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ポケクリクリア耐久・4

 マネージャーと相談した結果、話題作ということもあって動画を攻略サイトに載せることになった。確認だけとはいえ祝日に対応をさせてしまってマネージャーにも社長にも悪いことをした。攻略サイトに絹田狸々とエクリプスの名前を載せることを条件に俺の動画を載せる運びになった。

 相手側に切り抜かれたりするとどういう編集をされたものかわからないので動画そのものを載せて、タイムスタンプでここから見るようにと誘導させることにした。

 正直な話、切り抜き動画は既に切り抜き師たちが編集したものがアップされている。それを本人や事務所の許可なしに載せるのはまずいと攻略サイト側が配慮したんだろう。


 そんなやり取りをしつつ、お風呂とご飯を食べて配信再開の準備をする。攻略サイト側からも内容の確認をお願いしますと来ていたのでざっと確認して、問題がなかったので許可を出す。この認可は俺の方で出していいと事務所から言われていたので返事だけして事務所に載りましたよとメールをする。

 諸々が終わって配信を再開させると、なんか視聴者数がおかしかった。もう深夜に差し迫るっていうのに、視聴者数が6000人超えてるんだけど?


「えー、休憩が終わったので続きをやっていこうと思いますが……。何でこんなに人がいるんです?」


『切り抜きから来ました』

『初見です』

『ここが最も最速の攻略動画だと聞いて』

『本当にタヌキやん。声ひっく』

『新規がいっぱいだぁ』


 攻略サイトに載ったのなんて数分前のことだぞ?それでこんなに人が集まるか?

 切り抜きやらなんやらで初見の人が多そうなので、今までは再開の時に挨拶をしてなかったけど、これは改めてした方が良さそうだ。

 あと今回の企画の趣旨も。


「改めて、エクリプス所属の3期生、絹田狸々です。名前だけでも覚えていってください。それと、今回の実況配信の趣旨も再度伝えさせていただきますね。今回は僕の同期の2人、霜月エリサさんと水瀬夏希さんと一緒に最新作のポケクリをクリアしていこうという並走企画です。最速攻略を目指しているわけでも、検証動画として配信をしているわけでもありません。僕が面白そうだなって思ったことに首を突っ込むだけなので検証とかはするつもりがありませんので悪しからず」


『OK』

『こいつがただネタに走ってそれがクリティカル出してるだけだから勘違いすんなよ』

『なんや。検証攻略じゃないんか』

『同期の2人可愛いやん!チャンネル登録して3窓するわ!』

『↑リリの登録はしたんか?』

『まま、ええでしょう。ネタの宝庫らしいし』


 とりあえずコメント欄が荒れてないから大丈夫か。今日はGWだからマネージャーさんたちによる悪質な視聴者のブロックはできないんだよな。メンバーシップを開設もしてないし、スパナをあげてるのも一部の人だけだからブロックできる人は少ない。

 荒れないようにって考えても、今日はGWだから多分学生も見てるんだよな。それで非常識な発言をしてコメント欄が滅茶苦茶になるなんてこともあるらしい。だから長期休みの配信は特に気を付けるようにって注意喚起をされていた。

 今後そうならないか心配だ。


「ですので、寄り道もしますし、同期との交換用に捕まえていないポケクリを見付けたら3匹捕まえに行きます。あと同期と通話を繋げたり、そのままバトルやレイド、交換をして攻略が進まないこともあるのでそのことについて指摘しないでください。あくまで同期と一緒にクリアを目指すというものなので。……ぶっちゃけ、僕が面白そうって思って突っ走ったことがたまたま未発見のイベントだっただけで、ネタで序盤遊んだだけがこんな風にイベントがたくさんあるなんて思わなかったんです……」


『初っ端から遊んだお前が悪い』

『配信者っぽいっちゃぽいんだけど』

『まあ、全員が正道ルートだったら何も真新しさがないからな。1人くらいネタに走ったっていい。それがリリで、やらかしてこのザマだけど』

『このタヌキ、さてはポンコツだな?』


 いや、ホントは2人にネタバレをしないように最初の内は時間を稼ぐつもりだったんだ。

 この企画を一番楽しみにしていたのは水瀬さんだし、その一番の楽しみを同期からのネタバレなんて悪いかなあと思って何もなさそうな小島に向かうことで2時間くらいロスしようと思ってたのに。

