大会に向けたデッキ作成
今月は箱内で大きな案件かつ大型コラボがある。ウィザーズ&モンスターズのアプリゲームで箱内大会を実施するためにアプリゲームでデッキを作らなければならない。
そこで初心者の霜月さんと水瀬さんにこのゲームの進め方を教えないといけない。そのためコラボ配信だ。ちょっとFORでのコラボ率が多すぎるか。
箱内コラボのためにしょうがなくって感じだけど。
「皆、こんばんちゃ〜!水瀬夏希です!今日はエクリプスでの特大コラボのためにウィザーズ&モンスターズバトルクロスでデッキ作成をしていきますよー」
『きちゃ』
『何のデッキ選ばれたんだろ』
『ストラクチャーデッキで主軸がわかるからなぁ』
『カードゲームって指示厨湧きそうで怖いな』
案件でもあるから動画にプロモーションを含みますと出ている。
霜月さんには紙のカードを教えたけど、水瀬さんには紙については教えてないからどんなカードを使えばいいかわからなかったということで指導者として呼ばれていた。
「私はミリしらだから教えてくれる人と、一緒に学ぶ人を呼びます。まあ、いつものメンツだけどね!ということでまずはお師匠様ー」
「はい。皆様こんばんは。FOR同期の絹田狸々です。自分のアカウントでバトルクロスを遊んできたので説明はちゃんとできると思います」
「はいどうもー!続いてライバル枠!」
「は〜い。同じくFORの霜月エリサです。あたしも紙でちょっと触りましたけど、バトルクロスは初めてなのであたしも初心者枠です」
自己紹介をしたので、枠は水瀬さんだが大会の説明や今回のデッキ作りの概要を説明する。
大会は二週間後。それまでにデッキを作って回せるようになって欲しいというのが運営側の依頼だ。
「まず最初に参加者には紙のストラクチャーデッキをコピーしたものが配られます。それを改造して1デッキを完成させるもよし。ガチャ石があったら他にもデッキを作ってもよし。でもデッキごとに動きが違うので二人には1つのデッキを作ってもらう形になります」
「まあ、デッキの動きって本当にものによって違うから。召喚方法も様々だし、同じ召喚方法でもやれることが違うから面白いよねえ」
「じゃあ私のデッキを紹介しちゃおうかな!こちら!」
水瀬さんが画面を操作してデッキ画面を見せる。そこにデッキ名が記されているが紙のことに相当詳しくないとわからないので水瀬さんにはそのままデッキのカードが見えるようにデッキ詳細の画面に移ってもらう。
「はい。この前のカード剥き配信で出た絵違いの『楽園妖精リラ』を主軸にしたデッキ、『楽園追放と祝福の唄』でーす!絵違いのリラちゃんに一目惚れして、誰とも被らなかったからこのデッキにしちゃった!」
『あー。テーマデッキだ』
『アニメヒロインのデッキじゃなくて、テーマデッキの方か』
『昔のキャラクターデッキの方はもう20年前のデッキだから今じゃ戦えないって……』
「こちら、4年前に発売されたストラクチャーデッキになります。昔から楽園っていうテーマは細々と強化されてきたので今でも十分戦えたりします。最近も強化カードが来たので正直この段階で結構強いですね」
「そうなの?リリちゃん」
「うん。欲しいカードは10枚くらいだからパックを剥いていたらすぐに揃うんじゃないかなあ」
正直構築済みとしたらかなり完成している。人気テーマだからというのもあるけど、初代アニメのヒロインが使っていたテーマだからいつまでも人気になっている。
初代アニメってかなり挑戦的で、漫画が原作であったのにヒロインがアニメと漫画で違うというかなりアニオリ要素がある作品だ。しかもそれで世界的に売れるカードゲームの宣伝になっているんだから凄い作品だ。
アニメ版のヒロインは漫画には影も形もいなかったオリジナルヒロインなのに、居てもおかしくないキャラというのが受けた。あとはあの時代はオリジナル要素が多いアニメが多かったから自然と受け入れられていた部分もあると思う。
