18 馬鹿と主人公補正は使い用(Ⅰ)
▽▲▽
「これは、もうボクは何も出来ないのでは?」
放課後。
学院の裏門近くの物陰にて、ボクは途方に暮れていた。
あの後気絶したと思われる剣道部先輩ふたりは、数分後に現れた謎メイドにずだ袋に詰め込まれて裏門からリムジンで連れ去られた。
なんだろう、コレ。
もうゲームのイベントってより事件。
犯罪の匂いしかしない刑事事件だ。
いくら情報収集や裏工作に秀でた親友キャラだって出来ることと出来ないことがある。
だってボクはこの学院の外では、ただの学生でしかないのだから。
それに万が一、紫波家と警察が裏で繋がっていたら?
ぶっちゃけ、そんな確率というかそんな可能性は現実的ではない。
普通は、ちゃんと通報したらちゃんと捜査したりしてくれるだろう。
だが、厳密に言えばここはゲーム世界。
そうなら、通報した場合は逆にボクがピンチになりかねない。
ボクはあくまで主人公のサポートキャラであって、主人公の様に運命に身の安全をある程度保証されているキャラではないんだ。
「ーー
ーー成程。
良い案、浮かんだかも。
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「「ぐきゃあぁぁぁぁぁああ!!!!」」
またしても酷い断末魔を上げて吹き飛ばされるWモブ。
いい加減その様子にも慣れた私は、地下ホールの隅で紅茶を飲みながら観戦していた。
「モブ彦とモブ雄、全然勝てそうにないわね。フブキがまるで無双ゲーのキャラみたい」
「うーん、ウチにはフ○ムゲーのボスにしか見えないかなー」
そう言って私の側に控えているのは、私に使える三人のメイド最後の一角であるミオだ。
あのフブキの姉には見えないおっとりした顔立ちと、母性本能をくすぐる甘い声に大きなおっぱーーげふんげふん!
この屋敷の炊事担当だ。
「ねぇミオちゃん。あのふたりがフブキに一発当てるようになるまでどれくらいかかるか、賭けをしない?」
「やだなぁ、ソレ自体無理な設定だから賭け自体成立しないよ」
あはははって朗らかな笑うミオ。
中々酷いことを言う。
コレに限っては、多分可能性あると思うんだけどな私は。
「フブキに攻撃当たる可能性があるとするなら、多分その場合ってーー」
私が自論を言いかけたその時。
「ユキちゃん様!」
突然地下ホールに、アヤメちゃんが小走りで駆け込んで来た。
格好は、制服でなくメイド服だ。
「どうしたの、アヤメちゃん。お風呂の用意でもできた?」
「い、いえ違います! 緊急事態です!」
何か慌てた様子のアヤメちゃん。
どうしたのだろうか?
「ーー滝沢月乃が、やってきました」
「ぶげふぁっ!?」
その一言に。
私は紅茶に思いっきり咽せた。