前へ次へ
50/55

ポケクリクリア耐久耐久・5

 日曜日の朝。

 2人にモーニングコールをかけて、朝の準備をしつつ今日は2人と出掛けることもあって髭剃りも朝の内にやってしまう。コンビニにも行ってお昼ご飯も確保しておいて、朝の配信を始めた。

 今日は3人とも同じ時間に配信を始める。


「というわけで3日目!進行度としてはリリちゃんが一番早いかな。でもこの感じなら全員ほぼ横並びでクリアできそう!3ルートを進めてチャンピオンになるまでにどこまでストーリーがあるかわからないけどね」


「いつもならバッジを集めていたら並行して悪の組織とのイベントが挟まる形だけど、今回はルートが別れてるから全部クリアしないとクリアにならないのかな?」


「チャンピオンになっただけじゃクリアにならないのかもしれませんね。まだクリア報告って出てないんだっけ?」


『ここが最前線だぞ』

『今回のジムリーダーのレベルとか高いからちゃんとレベル上げしないとクリアできないんよ……』

『レイドだって星5は1人じゃほぼ勝てないし、インターネットで誰でもにするとゲームを始めたばっかの初心者連中が入ってきて詰む。高レベルばかり集まると思うなよ』

『タイプ相性だってあるし。そう考えると並行して進めてくれるリスナーがいるVtuberって環境的には最高か』


 まだクリア報告は出ていないっぽい。シナリオも量が多いし、何か条件があるのかもしれない。

 霜月さんと水瀬さんと別れて個々の配信に。俺の場合は伝説のポケクリが片方登場したけどアース団のボスらしき人に捕獲されたところだ。その後チャンピオンにたまには家に帰りなよと言われたところで前回の配信が終わっている。

 目的地も自分の家にマーカーがついているので向かうしかない。多分これを行わないとイベントが進まないのだろう。

 家に帰って母親と会話する。するとやはり何かあるのかイベントが始まった。旅の様子を聞かれて、そこで母親から忠告をされる。


「伝説のポケクリ、ポリノーを追いかけるのはやめなさい。お父さんのように無理な挑戦をして貴方まで失ったら、ですか。重くない?」


『重い……』

『悲報。主人公の父親、病院で寝たきりだった』

『伝説のポケクリって、そこまで情報が流れてるもん?』

『母親は家族が寝たきりになった原因だから特別に教えてもらったのかもしれん』


 生きているらしいけど、父親の状況までお出ししてくるとは。しかもその寝たきりの理由が伝説のポケクリの権能のせいで、2匹が揃わないと治らないらしい。

 昔からポケクリの被害は図鑑とかの説明や、シナリオでもちょこっと触れられていたけど、まさか実害を主人公の家族に出しているなんて。元々ホラー要素も多かったとはいえ、ここまでシナリオで踏み込んでくるのは珍しいんじゃないだろうか。


「追いかけるも何も、情報が一切ないから偶然出会うとかじゃないと会えないんですけど。まあ、パッケージポケクリなのでいつかは会うんでしょう。イベントも終わったことだし、レベルも十分なはずなのでひとまずジムバッジを全部集めますか」


『チャンピオンよりは強くないやろ』

『8番目はエリーで勝てたって言ってたから、レベルだけ見れば余裕のはず』

『ドンドン行こうぜ、リリ!』


 ファストトラベルを利用して7・8番目のジムを突破する。1時間ちょっとでクリアして、8番目のジムをクリアした時にコロッセウムの存在を教えられた。後はポケクリリーグに挑むための船のチケットを渡される。これで離島にあるポケクリリーグに挑戦できるようだ。


「そういえばリーグがどこにあるか明言されていませんでしたね。僕はこの島を全部回ったつもりでしたけど、別マップにあるなら見付けられないですね」


『なるほど。バッジ8個で解放される別マップか』

『ジム巡りのルートでリーグに挑戦しようが解放されてるけど、なんか灰色じゃない?』

『確かに。なんか条件があるのか?』


 今までだったら解放されたら黄色になるはずなのに、ジム巡りのルートが灰色のままだ。これは解放されていない状態と同じだ。

 悪の組織ルートと、ライバルルートもまだクリアできていないので同じ状態になっている進行度が見える。ということはこのまま進めても多分進行しないんだろう。

 一応船が出ている港町に行ってみる。そこで船着場でチケットを見せたところで長身のスラッとした男性が近付いてくる。見覚えのない男性だが、緑髪でかなりのイケメンだった。


「うわお。イケメンだあ。え、四天王なの?あら、本土で事件が起こりすぎてるせいでその対応に四天王とチャンピオンが駆り出されていて、行っても誰もいないよって……。つまり他の2つのルートを完全に終わらせろってことですね」