 それがこんな特大のネタバレを踏むことになるなんて思いもしなかった。悪の組織のアジトが始まりの街の近くにあるなんてオープンワールドゲームで想定しろって方が無理じゃないかな。


「そういうわけで進めていきます。初見の人もいるので軽く説明すると、今からこの街のジムにチャレンジします。5つ目のジムで、タイプは氷みたいですね」


『コキナちゃんな。厚着でモコモコしてて可愛い』

『多分今作で一番若いジムリーダー。ジムリーダー一覧が発表された時の段階で一番人気だった』

『新作が出るたびに性癖に刺さるジムリーダーを産んでくれてありがとう、任地堂』


 ジムがそもそも氷だらけで寒そうだったこともあってかなりの厚着をして肌が一切見えないジムリーダーのコキナ。青い髪をポニーテールにしている小さな女の子だけど、口調からしてクール系のようだ。セリフに「……」が多いし、氷のように静かだ。

 ジムバトルって楽しみの1つのはずなんだけど、俺的にはこの後のメインイベントのために速攻で倒す。バッジを貰って外に出ると、俺的には久しぶり感がないチャンピオンとのご対面。


「ああ。ちゃんと他のイベントとの比較がありますね。僕としては初めてじゃないのでジムバッジを手に入れたことを褒めてもらえました。セリフもちゃんと『久しぶり』でしたし」


『普通ならここでチャンピオンに会って驚くんだよなあ』

『リリたちと並走してたせいで何も驚かなかったぞ』

『リリ的には会うの何回目?3?』

『今作ボリューミーすぎてまだクリア報告上がってないの、ヤバイだろ。そのせいでチャンピオンが何で過去作の主人公にそっくりなのかわかってない』

『バージョン違うと性別が違うんだよな。オレンジの方だと4作目男主人公っぽい見た目だった』


「え、あ⁉︎ここでバトルできるの?ちょっと待って、回復と持たせるアイテムの選別とかしたい!」


 アジトに乗り込む前にバトルだと思ってたので、こんなジムの前でバトルになるとは思わなかった。ポケクリセンターに行って回復させて、ショップで回復アイテムもしこたま買い貯めて、準備を整える。

 案の定コメント欄はコメントが高速で駆け巡る。内容なんて見てられない。読み取れないくらいに流れていく。ここまで来たのならもう戦うだけだ。


「よし、バトル!」


『頑張え〜、リリ〜』

『リリもよう鍛えたな。レベル全員60超えてる』

『レイドを回しまくったからな。この戦いのためにリスナーとレイドを2時間くらいずっとやってたから』


 レベル上げのおかげでなんとか食いついている。アイテムで能力を上げたり、回復をしまくるマネーイズパワー戦法で最後の1匹まで追い詰めた。相手がバランス型のパーティー構成だったことや、どのポケクリもレベルが65以上でかなりの苦戦を強いられた。

 チャンピオンともなればポケクリのタイプはバラバラにしてくるのが定跡だけど、気になったことが。昔のポケクリしか使ってこないことだ。最近のポケクリを全然やっていなかった俺ですら見覚えがあるポケクリだったんだから。

 だけど、最後の1匹は見覚えのないポケクリだった。レベルは68。名前はヒースドン。西洋の竜っぽい見た目だし、多分ドラゴンタイプのはず。


「知らないポケクリだ。ドラゴンタイプと何だろう?複合タイプばかりだよね」


『あれ?リリ知らないの?』

『6世代のドラゴン・悪タイプだよ。世代最強ドラゴン』

『今までの知ってる傾向からいくとリリって5世代までの知識しかなさそうだよな。ポケクリコロシアムが世代的にはその辺だっけ?』

『チャンピオンのアンちゃんが使ってきたの、第1~6世代の代表的なポケクリばっかだよな。なんか意図がある?』


 よくわからなかったものの、戦闘用アイテムを使っていたことと弱点を上手くつけたことで何とか勝利。チャンピオンとの突発的なバトルに勝った。


「よっし、勝ちぃ!」


『ナイス〜!』

『8888888888888』

『GG』

『アイテム漬けってやっぱり強いんだな。レベルが低くても勝てちまう』

『いやいや、リリがあんだけ鍛えてたからよ。技構成とか種族値とか、マジでやばかったし』


 変な緊張がなくなり、一息つく。アイテムを使ったり、ポケクリを入れ替えようとして長考したりしたので20分くらい戦っていた。一旦水分を摂って、進んだイベントを確認する。

