一万文字の新作を消してしまった日曜の午後

作者: ひだまりのねこ


 ごきげんよう、久しぶりのエッセイ、ひだまりのねこですにゃあ。


 

 はい、タイトルの通りですね。やってしまいました。


 新作を書いていたのですよ、今月末が〆切の『ざまぁ企画』


 人気の自主企画で、私も参加してみたいなあと思いまして。


 本当は今回見送るつもりだったんです。新連載書いている最中ですし、私、ざまあが苦手なので。


 読むのは大丈夫なんですが、どうにも上手く書けない。


 でも、苦手にチャレンジすることで、見えて来ることってたくさんあるんですよね。自分のスタイルだとか、好きなこと嫌いなことに気付いたりする。


 たとえ狙っていたものが書けなかったとしても、その過程で幅が広がると思うし、その逆に書きたいものが明確になってきたりします。


 だからこれまでも、自分では絶対に書かないホラーや苦手な恋愛にもチャレンジしてきましたし、今回もきっと得るものがあるに違いないと。



 日曜日、朝から書き始めて、苦戦しまくりながらようやく書き終えたのが午後三時。


 婚約破棄もなければ、追放もない、婚約者を横取りする悪役令嬢もいなければ、復讐もない。


 これは果たしてざまあと言えるのか? 


 それでも、テンプレ通りのざまあとは程遠いながらも、今の私が書ける私らしいざまあ作品になった。その満足感はたしかにあって……。


 ただ、最後の一文に使う表現に若干迷いがあって、ネットで意味を確認していたんですよね。どっちがよりふさわしいか知りたかったので。


 検索した後、書き途中の執筆画面に戻った私が目にしたのは、


 たった今検索した文字が一行入力されて保存されているまっさらな下書き。


 表記されている文字数は、たったの8文字。


 え……? 一万文字以上書いたんだけど……どこ行った!?


 わかっていても、心が認めたくないと拒絶するんですよ。


 ええ、そうです。全文削除した上で、新たに一単語書いて保存してしまったのです。たぶん。



 初めてではありません。新しいノートPCとマウスにしてから誤作動は日常茶飯事でしたし、一話分の原稿を意図せず消してしまうことは何度もありました。数行まとめて消してしまうことなら毎日数回はありますからね。


 被害が大きいところだと、連載中に五千文字の原稿と八千文字の原稿を消してしまったこともあります。


 でも、完成した新作を丸ごと消してしまうのは初めての経験。


 震える手で、祈るようにバックアップ一覧を確認します。


 わかっていても確認しないわけにはいかない。


 今回に限って集中していたから一度も保存をしていなかったからあるわけないのに……



 ありませんでした。


 

 一万文字の作品。


 ただの一万文字ではないです。諦めそうになりながら、自分を叱咤激励しながら苦心して組み上げた作品。


 普段の作品なら、自分のスタイルの作品なら近いものが書けるかもしれませんが、とにかく手探りで、ふらつきながらなんとかゴールしたような作品。


 正直、どこをどうやって書いたのか自分でもわからないくらいだったのです。


 それでも二、三千文字くらいならなんとかなったかもしれませんが、一万文字超の文章や構成まではとても再現できない。


 もう目の前が真っ暗になりました。


 恥ずかしながらガチ泣きです。悔しいやら悲しいやら、自分でもよくわからないくらい色んな感情が沸き起こってきて、数時間くらい何をしていたか記憶がありません。


 もう……小説なんてやめようかな。


 本気でそんなことを思ってしまうほど、落ち込みました。


 午後からは用事があったので、落ち込んでいようがなんだろうが出かけなければなりません。



 PCの電源を落とそうとした瞬間、ふと、思ったんです。


 あ……駄目だ。このまま出かけたら、私は絶対後悔する。


 直感です。私はいつも直感に従って生きてきましたから、直感が降りて来たならそれがきっと正しい。


 吐きそうになりながら、新規小説作成画面を開いて、消してしまった小説のタイトルと、冒頭の書き出しを数行思い出しながら書いて保存しました。


 もちろん、そんなことをしたって消えた作品が戻ってくるわけではないんですけど、とっかかりを作っておかないと、もう二度と書けない。そう思ったので、無理して書きました。



 夜、戻って来てからもう一度書いてみることにしました。


 なんとなく覚えている部分を書き出して空白を埋めてゆく作業。はっきり言って苦行以外の何物でもなかったです。


 書けば書くほど記憶にあった作品から離れてゆく絶望感。それでも書き続けたのは、一度書き上げたあの作品がたしかにあったんだ、面影だけでも残したいという執着。


 一度目よりもさらに苦労しながら書き終わったのは真夜中。


 笑っちゃうぐらい別の作品になってしまいましたし、ただでさえ薄味だったざまあ要素に至っては、もはや風前の灯状態。これで企画参加出来るのだろうかと心配になるレベルの出来でした。


 まあ、あの精神状態でよく書いたなと褒めてあげたいです。作品の出来はともかくとして。


 同じなのはタイトルと主人公のいくつかの台詞だけ。めちゃくちゃ消耗しましたが、落ち込んでいた気持ちはすっかり消えてなくなっていました。


 おそらくは新しい作品を書き上げたことで、上書き出来たのでしょう。不甲斐ない作者ですまない。どうか安らかに成仏しておくれ。


 

 ちなみに、新たに書き上げた作品は、全四話完結、本日予約投稿済みです。


 良かったら読んでもらえると失われた私の猫力が回復します!!


 『そうですか。それなら死ぬほど後悔させて差し上げます ~最強『聖女』は動じない~』

  https://ncode.syosetu.com/n2272ih/


 

 ちなみに、PC変えてからずっと悩まされている誤作動ですが――――


 てっきりマウスのせいだと思い込んでいたのですが、キーボードの下にあるタッチパッドのせいだと判明。以前のノーパソでは影響することは無かったので、完全に盲点でした。


 設定でタッチパッドを無効にしたらあら不思議。


 誤作動は起こらなくなって、執筆環境が劇的に改善しました~!!!


 ヤバい、快適過ぎる……今までの苦労は一体……。


 というわけで、もしノートパソコンで執筆されている方で同じように悩んでいる方がいたら、確認してみてくださいませ~。


 え? そんなの私だけ? にゃあああん( ノД`)



※追記:せっかく投稿した作品、予約投稿慣れてないから、完結設定していませんでした……_| ̄|○ にゃんてこったい。