『ここでシナリオロックかあ』

『こりゃクリアする人間出ねえわ。発売から56時間?3徹でもしないと時間が足りねえ』

『おのれアース団とライバルううううぅぅぅぅ!』

『リリだってプレイ時間が大体30時間超えないくらいか。レベル上げとか探索のこと考えたらまあ、無理か』

『そもそも人間ってそこまで集中力保たないのよ。食事の時間とかもあるし、攻略サイトの人間とかも記事を書く時間とか情報をメモしたりと純粋なプレイ時間以上に手間がかかってるし。今回はチャンピオンが現れるとかサブイベントもめちゃくちゃあるからなあ』


 情報があるのはライバルルートの準伝説のポケクリがいる居場所。炎柱が出る場所と雷が起きる場所。多分火山とずっと雨が降っている森林地帯のことじゃないだろうか。

 というわけで最初に滑空を試した山を目指す。あの時は上を目指したけど、今度は下を目指して火口へ。火口へ向かおうとしたら警備員がいて、ジムバッジを確認させられた。バッジを8個持っているからと入ることを認められた。7番目のジムでもらったどんな環境でもブリーダーを保護する万能スーツとかいう宇宙服のような機能を貰ったから許可されたらしい。


「なるほど。ここで他のルートの進行度が影響してくると。ここからは宇宙服で進むみたいですね。そういえばあの森林地帯も雨と雷が強すぎて進めないってテキストで追い返されたっけ。なら今度はあそこに行けそうですね」


『あったなあ、そんな場所』

『何か条件があるとは思ったけど、ジムの進行度で止められたのか。つまりあそこは高難易度エリア』

『ここもそうだな。珍しいポケクリがいるけど、それ以上に危険だから封鎖とか。そんなところに青少年が入って良いんか?』

『実力が全ての世界に今更何言ってんだか』


 火口を進み、捕まえていないポケクリを捕まえていく。流石に野良のブリーダーはいないようでアイテムを回収しながら奥へと突き進んだ。ランダムアイテムとは言え、普通に回復アイテムとかが落ちているのは笑ってしまう。熱とかでダメにならないんだと思ってしまうけど、そこはゲームの話だ。

 突っ込んでもしょうがない部分はスルーしていく。

 そして進むこと1時間ほど。目的の炎を纏ったモグラのようなポケクリと出会う。倒さないように気を付けないと。

 HPの調整と、状態異常にすることを心掛けてボールで捕獲する。準伝説のポケクリを捕まえてもライバルルートの進行度は進まない。


 レベル60のポケクリを捕まえないといけないんだからレベル上げとか必要だよなあと思いつつ、次の森林地帯へ向かう。火口を出ないとファストトラベルが使えなかったので戻るのにも時間がかかったが、レベル的には余裕があったので無理なく脱出する。

 辿り着いた森林地帯でも宇宙服を着て探索することになる。マップが使えなかったので闇雲に進むと、何故こんなところにあるのかと疑問に思ってしまう巨大な施設があった。

 似たような施設をどこかの坑道の中で見たなあ。


「あからさまに怪しい場所ですね。アース団いない?」


『いそう……。まだ進行度残ってるし』

『普通は入れない地域に建つ研究所か。怪しすぎる』

『ご丁寧に避雷針あるじゃん。こんな雷ずっと鳴ってる場所ならないとどうにもならないか』

『ただの休憩所かもしれんし。外観だけで決めつけるのは良くないぞ』


「とりあえず入ってみますか」


 施設に入ると、近くにいた研究員が近付いてきて、この施設の説明をしようと思ったら博士を倒したトレーナーだとバレたようで早速バトルになる。

 高難易度エリアだから相手の持っているポケクリのレベルも高めではあるけど、レベルを上げすぎたのか簡単に倒せた。で、こんな対応をされたことで悪の組織の進行度が黄色になった。ちゃんと進行度の抜けもないので順番は間違っていないようだ。


「はい。アース団の根城でしたね。潰しましょう」


『ですよねー』

『雨と雷のおかげで立ち入り制限されているとかいう、まさに隠す場所に相応しい』

『ここもノーヒントで見付けないといけないのか。あのアジトにヒントとかあったんだろうか』


 色々と探索をしつつ研究所の敵を倒していく。ここもアジトのように目線が合ったらバトルになる。ここの研究所では嵐の原因になっている準伝説ポケクリの研究。それにどんなポケクリでも捕まえられるレジェンドボールの開発もしているようだ。