 今の実力なら大丈夫。一緒にアース団を倒しに行こうと誘われる。主人公はうんと頷いていた。

 これ、俺のルートがおかしいだけなんだよな。一応聞いてみよう。


「ここ、普通だったらどういう会話だったんです?」


『普通に自己紹介と、もっと力つけてねって言われて終わり』

『今見てるコキナちゃんがアンちゃんのファンだっていうのがわかるイベントはそうなんだけど、勝っちゃうなんて素晴らしいです!みたいなことは当然言われなかった』

『コキナちゃん、男バージョンのドロワくんでもファンですってテンション高いんだよなあ』

『既に脳破壊されてる呟き見るのおもろいw』

『チャンピオンを尊敬していないジムリーダーなんていないやろ。どこの地方でも』


 断片的にしか拾えないけど、多分普通の挨拶程度だったんだと思う。

 俺が初対面じゃなかったために色々と変化が起きてるんだろうけど、このフラグ管理って大変じゃないだろうか。


「これ、どこまでシナリオに変化があるんですかね?大まかな流れは変わらないんでしょうけど……。最近のゲームって凄いんですね」


『今それをこぞって検証している人らがいるんや』

『ポケクリが凄いだけじゃ?』

『他のオープンワールド系と比べてどうなの?』

『モノによるとしか』


 ひとまずポケクリを回復させにいって、消費した回復アイテムを補充して。

 所持金がすっからかんになったところでアジトへ向かう。ジムバッジは6個必要って言われていたけど、実力を見せてくれって言ってた本人に勝ったんだから良いだろう。アジトの場所に来てって直接言われたし。

 ジムバッジ集めもライバルを追いかけるのも後回しにして悪の組織ルートへ向かう。


 最初の街へファストトラベルで飛んで、そこからはジムバッジを手に入れたことで水走りができるようになったのでお助けマシンに乗って小島へ向かう。本来の手順としてはここで海や湖を探索できるようになって、たまたま小島を見付けてイベント発生、みたいな感じだったんだろう。

 その時ならチャンピオンにも会ったことがあっただろうから驚きも少ないと。

 俺の馬鹿な行動のせいで全部台無しだよ。


「アジトへ突撃!アンさんとは別行動って、これ僕が囮役では?」


『チャンピオンの方が有名なはずだから』

『あっちが大暴れしてくれてるおかげで主人公がこっそり侵入できてるんや』

『アジトを漁り放題だぜ!そこらへんのアイテムを片っ端から奪っていこうぜ!』

『これ、家荒らしと強盗だよなあ、やっぱり』

『RPGの主人公たるもの、他人の家に侵入してタンスを開けたり壺を割るもの』

『壺割るのは一部の勇者たちだけじゃねえかな……』

『どいつもこいつも任地堂のキャラじゃねえか!』


 数が少ないのかわからないけど、戦える下っ端は少ない。彼らは目が合うとこちらへ近寄ってきて勝負を挑んでくる。今作では野良のブリーダーと戦うには話しかけなくちゃいけなかったのにここだけは過去作のように目線が合えば戦ってくれる。

 他のアジトでも話しかけないと戦えなかったのに、このアジトの敵は話しかけなくても戦える。この細かい調整は大変じゃないだろうか。


「そうそう、これこれ!」


『やっぱ目が合ったら戦いたいよな』

『この野蛮人め』

『野蛮な方が歴が長いんだよなあ』

『むしろこの地方のブリーダーが謙虚すぎる。オラ、もっとギラつけよ!』

『ギラついた結果が悪の組織の結成ですが?』

『でもこいつら、本当に何がしたいんだろうな?わからんよ』


 昔ながらのシステムに興奮しながら、そこら辺にいる下っ端たちをボコボコにしていく。ついでに何か情報がないかと思って周辺の机やホワイトボードなどを調べていく。RPGあるあるで調べると少しだけだが情報が出てくる。

