45 陰キャゲーマーと悪役令嬢(Ⅲ)
「ぼ、僕が遠野さんのこと、好きだってーー」
「ーーは?」
一瞬。
冗談抜きで時が止まった。
誰だエターナルフォースブリザード使ったやつ?
ーー
「え、マジで言ってます?」
「マジですけど? え、じゃあなんで僕正座させられてるんですか?」
いや、知らんがな。
その正座は自分からやっただけじゃないか。
まさかの事態に、私は目頭を押さえて天を仰ぐ。
仰いたとて、目に写るのは突き抜ける蒼天じゃなくて狭くて暗い天井だったけど。
悲報・推しのひとりが悪女に誑かされていた件について。
マジウケるーー、いやウケないわ。
「じゃあ、お姉さん詳しく話を聞かせてもらえるかしら」
「あの、どうやら同級生っぽいんですが?」
「
「は、はいぃ!?」
まぁ、前世のぶん足せばアラサーくらいの精神年齢だからお姉さんと自称しても大丈夫だと思うが証明手段ないし説明めんどくさいから一旦黙らせる。
さぁ、
「あ、あの彼女とは入試の時に席が近くて、その時に僕は大ぽかをやってしまいまして」
「大ぽか?」
「消しゴム、忘れてきちゃって」
なんだその程度?と一瞬思ったけど、そう言えばココの入試ってマークシート式だったわ。
マークシート式で消しゴムないのは、ちょっとまずいわね確かに。
だってあとで間違いに気がついても直せないんだもの。
それが今後の人生を左右するかもしれない入試の時なら尚更。
「それで動揺しちゃって、そしたら事情を知った遠野さんが予備を下さりまして。後日入学式で御礼を言って、少し話をするようになりまして」
「なるほど?」
「ーーはい」
「え、それだけ?」
「それだけ、です」
たったそれだけの事で好きになっちゃったの!?
驚いて「これマジ?」って表情でアヤメちゃんの方を振り向く。
てっきりアヤメちゃんも「ちょろすぎてヤベーっすね」みたいに返してくれると期待していたら、実際の彼女は眼を瞑って腕組みをしながらしきりに頷いていた。
「え、アヤメちゃんは理解できちゃう感じ?」
「出来ちゃう感じです」
「え!?恋の始まりってもっとなんかこー、運命感じちゃう的な奴じゃないの?」
「ユキちゃん様は、漫画読みすぎて現実見れなくなっちゃった系ですか?」
「そういうアヤメちゃんはノリで雇い主に不敬働いちゃう系ですか?」
まぁ、実際。
私は乙女ゲームしかせずに青春を終えた女ですがなにか?
私は乙女ゲームに費やした青春、全然惜しく無いですがなにか?
ーー嘘つきました、やっぱ惜しいです。
「
ーー訳知り顔で玄人ぶってるアヤメちゃんが初恋処女なの、私知ってるからね?