ち取ったのなら、敗れても納得するかもしれない。
だが、今回は違う。
彼が今好きなのは遠野花鈴であり、月乃さんじゃない。
つまり、ここで彼に対してその感情を否定して無理矢理月乃さんの方を向かせるのは、間違いなのではなかろうか。
「杖助くんの気持ちは本物かもしれない。それなのに勝手に諦めてもらうように何かするのは、ちょっと嫌な感じがする」
「うーん、確かに」
アヤメちゃんもそう言って、腕組みをして考えこむ。
ここで、私たちはどうするのが正解なんだろう。
彼の気持ちを尊重するのに一番良い方法はーー。
「
「え!?」
私の口からでた言葉に、アヤメちゃんは驚きの声を上げる。
「杖助くんがちゃんと遠野花鈴に告白して
「一応聞きますが、万が一OKされたらどうします?」
ーー。
ーーーーーー。
その時はその時。
なってみてから考えよう。
私は計画的な行動が苦手なのだ。