36 いつも通りってなんだっけ?
▽▲▽
翌日。
いつも思うことだけど、クラスが違うと自然と顔を合わせる機会が減って、こういう時不便だと思う。
まぁ、取り敢えずいつものように用もないのにちょっかいかけに行こう。
「失礼いたしますわ!」
ぴしゃーんと扉を開けて入室。
そこには、いつもの席で談笑する月乃さん。
しかしその相手はやはりーー。
「出ましたわね、遠野花鈴!」
「出たって何よ、むしろ出てきたのはそっちじゃない!?」
言われてみれば確かに。
うむ、遠野花鈴のくせに正しい事いうじゃないか。
納得はするけど、遠野花鈴を称賛したり認めるのは癪だから取り敢えずふん!っと言ってソッポを向いてみる。
その私の姿を見た遠野花鈴が若干顔に青筋を立てるのが横目に見えた。
ここで口論が発生して月乃さんが仲裁に入ってーーという流れがいつも。
だが、今日は違った。
「ーーまぁいいや。取り敢えず座りなよ」
そう言って遠野花鈴が立ち上がり、何故か空席から椅子をひとつ寄せて持ってきた。
ーーーーえ?
あ、あの遠野花鈴が?
私がここで月乃さんと会話するのを、許すだと?
いつも「さっさと出て行け」と追い返すか、まわりくどい言い方で出て行けと言うか、無理矢理追い出すかしかしない遠野花鈴が?
「ーー貴方、とうとう気が狂いましたか? それとも何かに寄生されて操られてたりします?」
「どういう意味だよそれ」
文字通りの意味なんですけどね。
コホンと咳払いをした遠野花鈴が兎に角座りなと視線で椅子を指すので、警戒しつつ取り敢えず着席。
「え、えっと、し、紫波さん。こ、こここここんばんわ!」
「まだ昼休みでしてよ?」
そして様子がおかしいのは、遠野花鈴だけでなく、月乃さんもでした。
なんだろう、こんなルートあったかな?
記憶には全然ないんだけど。
「あ、そうだ! キノ、あの件紫波さんも誘わない?」
「へっ!? り、リンちゃん!?」
突然の遠野花鈴の発言に、慌てる月乃さん。
何だ、何が起きているんだ?
「実は次の日曜日に、新しく出来たショッピングモールにボクたちで遊びに行こうかって話をしていたの。よかったら、
「ーーはぁ!?」
今度こそ我が耳を疑った。
遠野花鈴が私を遊びに誘うだと!?
しかも月乃さん込みで?
事あるごとにに月乃さんから遠ざけて、私を邪魔者扱いしていた遠野花鈴が。
三人で遊びに行こう、だ、と?
何を考えている。
しかも、どうやら月乃さんは元々私を参加させる事を知らないーーというか、私が参加することに否寄りの様子。
いつもとは全く逆のパターンだ。
遠野花鈴め、何を考えている。
しかし、だからと言って虎穴に入らずんば虎児を得ず。
その一件で月乃さんとの仲を再構築できれば、上の上ではなかろうか。
「いいでしょう。参加いたしますわ」
明らかに罠っぽいが、私は悪役令嬢。
全ての罠を掻い潜り、上手い汁だけ啜ってやりますわ!