そんなヒロインや初代アニメの話でコメント欄が盛り上がる中、俺たちはゲームの方を進めていく。
「まずはその750石で回せる特設パックを引いていこうか。250石お得で、しかも確実にそのセット商品になっているレジェンドレアが手に入るパックなんだ」
「あ、これ!運営さんに絶対買ってって言われてる『屋敷めのこ』だ。これがデッキには2枚入ってるんだっけ?」
「そう。これが相手のドローを防いでくれるカードでね。今だと3枚入れるのが当たり前なんだ。霜月さんも初めにこれを必ず買ってください」
「わかった」
このパックは闇鍋だ。最高レアリティのレジェンドレアが10連で出るわけでもなく、そこは運。一応スーパーレアは確定なんだけど、必須級のカードって大体レジェンドレアに設定されているからデッキが作れないという事態になりやすい。
俺も自分の配信で沼って全然完成しなかったし。そういう意味では今回1デッキ完成した状態で配られてその上で15000石も使ってよくて汎用カードも数枚既に配られているのは凄く楽だ。汎用カードが全部レジェンドレアだからそれを引かなくて良いのは楽。
水瀬さんが引いていくけど、レジェンドレアは出なかった。お目当てのカードもあまり出ず。闇鍋だからここではあまり期待していない。
『ひっでえ闇鍋』
『これでも種類は絞られてる方だから。本当に古いカードはまた別のパックからしか出ないし』
『そこにも必須級のカードがあるんだよなぁ。みなちぇのデッキ』
『レアだから作ればいいし』
「右上に鍵マークが出たと思うんですけど、それは関連カードを手に入れた際に専用テーマしか出ないパックを引けるようになったよって示す奴なんだ。お目当てのパックが出てないから、一旦デッキの画面に行ってカードを創造しようか」
「カードを創造?」
「ポイントを使ってカードを作れるんだよ。アニメや漫画でも、主人公がいきなり逆転のカードを無から生み出したりしてる」
「え?それ反則じゃないの?」
「アニメの世界だと許されてるね」
「夏希、ホビーアニメって割とそんな感じだよ?」
どこからか逆転のためのものが用意されていたり、アイテムが勝手に強化されていたり。多分バトルものの覚醒みたいなイベントなんだろうけど。
カードが光って別のカードに書き換わるなんて現実の世界で起こったらホラーだ。
俺が指定したカードを創造してもらって、専用パックを解放してもらう。あとはここから必要なカードを引いてもらうだけ。
「そのパックをとにかく引いて。欲しいカードはレジェンドレアの『楽園妖精シスエラ』を2枚と『楽園崩壊』、『楽園へ至る虹の階』を2枚。SPデッキの方がストラクチャーデッキの段階でかなり完成されてるからこれだけで良いのは楽だね」
「本当だったらこれを全部引かなくちゃいけないんだよね?」
「そう。ゲームを始めたてだと結構石をもらえるんだけど、僕は全然揃えられなくて課金した」
「夏希。今の内にリリくんを拝んでおこう」
「そうだね、エリー。リリちゃん、ガチャ運を分けてください」
「……とうとう同期まで」
この二人にはガチャ動画に呼ばれてないんだけどなぁ。先輩方はあらかた呼んできたからまだわかるけど、この二人まで俺のことを招き猫か何かだと思ってる。
実際何故か運が良くなるんだからわけわからないけど。
『本領発揮やぞ』
『成果があるからね。しょうがない』
『これで今日もみなちぇとエリーが馬鹿当たりしたらもう言い訳効かないぞ』
『もう既にダメなんだよなぁ』
『他の参加者がリリをガチャで呼べないのがいちばんの問題って言われるくらいだぞ』
なむなむと拝まれてから水瀬さんがガチャを回す。
10パックの内、虹色に光るパックが3つもある。虹色に光ったらレジェンドレア確定だ。
これはやったか?