 ただ、うまくいっていないらしい。レジェンドボールの開発レシピは世界的にも発表されておらず、どのようにすれば完成形を作れるかは発表されていない。こんなものが量産されればポケクリの自由意志なんてなくなってしまうから、なんて考えは露悪的だろうか。

 実際レシピなんて公開されてしまうと悪の組織が量産してポケクリを悪いことに使いまくるだろう。それを阻止するためにもレシピなんて公開しない方がいい。


「へえ。この地方にもレジェンドボールを作れる職人がいるみたいですね。ティーフォを捕まえたボールはそこの職人から奪ったものって、やっぱり悪の組織だ」


『ボール職人ってライセンス制なのか。知らなかった』

『こうやって研究するくらいなら、ライセンスを取る正道で行けばいいのでは?』

『何かしら理由があるんじゃね?まあ、多分奪った方が早いってだけだろうけど』

『そこまで裏設定もしっかりあるかわからんけどな』


 伝説のポケクリを両方捕まえようとしてボール職人を襲ったり、ここで研究しているようだが成功例はなしと。

 そんな情報を集めつつ、一番の情報を見付けた。伝説のポケクリを出現させる方法だ。

 どうやらアジトを攻めている時に現れたのは実験の結果のようで、本当は2匹とも出現させられるはずだったらしいが実際に現れたのはティーフォだけ。

 出現させるには大陸に負荷をかける必要があったようで、だからこそ色々自然の近しい場所でどこまで自然を弄れるかという研究をしていて、なんだか莫大なエネルギーを消耗させたとかで伝説のポケクリが出てきたらしい。

 えー、つまりは。


「伝説のポケクリを出現させるために、自然に反する行動をやり続けていたと?これ、下手したらこの地方がめちゃくちゃになっていたのでは?」


『火山活動にしても地質調査にしても、自然に反することをしてたらいつかしっぺ返しを食らうぞ』

『津波とか人工的に引き起こそうとしてたわけでしょ?ヤバ』

『ポケクリの力があればできるだろうけど……。なんにせよヤバイ組織だな』

『そもそもこいつら、何で伝説のポケクリを捕まえたいんだ?世界征服?』

『肝心要の理由がわからんのよなー』


 様々な研究をしていることはわかったが、最後の理由がわからない。

 研究所の奥の方へ進むと、またボール職人を襲おうとしているが、送り出した同胞がライバルに負けているという報告をしていた。どうやらライバルもレジェンドボールが欲しいのか、ボール職人の家に転がり込んでいるらしい。改心した、わけではないのだろう。

 ここでライバルルートと繋がるのか。


「棚ぼた的にライバルルートが進みましたね。これでライバルを追いかけられます。ボール職人は7番目のジムの近くですね」


『開発側が進めろと仰ってる』

『これ、レジェンドボール入手のためのイベントっぽいな』

『シナリオ中に1個は手に入るもんな』

『よーし、どんどんクリアして最速クリア目指そうぜ!』


 ここにいた幹部を倒して、ライバルルートを目指す前にここへ来た目的である準伝説の雷ポケクリを捕まえる。これで3匹の準伝説を捕まえたことでライバルルートの7が完了した。これで残るは8のボール職人とのイベントだけのようだ。

 悪の組織ルートの最後はどこに行けば進行するのかわからないが、ライバルルートは進められる。

 で、ボール職人のところへ行くとレジェンドボールを縋るライバルと、それを断固拒否するボール職人のおじさんの構図だった。


 ライバルは主人公が準伝説を3匹捕まえていることに驚愕し、そのことでレジェンドボールをライバルが持つ理由がなくなったと改めて断る。

 ライバルはやるせなくなった想いをぶつけるように、主人公へ挑んでくる。復讐が他人の手で終わってしまい、どうすればいいのかわからなくなってしまったのだろう。

 申し訳ないけど、レベル差もあって倒せてしまう。自分はどうすればいいのかと悩んでしまい、一回も勝てなかった主人公に勝てるようにと、ジムリーダーに挑んでポケクリリーグに挑戦することを決意する。

 ある意味光堕ちエンドだが、ここで博士からポケクリを奪ったことを謝りに行こうとしたが、博士がアース団ということを知り、相手も悪人なら謝らなくていいかとライバルは去っていった。


「これ、もしアース団ルートを進めていなかったら博士に謝りに行ったんですかね?」


『かもなあ。フラグ設定かなり丁寧だし』

『ライバルルート完か。これも最速?』

『表に出ている分には最速。こっからは早いんじゃないか?』

『お、なんかイベントが続くな』

『レジェンドボールゲットー!』


 ライバルルートが終わってすぐレジェンドボールを受け取るイベントが起こる。それとボール職人はポケクリリーグから伝説のポケクリはポケクリリーグのある孤島で存在を確認できていると聞いているようだ。

