15 悪役令嬢的なやり方(Ⅰ)
▽▲▽
「ーー単刀直入に申し上げましょう、さっさと剣道部に戻りなさいませ」
取り合えず私は、スパッと本題を切り出してみだ。
この後も剣道部には顔を出さなきゃならないし、あまり遅刻してはいけない。
だからこそ、サクッと解決させたかった。
「「ーーーーーー。」」
しかしながら
何の言葉も返さない。
こういうリアクションを取るってことは、多分ボイコットしていること自体には後ろめたさを感じているんだろうけど。
それでも、今更戻るのにも抵抗があるって感じかしら。
「実は俺たち、もう剣道部やめようかなって思っていて」
「ーーえ!?」
モブ彦の口から、割と衝撃発言が飛び出した。
「去年までは、ふたりで地道に自主練をするだけで試合なんて出てなくて、でも今年後輩の普代が入って正式に部活になって試合に出たらボロボロに負けちまったってのは知ってる感じか?」
モブ彦の言葉に私たちは静かに首肯する。
「けど部に昇格したら、きちんとした結果を出さないといけなくて。でも、結果を出せるイメージが全くわかなくて」
「それで、逃げてしまったと」
「う、うぅ」
痛いところを突かれ呻くふたり。
多分このふたりは、それにプラスして
今まで頑張ってきたことをサボるってのは、後々もっとしんどいことになるって。
一度怠けると、怠けることへの、サボることへのハードルが極端に低くなる。
そして、それと逆にまた頑張ることへのハードルがだんだんと高くなる。
一度頑張ることから逃げてしまうと、ついつい逃げ続けてしまい、再び頑張り始めるのが酷く面倒になっていき、最終的には頑張ることをーー頑張っていたことをやめてしまう。
今まで続けてきた努力を、積み上げてきた実績と信頼を、なにより好きだった熱意を。
あっけなく捨ててしまうのだと。
ーー捨てられるように、なってしまうと。
多分、彼らは今まさにこんな状態なんだろう。
一度何気なく手放してしまったから、好きだった気持ちすら捨てられることを知ってしまった。
一度捨てたら、また拾い上げるのがどんなに難しいとも知らずに、捨てようとしていた。
なんとなく、彼らの姿にかつてのお兄ちゃんの姿が重なって見える。
お兄ちゃんもまた、戻りたくても戻れなくなってしまった居場所があった人だったから。
「ーーわかりました。えぇ、わかりましたよ貴方たちが
「ゆ、ユキちゃん様?」
背中を押してあげられなかった。
だけど、今は違う。
きっと、違う!
モブ彦もモブ雄はお兄ちゃんではないけど、ふたりをあの時のお兄ちゃんと同じ後悔の沼に沈ませたりさせない。
嫌われようが、疎まれようが知ったことか。
「私たちが、その性根叩きなおして差し上げますわ!!」
ーーなんせ私は、