「やった、きたー!」
「リリくん、凄いねえ」
「ねえ、これ僕のせい?本当に?自分は爆死したのに他人だと引けるのはおかしくない?」
俺の疑問には誰も答えてくれず、水瀬さんは引いていく。スーパーレアは引いていれば勝手に揃うだろうと思って言ってなかったけど、実際に必要なカードが当たっていく。その度にコメント欄が加速していった。
一応関連カードが出るとはいえ、2つくらいのテーマから出るからもう片方のテーマに寄ったりするんだけどなあ。1枚目のレジェンドレアは『楽園妖精シスエラ』だった。
『やりい』
『3枚必須のエースモンスター』
『これを出せればほぼどうとでもできるのが強い。しかもここからフュージョンで更に強くなれるんだからぶっ壊れだぜ』
『火力もあるのに妨害効果とサーチ効果はやりすぎだって』
水瀬さんのデッキの主軸たるカードだ。これを並べるのが強いとされていて、これが2枚並んでしまうとほぼ勝てるというカード。しかも上級モンスターなのに出しやすいというおかしさ。リラがいないとそこまで出せないけど、リラを出す手段もいくらでもあるので簡単に盤面を作れてしまう。
そのあとのもう1枚はデッキに入らないレジェンドレアだったが、最後の1枚は『楽園崩壊』だったので十分すぎる結果だろう。
「夏希、大当たりだね。あと欲しいレジェンドレアは3枚かな?」
「えー?まだ石が130連分あるよ?リリちゃん、できるだけ強化しようよ」
「まあ、まずは必要なカードを集めてからね」
それから30連で必要なカードを全部集めてしまった。レジェンドレアもたくさん出たから他に欲しいカードも創造できそうだ。
カードを分解すると10ポイント貰える。このポイントが30溜まると、同じレアリティのカードを1枚創造できるために、レジェンドレアなんて何枚あっても困らない。
「ひとまずデッキは完成として。じゃああったら良いなってカードを狙っていきますか。このデッキ、フュージョンとコンタクトが主軸で、チューニング召喚の汎用カードがいくつかあると戦いやすいかもしれないですね」
『召喚方法封じてくるテーマとかあるからな』
『害鳥の話はやめろ』
『トラップパカーからの召喚封じは悪夢』
『トラップって伏せたらそのターンは使えないんじゃないのか?何ですぐ使ってくるんだ?』
『それはこの楽園妖精デッキでも言えることだから……』
とりあえずこの1回目の配信で石は全部使い切らないといけないので必要なカードが手に入りそうなパックを剥いていく。それも60連くらいで揃ってしまったので最後の40連は汎用カードを狙いにいく方向にシフトして、出来上がったデッキを見たリスナーがドン引きしていた。
『みなちぇ、それでランクマ潜れるぞ……?』
『欲しい汎用カード全部揃っちゃった。SPデッキも全部揃ってるし』
『俺、このデッキと戦いたくないわ』
「じゃあ動きを覚えるために僕と戦おうか。バトルルームに入って」
「はーい」
俺の練習用のデッキと、完成したデッキでバトルをする。先攻と後攻で動きがちょっと違うのでその辺りも教えないといけないけど、まずは基礎的な先攻の動きだ。
水瀬さんの画面を見ながら、俺の画面を操作する。
「まずは『楽園への誘い』を使おうか。マジックだね」
「これ?これの何が強いの?」
「デッキから楽園って書かれたカードを何でも1枚持って来られるんだよ。しかもこれ、昔のカードだからターン1制限が付いてない」
「それが凄いの?」
「最近のカードだと強すぎる効果は1ターンに1回しか使えないって書かれてるんだ。けどこれは3枚手札にあったら3回使うことができる」
「えっ、つよ!」
『昔のカードのぶっ壊れ率よ』
『だから楽園は強いんだ。ほとんどターン1付いてない』
昔のアニメをやっている頃はそこまで厳しくしなくて良いと思ったんだろうな。そのせいで昔のカードは今でも割と使われている。だって強いんだもの。
「でもね、『屋敷めのこ』で止めちゃうんだ」
「リリちゃんの鬼!悪魔!狸!」
「『屋敷めのこ』は1ターンに1枚しか使えないから。ここからサーチする効果を僕は止められない。じゃあ『楽園妖精リラ』を通常召喚しようか」
「攻撃表示でいい?」
「セットしちゃうと効果が使えないんだ。だから攻撃表示で出して」
「リラちゃん召喚!」
ヒロインカードだからか、召喚時に演出としてリラの絵が若干動きながら大きく表示される。召喚演出というやつだ。有名カード、エースモンスターはこういう扱いを受けている。
「えー、可愛い!」
「そのまま効果を使おうか。デッキから楽園カードを持ってこれるから、『楽園妖精シスエラ』を持ってきて」
「わかった!」
シスエラを手札に加える。そうしたら何故かシスエラの効果で手札に加わった時に特殊召喚できるという効果が発生していきなり攻撃力2800のモンスターがフィールドに召喚された。特殊召喚は1ターンに何度使っても良いのでこうやって盤面を揃えていくのが基本だ。
