41 悪役令嬢と買い物(Ⅱ)
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プレゼント選びがひと段落ついて、私と剣将くんはフードコートで一休みしていた。
今回、大変参考になった御礼にファストフードを奢り、ふたりで食べる。
同じLLサイズのポテトをつつきながら、ちょっと気になっていたことを聞いてみる。
「ところで、何故貴方はそんなに女子のプレゼントとかに詳しかったのかしら?」
「うちにはハデな姉貴がいてよ。その姉貴がべらべら喋ってくる内容を長年聞き流していたら、なんとなく知識が付いちまったンだ」
「な、なるほど」
なんかこういうコトワザあったよね。
こう、一休さん的なナンカが。
あれよね、つまり昔から睡眠学習的なのは有効だと言われてたみたいな。
まぁ、それはともかく。
剣将くんにそんな秘密があったとは。
いや、彼に姉がいることは知っていた。
設定資料集に書いてあったし。
けど、それくらい。
そのお姉さんが本編に出てきたこともないし、本編でソレ関係のエピソードも殆どない。
だから全然そのことは忘れてしまっていたのだけど、そうか。
案外、設定資料集とかの内容もちゃんとこの世界には反映されているのか。
それはーー盲点でした。
あとで設定資料集の内容、頑張って思い出そ。
ついでに、目の前で山盛りポテトを頬張る剣将くんの顔をじっと見つめてみる。
「な、なンだよ?」
「いえ、別に」
所謂、年頃のスポーツ少年であるはずなのに彼の顔にはニキビ痕ひとつない。
ある意味、男子にあるまじき美肌だ。
これももしかしたら、お姉さん直伝の知識でバッチリスキンケアしているからかもしれない。
ーーそれはそれとして。
「ポテト食べすぎですわ! シェアなんだからちょっとは遠慮や配慮みせて下さい!」
さっきからポテトの減りが早い!
食べ盛り男子の胃袋を舐めていたか!
無くなる前に私も本格参戦する。
「あ、お前! お嬢様の癖に意地汚くないか!?」
「お嬢様だからジャンクフード普段は禁止なのよ! それにいつだって末っ子は食い意地張ってるモノよ!」
「末っ子って初耳だけどな!」
「
「矛盾してねーか!?」
なんか、こういうコトにちょっとした楽しさを覚える。
失ったはずの青春を取り戻してる感覚。
悪くないなぁ、って私はしみじみと感じた。
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攻略対象キャラの一角である普代剣将。
そんな彼が今、目の前で
「ーーなん、だと?」
事前の下調べにショッピングモールに訪れたボクがたまたま目撃したのは、そんな衝撃的な光景。
今まさしく、悪役令嬢が主人公の攻略対象キャラを攻略しようとしている。
「これ、やばくないか?」