兵站将校は休みたい!

作者:しろうるり
「大尉殿は――分遣隊長殿は、戦死されました」

 派遣された部隊に着任したら、隊長は既に戦死していた。



「まずくあります。半方焼けてしまいました」

 集積された輜重品は焼かれ、彼の俸給の3か月分以上が灰になっている。



「クソが、悪魔に喰われろ」

 不十分な記録。
 数字だけ整えられた帳簿。
 前任者のいない引き継ぎ。



「しかし、とは申しましても、当家や領地の備蓄にも限りがございます」

 子爵家の家宰は表情を変えずに言った。
 それでも彼は、ここから必要な物資を調達せねばならない。



「期限は?
 それと、報酬」

 冒険者と交渉し、



「仕事が早いな、新任の隊長殿は」

「小官は代理です、少佐殿」

 他の部隊長に頭を下げ、



『久しぶりだな、レフノール。無事荷が届いたようで何よりだ。息災か?』

 実家を巻き込んで。
 彼は、兵站業務をこなさねばならない。



「できればもう少しのんびりした部署が良かった」

「隊長のような方は、仕事の方で放っておかないと思います」

 休みたい、という彼のささやかな願いが叶う日は、いつ来るのだろうか?


※本作は「カクヨム」様にも並行して投稿・連載しております。
【3:司祭の務め】
2024/10/26 18:00
【8:先任下士官の信頼】
2024/10/30 12:00
【9:前線へ】
2024/10/31 12:00
【12:帰投】
2024/11/03 12:00
【19:来着】
2024/11/16 12:00
【27:渡河】
2024/12/02 12:00
【31:襲来】
2024/12/10 12:00
【32:戦端】
2024/12/12 12:00
【33:開戦】
2024/12/14 12:00
【34:戦闘】
2024/12/16 12:00
【35:激戦】
2024/12/18 12:00
【36:死闘】
2024/12/20 12:00