43 陰キャゲーマーと悪役令嬢(Ⅰ)
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「水曜日って、一週間の山場だと思うのよね」
「突然何を言いだすんです?」
「土日を除けば一週間は五日、そのちょうど真ん中が水曜日。この日が過ぎればあと二日頑張ればお休みなのよ。ーーアヤメちゃんには、これがどういう意味かわかる?」」
「いえまったく」
「水曜日はなんかやる気出ない」
「わかるー」
そんな他愛のない、ついでに中身もない会話をしながら私とアヤメちゃんは中庭のいい感じの木陰で昼食をとっていた。
ちなみにメニューは焼きそばパンとカツサンドにフルーツティー。
お嬢様みがまるで無いけど、高校生的にはまさしく
普段は学食なのだが、今日は天気が非常に良い。
だから私たち以外にも大勢が、中庭に出て昼食をとっている。
そしてその他大勢の中には、奴の姿もあった。
私たちとはだいぶ離れた日向のベンチで、他クラスの女子グループに混じって手作りらしきお弁当を食べてる。
木陰と日向、惣菜パンと手作り弁当、みんなとふたり。
この妙な対比構造に、若干世界の悪意を感じざるを得ない。
あちらが、私たちがいることに気がついてないっぽいのもちょっと腹立つ。
なんだ?
私たちは眼中にないってか、あ゛あ゛ん?
暇つぶしに視線に呪詛とやっかみを乗せて送信していると、あることに気がつく。
「あれ?」
「どうしました?」
一瞬うたた寝しそうに首を微かに揺らしていたアヤメちゃんがそう聞いて来た。
起こしちゃってちょっと悪いなーとは思いながらも、言葉を続ける。
「いや、遠野花鈴たちのちょっと後ろの方に誰かいる?」
中庭の隅に近い木の裏のところ。
そこにぼんやりと背の高い影が立っていた。
あれは誰だ?
そう思い、良く眼を凝らしてみる。
例の影の正体はーー。
「あ!? 杖助くんだ!!」
「わっ! び、びっくりした。いきなり叫ばないで下さい!」
宮古杖助くん。
この
マッチ棒みたいなシルエットで、ゲーム大好きオタクくん。
私も陰キャだから、攻略中は謎のシンパシーを感じていた。
ゲーム本編では、同じクラスメイトだったから毎日
クラス違うし、部活やってないし、すぐ帰る上に何故か昼休みも教室にいない。
今まで会いたくても会えなかった重要人物をようやく発見した。
「アヤメちゃん、急いで! チャンスだ、捕まえるよ!」
「え? いや、あの、状況説明は!?」
慌てるアヤメちゃんを置いて、私は走り出した。
あのメタル○ライムみたいな攻略対象を逃がさない為に。