 悪の組織というよりは、何やら研究所みたいだ。ポケクリの研究に、伝承を調べていたり、悪事をやっている様子が見られない。

 でも施設を占拠したり、街で横暴を働いていたり。そんなことしてどうするんだ、とは思うけど。


「うーん、これってもしかして伝説のポケクリでも調べてるんですかね?歴代の悪の組織もそんな感じだった気がしますが」


『そうかも。よくあるパターンっちゃよくあるけど』

『伝説のポケクリって比喩抜きで世界を変えられちゃうからな』

『そういやその伝説のポケクリの名前すらわからないのか、現状』


 なんだか調停と夢幻という単語がやたら見える。これが伝説のポケクリの能力だろうか。

 日照りとか雨降しとか、天空の覇者とか。もう少しわかりやすい能力だった覚えがあるけど。これ、小学生は意味がわかるんだろうか。

 アジトを進んでいくと、海中トンネルのような場所に出た。海の様子が見える、透明なガラスで囲まれた通路は水族館とかで見られるものだ。これは海の中に作っているから自然のものだろうけど。

 泳いでいるポケクリや気泡などがはっきり見えるのは芸が細かい。


「おお、めちゃくちゃ綺麗!画質といい質感といい、映像がとにかく綺麗ですね」


『グラフィック凄いよな。今作』

『これ、どこに繋がってるんだ?海底施設だから補給路なんだろうけど』

『もうここ、水族館として売り出そうぜ』

『こんな場所が悪の組織のアジトなのか?アース団が何をしたいのかわからんから施設の意味もわからん』


 海底トンネルを進むとチャンピオンが既にそこにいた。海底トンネルの手前のもう片方の通路に下っ端が倒れていて進めなかったのでチャンピオンの方が進んでいるのは理解していたが、いくら何でも早すぎる。

 ゲーム的都合なのか、それだけの実力を持っているのか。本当に1人でも倒せたんじゃないだろうか。


「チャンピオンのアンちゃんと合流ですね。無事だったことを褒められてますけど、この人の方に敵が集中してたのに平然としてるの凄いな……?」


『そりゃあこの地方のチャンピオンだぞ?一番強いに決まってる』

『容姿的に多分過去のプレイヤーの分身だからなあ。無敗でもおかしくはない』

『パーティーもわからないよな。あの6匹、今だに誰も捕まえてないところ見ると野生では実装されてないんじゃね?』

『まだ誰も行ってないダンジョンで見付かるとかも有り得るから』


 チャンピオンと走っていく途中で、彼女がこの先は方角的に始まりの街であるノーブタウンだという。地理的に一番近い街ではあるけど、そこに繋がってくるかあ。

 ということは始まりの街って怪しくない?

 そう思っていると待ち伏せていたような後ろ姿の白髪の男性がいた。

 いやいや、待て待て待て。あの後ろ姿は知ってるぞ。序盤の最弱ポケクリに抵抗もできずに腰が抜けていたお爺さんそっくりなのは偶然か?

 でも方角的には居てもおかしくは、ないのか。


「そんなのってありぃ?博士が悪の組織とかさあ」


『そう来たか』

『ノーブタウンに繋がってるのはそういうことね』

『つまり、博士がアース団のボス?』


「チャンピオンはなんとなく察していたみたいですね。え、海底で地震とかヤバイのでは?」


 アンちゃんは前から博士を疑っていたらしい。イベントが進むと地震が起きたようで画面がガクガクと揺れたがアンちゃん曰く地震じゃないらしい。

 映像が海の上に移動して、ノーブタウンの近くの空が割れた。ひび割れた空間から現れたのはオレンジと白色が基色となった神々しい鳥型のポケクリ。それに俺は見覚えがあった。


「え、あれ?オレンジ版のパッケージポケクリでは⁉︎僕のやつはグレープですけど⁉︎」


『そっち⁉︎』

『ええー……。自分の伝説のポケクリじゃなくて違うバージョンの方が先に出て来ちゃうの?』

『ってことは、戦う流れだけど捕まえられないパターンだ』


 揺れていたのはあのポケクリが出てくる予兆だったらしい。実際に地面が揺れていたわけではないので災害のような被害は出ていないようだ。名前はティーフォと言うらしい。夢幻を司る鳥のようだ。

 出て来たことに博士が高笑いをして、アンちゃんは苦虫を噛んだように顔を歪める。ティーフォはそのまま暴れるかと思ったら、どこからともなく現れた金色のボールに収納される。