 もしもの時はこれで捕まえるようにと釘を刺される。

 ポケクリリーグとしてもアース団の動向を監視するために港町の警戒網を強めているらしい。


「こんな話をしているということは港町がアース団のラストですかね?」


『そうかも』

『結局ボスもわからん、理由もわからんという』

『行けば流石にわかるでしょ』


 港町に行き、ポケクリの回復をしつつ港へ行く。港にはアース団の服を着ている人物がたくさんいて船に乗ろうとしているようだった。

 ポケクリリーグの職員とアース団がバトルを繰り広げている。ネームドキャラはアース団の幹部くらいで、ポケクリリーグの方には四天王もチャンピオンもいなかった。

 主人公以外戦力がいないな。これ、幹部の相手もしつつボス戦にはならないよね?

 イベントが進むと、改造したようなアース団の制服を着ている女性がいた。彼女がボスっぽい。誰だろうと下からのズームで姿を確認すると、その人物の顔と髪を見て誰か察する。

 初めて会う人物ではない。けど、だからって。彼女が悪の組織のボスでいいのか。


「今作、少年少女の心を折りに来すぎでは……?」


『これは初めてのパターンだろ』

『こんなのってあり?』

『今作、奇を(てら)いすぎでは?』

『まさか、母親(・・)が悪の組織のボスとか、ないって』


 主人公の母親が悪の組織のボス。これは主人公の帰る場所がなくなるのでは?

 確かに主人公の家があるのはアース団のアジトと繋がっている始まりの街。母親も仕事をしていたとは思うけど、それがアース団としての活動だったとか、主人公ショックすぎでは?グラフィックが涙目になっている。

 母親がボスになったのは父親をよくするため。寝たきりになった原因が伝説のポケクリのせいだという。その2匹を捕まえて力を使わせることで眠りから目覚めさせるという。伝説のポケクリの被害に遭っている人は多いために、その2匹をアース団で管理下に置くことで、不幸な民を救うことが目標。

 そしてレジェンドボールを持っているのなら渡しなさいと。一緒に父親を助けましょうと。


 でも主人公は首を横に振る。選択肢も「いいえ」しか出てこない。

 間違っていることは間違っていると、母親が相手でも突きつけた。

 だからこそ、バトルになる。こんなところで親子バトルになるなんて。

 レベルも60台ばかりで、しかもどのポケクリも多分最終進化っぽい。だから強かったものの、一番の問題は最後の伝説のポケクリ、ティーフォだ。出てきた瞬間に、今作の目玉であるフォルムチェンジというのをやってきた。

 フォルムチェンジをするとステータスが上がって、しかも専用の特殊技が追加されるという。俺は解放していなかったから、相手が使うのしか見ていない。


「え、伝説でもフォルムチェンジできるの⁉︎」


『そういやリリ、解放してないじゃん』

『何でこの人、フォルムチェンジできないんです?』

『灯台をスキップしたから』

『これ、灯台スキップによるフラグがなんかあったりするのか?』

『純粋に種族値の暴力とフォルムチェンジの上昇値で殴り飛ばされない?』


 ステータスは上がったものの、まだレベル差があったために倒すことは問題なかった。

 ボスが負けたことでアース団の士気はかなり落ち、捕縛される者も多くなる。母親も捕まってしまった。

 決着が着いたところにチャンピオンのアンちゃんがやってくる。他の人を不幸にしてまで差し伸べる救済は、本当に幸せですかと。その質問に答えるまでもなく、もう一度母親として伝説のポケクリに関わるのはやめなさいと告げて連行されていった。

 これで本土での悪行は全て解決されたということで離島への移動が許可される。悪の組織ルートも完結となり、ジムバッジ集めのルートの進行度が解放されてポケクリリーグに挑もうになる。

 いやでも。


「これ、主人公はどんな理由でポケクリリーグに挑めば?旅立ちの時のようなありふれた冒険への希望はどこに?」


『全作通じて一番不幸な主人公だろ……』

『主人公が何したんだ?』

『父親寝たきり。母親が悪の組織のボスで逮捕。ポケクリくれた博士も悪の組織の幹部。ライバルは改心したとはいえ最初はポケクリ泥棒。希望はどこに?』

『ま、まだ共闘してくれたアンちゃんとの絆が残ってるから……』


 ちょっと一息入れようと思ってたところに、さっき霜月さんから合流できないかという通知が来ていた。キリが良かったので合流することにする。

 他の2人はどこまで進んだだろうか。


前へ次へ目次