35 悪役令嬢作戦会議(Ⅱ)
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「く、くぁぁあああわ」
「なんですかその変な欠伸」
「なんか月曜日なのに、変に疲れてるというか、なんというか」
剣将くんの部活の練習試合が終わり、部の修復が完了したことを確認したその日の夜。
お風呂上がりにホットミルクを飲みながら、まったりしていた時間のことだ。
「今日一日中、何故か月乃さんに避けられててね」
そう!
そうなのだ!
今朝の一件に始まり、中休みに昼休み、挙句放課後にも凸してきたのにずっと避けられ続けている。
私の姿を見るなりトイレに駆け込んだり、逃げたり、撒かれたり。
私、何かしたかしら!?
ーー訂正。
何かはしたわ。
土曜日に不慮の事故とはいえ、彼女をおしたおしましたわ。
こ、これがいけなかったかな?
「ねぇフブキ。もし、私が女の子を押し倒しちゃったら何か不味いことになるかな」
「取り敢えず通報します」
「何でさ!?」
間髪入れない切り捨て発言に納得がいかず立ち上がっーーろうとして、ホットミルクが溢れそうなのでやっぱりやめた。
「雇い主をなんだと思ってるのかし」
「雇い主のことは雇い主としか思ってませんね、だって雇い主ですから」
「ぐぬぬ」
もっともな切り返しをされて、むぐっと口を紡ぐ。
そりゃそうかもだけど、もっとこうーーそれ以上の信頼とか愛情とかあってもいいのよ?
まぁ、それはそれとして。
今夜の
「自分の何がいけなかったのかはわからないんだけど、取り敢えず自分が悪いっぽい時、どうやって仲直りってすればいいんだろう?」
「100万くらい出せば大丈夫ですよ」
「身も蓋ぁっ!?」
「冗談はさて置き、そうですね」
口元に手を当てて、フブキは少し考え込む仕草をする。
「原因がわからない時に『なんで?』と直接聞くのは悪手になる場合があります。ですので、ここはなるべくいつも通り、強引にでもいつも通り振る舞って
「え、悪いことしたら謝らなきゃダメよね」
「お嬢様はいい子ですね。ですが、怒りとは案外長続きしないものです。怒り以外の感情で相手を染める、というか忘れさせるのは全然アリです。相手の怒りも一時的な感情で、このまま疎遠になることを望んでなければ何だかんだで元通りになりますよ」
フブキの言葉に、成る程と私は頷く。
しかしながらやっぱり謝らないのは、ちょっと釈然としない。
多分月乃さんは悪く無いし、ならちゃんと誠意を見せて悪い事件は清算して償わないと。
「ーーそしてちょっとづつ
若干不服そうな顔をしていただろうか。
フブキは私の意を汲んで、そう付け足してくれた。
「ありがとうフブキ。明日から頑張ってみる」
そう言って再びミルクに口を付けた。