 それはシリーズでおきまりの、絶対に捕獲できる神のボール。


「レジェンドボールを敵が使うのって有り⁉︎博士の発言的にアース団のボスらしいんだけど⁉︎」


『博士が黒幕じゃなかったのか』

『じゃあ誰よ?』

『怒涛の展開だな』

『あ、アンちゃんが下手人を捕まえに行った』


「僕は足止めされるんですか。博士とバトル?レベル的にはどんなものだろう」


 下っ端たちはレベル40台が多かったので苦戦しなかった。こちとらレベル60台のチャンピオンに勝ってカチコミに来てるんだぞ。そこまでぶっ飛んでいなければ勝てる。

 出してきたポケクリのレベルは53。


「これくらいなら勝てますね」


『チャンピオンと比べたら雑魚』

『多分順路で進んだらジムバッジ6個集めた段階のはずだから、これが適正レベルなんだろうな』

『ここが最新のネタバレチャンネルですか』

『まだ進行度ってリリが一番なの?こんなにぶっ続けでポケクリだけやってるのはFORの3人だけだろうけど』

『他の配信者もVtuberもそこそこやってるけど、睡眠時間もそこそこにずっとやってるのは少ない。その中だとやっぱりリリが一番早い』

『なんか5番目のジムでチャンピオンに会うにはライバルルートも進めないといけないっぽいよ?ライバルルート0進行だとチャンピオンがジムに来なかったらしい』

『フラグ管理どうなってんだ、このゲーム』


 また考察がバーっと流れている間に最後のポケクリだ。これまでは全部この地方にいる新ポケクリだったみたいだけど最後は何で来るのか。

 身構えていると、出てきたのは御三家の水タイプの最終進化。霜月さんが選んでいた子で、物語的には主人公にもライバルにも選ばれなかったポケクリだ。

 確かに保管してたのは博士だけどさあ!


「選んだ子に相性が良い子を連れてるとか、この博士性格悪いよ!」


『リリ、余りやで……』

『ライバルの選択次第だったから、博士の手元に相性悪い方が残る可能性はあった』

『こんなところで御三家の最終進化を見たくないだろ。リリはエリーとの対戦で見てるから耐性あるだろうけど』

『今作外れと言われてる水タイプかあ。何でそんなビール腹みたいにしちゃったんや』

『の、能力値は3匹の中でぶっちぎりだから……』

『見た目を捨てて能力を得たとかSNSで言われてて可哀想』


 御三家対決をしなければ良いだけの話だったので、違う相性の良い子で倒した。

 倒したことで博士が独白を始める。

 この地方の伝説のポケクリは人間に与える影響が他の地方のポケクリに比べて大きいらしく、実際に人にも被害が出ているらしい。で、学会でその危険性を訴えたら博士界隈から追放されそうになったらしい。

 そのため危険性を把握していたボスと共謀してアース団を設立。伝説のポケクリの情報を調べようと各地にこっそりと研究所を設立して研究をしていたようだ。

 ただ、街で暴れていたような奴や湖の生簀で悪徳商売をしていたようなのはアース団を名乗っていたパチモンらしい。


「ええ?資金集めとかじゃなくパチモンって。いや、だから生簀には幹部もいなくて弱かったのか?」


『なるほど〜』

『行動に一貫性がなかったのはそもそも別組織だったからってこと?』

『暴れる口実が欲しかったんだろうな。いやでも、虎の威を借る狐じゃないんだからさ』

『アース団ってカッコつけてるだけで、ただの研究者集団なのか?独立した研究団体?』

『この施設、マジで海のポケクリ研究するための施設なのかよ……』

『廃棄された施設を勝手に再利用してんの?マジでどこからその研究費とか出てんだよ……』


 博士の告白でアース団の在り方とかを知れた。悪の組織ではなかったみたいだけど、非公式団体なのは間違いないだろう。けど、悪事はしてない、のか?

 伝説のポケクリの研究はしていて、その危険性を訴えかけようとしていた。そのポケクリを呼び出す準備をしていて、現れたらレジェンドボールで捕まえたということは管理はできるということだけど、その管理をしっかりするのかの保証はない。

 CERO:Aだから博士の独白が嘘、ということもないだろう。そんなことしたら理解が追いつかないだろうし。

 金銭問題とかはどこかで帳尻合わせをしてるだろう。そんな生臭い話はストーリー中でやらないはず。


「チャンピオンを追いかけましょうか。進みます」


 進んだ先はノーブタウンの研究所だった。地下と海底で繋がってるとか、どうなってるんだ。

 研究所の中の人と会話をしても戦う事態にはならなかった。でもアース団の一員らしい。博士が負けたことに驚いていたり、ティーフォを捕まえられたことを喜んでいたり、人によって反応が違う。