「ええ〜……。リリくん、楽園強すぎない?」
「このシスエラが来て一気に強くなりましたね。でも霜月さんのデッキも相当強いですよ?」
霜月さんが使うのは紙と一緒の『世界樹の守護者』デッキだ。召喚方法がたくさんあることと、エースモンスターが無法すぎてそれを召喚されたら対処方法がほとんどなかったりする。
初心者なんだし、パワーカードがないとどうにもならないからな。その辺りは運営さんが凄く考えたらしい。
「シスエラの効果でまた楽園のマジック・トラップ・フィールドカードを持ってこられるから、今度は『楽園──アンジェラスカ』を持ってきて。で、すぐ発動」
「うん」
「そのフィールドで楽園モンスターを手札に加えられるからシスエラを持ってきて。今度は特殊召喚できないんだけど、アンジェラスカの効果で手札の楽園モンスターを特殊召喚できるからシスエラを特殊召喚」
「え、えっ?もうシスエラが2枚並んだよ⁉︎」
「で、サーチ効果はフィールドの楽園カードの種類まで発動できるからまた楽園カードを持ってこようか。今度は『楽園崩壊』だね。トラップカード」
「これセットしちゃって良い?」
「良いよ。あとはフュージョンカードがあったら使っても良かったんだけど、今はないからできるのはここまで。トラップカードの『楽園・臨界』を伏せてターンエンドにしようか」
「了解!」
これで4妨害を構えられているんだから凄いことだ。これ、俺の練習デッキじゃ何もできないな。
「じゃあ僕のターンね。ドロー。……『ダークマジシャンの羽衣』を召喚。モンスター効果発動。ここでシスエラの効果を使いますかって聞かれてるかな?」
「うん。使って良い?」
「良いよ」
水瀬さんがシスエラの効果を発動すると、羽衣が破壊されてセメタリーへ行ってしまった。
羽衣の効果でダークマジシャン関連カードをサーチしようとしたんだけど、シスエラの効果でモンスター効果を無効化してしまったわけだ。
ちょっと齧っている霜月さんはこの効果にビックリしている。
「え?シスエラって楽園モンスターの種類まで無効化できるの?つまり今って2回?」
「そうなんです。なので2枚シスエラが並ぶと対処がしづらいんですよ」
一応モンスター効果だけだからマジックで邪魔しちゃえば良いんだけど、それができるデッキと手札かは構築と状況次第。
「これで僕はモンスターを召喚できなくなっちゃったから、マジックカード『暗闇での儀式』を発動。デッキからカードをサーチしたいんだけど、『楽園・臨界』の発動を聞かれてると思うからそのまま使おうか」
「はーい。どういう効果?」
「自分の楽園モンスターを1体セメタリーに送るんだけど、相手のマジックかトラップの効果を無効にできるんだ。ここはリラをセメタリーに送ろうか」
こうやって妨害を構えられるから強いんだよな。しかも後攻からも1ターンキルできる方法もある。
これで俺はできることがないのでターンエンド。
「そのままバトルに行こうか。シスエラ2体で殴って」
「でも削りきれないよ?」
「大丈夫。このターンで僕の負けだから」
ライフが8000なので残りは2400。ここからこのターンで決着をつけるための手段はフィールド効果だ。
「『楽園──アンジェラスカ』が光ってるでしょ?効果を使うとバトル中にフィールドと手札のモンスターをセメタリーに送って召喚条件が合致するモンスターをSPデッキから特殊召喚できるんだ。誰でも良いんだけど、『楽園騎士アレハンドロ』にしようか」
「何で女の子二人で男の人になるの……?」
「そこは突っ込んじゃダメ。アレハンドロは攻撃力が3500あるからそのまま攻撃すれば終わりだよ」
「攻撃できるんだ⁉︎えーっ、すっごいつよーい!」
というわけで水瀬さんのデッキ作成は完了。あとは霜月さんのデッキ作成だ。水瀬さんの枠を閉じて霜月さんの枠に移動し、そこで霜月さんのデッキ作成も同じように進めた。
『世界樹の守護者』のストラクチャーデッキが配られていたものの、こちらはアニメのラスボスキャラが使っていたために必要なカードのほとんどがレジェンドレアでデッキ作成は少し大変だった。
90連目で揃っていたけど。
霜月さんは紙で動かし方を知っていたのでそのまま水瀬さんとバトル。3戦して霜月さんが2勝で勝ち越していた。
俺は明日の夜にデッキを作成すれば良い。今日はここまでだ。日付も変わってるし。夜18時から始めたものの1つの枠で3時間くらいかかっていたので俺は後回しになった。俺は一人でできるから問題ない。
俺は爆死こそしなかったものの、かなりギリギリにデッキが完成してあまり汎用カードは入れられなかった。後は運とプレイングでどうにかするしかない。
大会までにリスナーと戦ってデッキ調整をすれば良いだろう。