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12 計画変更(Ⅰ)

 ▽▲▽


 し、しくじったぁぁぁあああああ!!!!


 そう心の中で叫びながら、ボクは濡れた雑巾で床をこする。

 雑念を振り払うように掃除に精を出す。


「ーーこれからどうするべきだ?」


 ボクこと、主人公の親友である遠野花鈴の計画は、大きく狂ってしまっていた。

 初っ端から大こけしたというべきか、某競走馬の120億事件もかくやというレベルでやらかしたというか。

 偶発的に発生した、この剣道部員集団ボイコット事件を利用してキノと普代剣将を接触させ、仲を深めさせようというのが当初の計画。

 ふたりっきりで色々させれば思春期の男女だもの、ちょっとはイイ感じが出るんじゃないかと。

 だが、現実はそうはならなかった。

 それは何故か。


 ーー悪役令嬢・紫波雪風がこの件に介入してきたのだ。


 今さっき会った時は、予想外っぽい反応を返していたが白々しい!

 こんな偶然があるものか。

 きっと先回りにして普代剣将と接触し仲良くなって、キノを阻もうとしたのだろう。

 彼女のこの世界での役は悪役令嬢(ライバル)

 その可能性が高い。

 学院に入学して以降、あまり表立ってボクたちの邪魔をしてこなかったから油断した。

 ボクがもう少し紫波雪風側の動向に注意を向けていたら、対策を立てるなり先手を打った行動が取れたかもしれないのに!

 自責の念を覚えながらも、これからのカバーリング方法を考えなければ。

 ぐるぐると思考を巡らせ、ごしごしと床を拭き続ける。


 ーー。

 ーーーー。

 ーーーーーー。


「えーと、リンちゃん?」


「ーーーー (ぶつぶつ)。」


「リンちゃん?」


「ーーーー (ぶつぶつ)。」


「リンちゃん!!」


「は、はいっ!?」


 急に大きな声で呼ばれ、はっと顔を上げる。

 そこには、少し頬を膨らませたキノの顔があった。


「いつまで同じところを拭き続けているのかな?」


「あ!」


 どうやらボクは、考え事に集中しすぎてずっと拭き掃除をし続けていたみたいだった。

 いつの間にか、武道館の床二週目に突入していた。


「ごめんキノ。うっかりしてた」


「リンちゃんがうっかりって珍しいね」


 そう言って彼女は手を差し出す。


「雑巾貸して? 私と普代くんで片付けておくから」


「ん、ありがとう」


 さっと雑巾を渡すと、彼女はテキパキとその他の用具を纏めた。

 粗方片付いたところで普代剣将がボクに向かってこう言った。


「俺があと美品質に掃除用具片付けておくから!ごみ捨てに行ったふたりが帰ってきたら、その場でもう解散しちまっていいぞ!今日はサンキューな!!」


 そう言って彼はバケツやら箒やらを纏めて持って、武道館を後にする。

 壁にかかっている時計を見ると、掃除開始してまだ40分ほどしかたっていなかった。

 ーーそっか、我々手伝う側の人数が増えてしまったから負担も少なくなり、時間短縮になったのか。

 これ、だいぶマイナスだな。

 普代剣将に接する人数が増えたことで、キノが彼と接する機会も当初のふたりっきり計画より減少。

 更にかかる時間も減少し、総合的にかなりあのふたりが接する時間が減少してしまった。

 それに、あの悪役令嬢と腰巾着が参加したことで、普代剣将からキノへの印象が「困っていいた時に助けてくれた可愛い女の子」から「困っていた時に助けてくれた何人かのうちのひとり」まで薄まってしまう。

 もういっそこの計画を中止してーーいや、違うな。

 キノをもっと強く彼の印象に刻みつけなければ。

 だが、この状態が長引けば紫波雪風が介入する隙もだんだん増える。

 ベストは、この状況を打破し紫波雪風を排除しながらキノを目立たせるーーか。

 なら、方向性としてはこうか。




「ーーキノにこの剣道部問題を解決させる」

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