 研究所を出るとチャンピオンが難しい顔をしていた。ティーフォを捕まえていた下手人が誰かわかっていないらしい。アース団のボスらしいし、相当な実力者か研究者のはずだけど、今までの登場人物で合致する人はいない。


「もう1匹の伝説のポケクリはポリノーって名前ですか。こっちが調停担当だと。チャンピオン詳しいですね?」


『地方の一番危ないポケクリやし、リーグからも共有されてるんじゃ?』

『対処しようとしてるだけ高評価や。何もしないチャンピオンとかもいるし』


「アンちゃんから今日は家で休みなさいって言われましたね。実家もあるんですし、カチコミをしたから休みなさいってことでしょう。キリが良いですし、少し前から水瀬さんのコールが鳴りっぱなしなので合流しますね」


『お、レイドか?バトルだとリリが勝ちそう』

『バトルはレベルを同じにして調整されるから2人にも勝ち目はある』

『交換したって良い』


 招集がかけられたので2人と合流して通話を繋げる。情報共有をしているからか順調にどのルートも進行しているらしい。

 最初に交換をして、その後3人分のレイドをこなすことにした。時間で挑戦できる回数が復活するので、全員分のレイドを消化することにする。

 それが終わったら今日は終わりにしよう。


「パパ、私もチャンピオンにチャレンジしたいからレベル上げ手伝って!」


「はいはい。今全員60近いんでしょ?それなら3人分のレイドをクリアすればレベル的には足りると思う。ちょっとレベルが足りなくてもバトルアイテムと回復薬のゴリ押しでいけるから」


「回復アイテムは溜め込んでるから大丈夫そう!エリーもチャンピオンと戦おうね」


「うん。あたしももうちょっとレベルを上げればレベルが70近くになるし。大丈夫だと思う」


「あれ?実はレベルが一番上がってるのって霜月さんだったりします?」


「あたしもちょっと探索頑張ってたらコロッセウムって施設見付けて。そこの賞品がレベル上げのアイテムだったんだよね」


 それは新情報だ。俺もファストトラベルをかなり解放して色々な場所を訪れているのにコロッセウムは知らない。どこにあったんだろう。


「8番目のジムのある街にね、あったんだよ。そこの海底神殿がコロッセウムでね。8番目のジムに勝つとそこに挑戦できるの。場所もジムリーダーから教えてもらえたから、勝つことが条件なんじゃないかな」


「8⁉︎エリー、もしかして順番すっ飛ばした?レベル高くなかった?」


「最高で58だったよ。タイプ相性でなんとか突破した。だから実はまだバッジ6個目なんだよね」


『エリーもなんかやってんな』

『ジムもどこから挑戦しても良いのか。弱いところから戦わないとっていう先入観があったわ』

『けどあそこの街って水面を走れないといけないから5番目のジムは倒してるんだよな。レイドよりもレベル上げの効率が良いのか?』

『また検証班が走り出すぞ』


 近況を話しつつ、レイドをどんどんこなしていく。まだ捕まえていなかったポケクリも何体かいたので図鑑埋めも進む。レイドは経験値アイテムに回復アイテムや捕獲用のボール、それに換金アイテムが手に入るのでポケクリを捕まえながらだと割と良い副産物が手に入る。

 一方コロッセウムはバトルをするのが基本でブリーダーと戦うので手に入るのはお金と賞品だけ。その賞品が経験値アイテムとか様々なアイテムらしいんだけど、霜月さんの体感的には1人でできるのと通信を待たなくて言い分、時間効率からコロッセウムの方がレベル上げに向いているらしい。


「僕はそろそろ寝ますけど、2人はどうするんです?」


「私ももう寝ようかなー。10時間以上配信してるし」


「あたしも寝るよ。また明日の朝から続きかな」


「じゃあゆっくり寝ましょう。おやすみなさい」


「おやすみ〜」


「おやすみ、2人とも。リスナーの皆もまた朝にね」


 配信も切って、2人に明日の朝のモーニングコールはいるかと聞いたら即答でいると言われた。

 じゃあ明日も通話をかけよう。歯磨きをしてタイマーをかけて、おやすみなさい。


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