40 悪役令嬢と買い物(Ⅰ)
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放課後、私はショッピングモールに来ていた。
例の件で遊びに行く予定の、新しく出来たところだ。
様々な専門店に飲食店、さらに水族館まで併設されてるアミューズメント施設と言えるだろう。
ここで、軽く下見をしつつ、月乃さんへのプレゼントを買おうと思ったのだ。
なんだかんだで、遊びに行くまでの日にちには余裕がない。
だからこそ、放課後にこうしてきたのだけれどーー。
「ーー何を買えばいいのかしら」
プレゼントの内容が全く決まらない。
月乃さんが貰って喜ぶプレゼントがわからない。
滝沢月乃という主人公は、原作では自己主張の少ないキャラクターだった。
それ故に何が好きで何が嫌いかが、イマイチわかりづらい。
作中で攻略対象からプレゼントをもらう機会は多くあれど、アレは男性からもらったから嬉しいモノであり、同性の友人からのチョイスとしては不味い気がする。
かといって、ここで私自身のセンスを発揮ーーというのも自信がない。
何を隠そう、前世の私は14歳の中学生。
おまけに陰キャで友達無しの半分引きこもりみたいた少女だった。
更に今世でも
ひとりで買えるだろうと息巻いて、別件の用事があるというアヤメちゃんを先に帰してしまったのも痛手か。
「どうしましょう」
結果、専門店街の入り口に立ったまま頭を悩ませる事態に。
取り敢えず、歩きながら見て回るべきか。
そう思って歩き出そうとした時、背後から名前を呼び止められた。
「あ、紫波!」
私を苗字呼び捨てにする人物は現状ひとりしかいない。
まぁ、オタクとしてこのイケボを聞き違えるはずはないんだけど。
振り返るとそこには、案の定剣将くんがいた。
その格好は、ややこの場に似つかわしくない学校指定の紺のジャージ姿だ。
「ご機嫌よう普代さん。こんな所で会うなんて意外ですね」
さっそく外向き用の悪役令嬢モードで言葉を返す。
実際、彼はバックなども身につけておらず、気のみきのままといった風。
買い物しに来たようにも、遊びにきた感じもしない。
どうしてこんなところに。
「いやぁ、校外を走り込みしてたら道に迷っちまってよ。ーーここ、どこかわかる?」
思わず往年のコントみたいにずっこけるところだった。
学院からここまで二駅くらい距離あるんだけど。
何故ここまで辿り着いてしまったんだろう。
まぁ、そういうキャラではあったけど。
「そういうお前も意外だな。なんかこう、ショミン的な場所にはこないイメージがあったけど」
「当たらずとも遠からずなイメージですわね」
実際は外出すらしないで引きこもってるんですけど。
「実は今度月乃さんとーー」
ここで少し、私がここにいる理由を説明。
すると彼は自身の胸をとんと叩いて、こう言い出した。
「ここで会ったのも何かの縁だ。俺もプレゼント選びに協力しよう!」
女心の
まさしく体育会系で花より団子系な、剣将くんが?
いや、戦力外ではなかろうか。
「あ、いえ、お気遣いなーー」
断ろうとしたその時、前世でおばあちゃんに言われた言葉が頭をよぎった。
『人からの好意は無碍にしたらあかん』
『その人は、アンタに喜んで欲しいてやってくれようとしてんのに、アンタが断ってしもーたら失礼や』
『アンタは、アンタのことを好いて大事に思ってくれトー人の顔に、泥塗りたいんか?』
ーーそうだね、おばあちゃん。
剣将くんは私の為に親切心でこう言ってくれてるのだから、やっぱり無碍にはしちゃダメだよね。
「ーーお願いできるかしら」
「まかせとけ!」
まぁ、頼りにはなりそうにないんだけどね。
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「女子高生へのプレゼントで多分一番喜ばれるのはコスメなんだが、コレは人によっては肌に合わないとか好みじゃないとか色々あるから事前リサーチは必須なんだよな。滝沢の好きなブランドとか知ってるか? 知らない? 了解、じゃあ一旦保留で。まぁ、滝沢は見た感じあまり化粧っけないからあまり興味ないのかもな。でもコスメもらって喜ばない女子はいないから、第一候補な。次に案外菓子の詰め合わせなんかも安いからこそもらう側も気遅れしなくて済むからーー」
「ーー女子力高っ!?」
即戦力だった。