5-1 (仮) 甘いお菓子 1
遅れながらも五章突入!
やはり導入部はほんわか路線から!
題はちょっとまってね。
らんぽーく様!
素敵なレビューに感謝感激です!
分相応! それが一番だと思います!(ここ重要!)
本番行為に発展云々はご想像にお任せスタイルでいきます。
警告はもういやだ!
クリスの目も無事に治り、そして他のメンバーにも霊薬について話した日から数日。
俺は流石にこれ以上隼人の館にお邪魔になるのも悪いと思い宿を取ると言ったのだが、
『気にしないでくださいよ。むしろ我が物顔で館を闊歩される方がイツキさんらしいと思います』
という隼人の褒め言葉に従って未だに隼人の館で過ごさせてもらっていた。
いつの間にかこんな冗談も言い合える仲になったのだと、少し嬉しく思った。
「はぁ……お茶が美味いな……」
とは言っても緑茶ではなく紅茶なのだけどな。
そういえば紅茶も緑茶も茶葉って同じなんじゃなかったか?
発酵やら乾燥やらが関係していたような気がするが、なんとなくでしか覚えていないんだよな……。
ああ、検索がすぐ出来る現代って今思えば便利だったんだな……。
「お兄さんお茶菓子もどうぞ」
「ああクリス、ありがとう」
「クリスのお菓子は美味しいですから、どんどん食べてくださいね!」
俺は今隼人とクリスと三人で、お菓子を食べながらお茶を飲みまったりとしていた。
場所は優雅に隼人の屋敷の綺麗な花畑で囲われた庭でお洒落なテーブルと椅子に座ってである。
クリスは隼人に寄り添うように座っていて、お茶が少なくなると席を立ち注いでくれている。
なんというか貴族にでもなったような気分だ。
そして何故今日は家の中でなく庭でティータイムを満喫しているのかと言うと
「ハァァアアアッ!」
「ッゼェエエイ!」
聞こえてくるのは気合の入った声と金属同士がぶつかり合う音。
……。
いやうん。
見学するのが目的だし、別に優雅な気分がぶち壊しだとか思ってないよ?
それにしても凄いなあ。
いくら刃を潰した訓練用の武器とはいえあんなに本気で振りぬけば当たり所が悪ければ普通に死ぬだろう。
流石は歴戦の冒険者だなと感心しきりだ。
「気合入ってますねえ」
「だな。隼人は混ざらなくていいのか?」
「あはは、今はゆっくりしたいですね……」
そういえば昨日も朝早く出て行っては夜遅くに帰ってきていたな。
英雄で伯爵ともなれば王都にいると何かと頼まれる事も多いのだろう……。
そしてそれを断われない上に性格的にも断わらないのだろうな……。
「それにミィを混ぜてもらっていますしね」
そういえばそうなのだ。
今特訓を行なっているのは四人。
アイナ、ソルテ、レンゲ、そしてミィの前衛四人である。
彼女達の特訓風景を見物しながらお茶をすることにしたのだ。
「それにしても凄いもんだな……」
4人ともさっきから動きっぱなしである。
特に俺が凄いと思うのはレンゲだ。
武器が行きかう中で拳である。
篭手をつけているとはいえ、弾き、懐に潜り込み、回避し、受け流すという俺の中では考えられない行動をしているのだ。
相手をしているアイナは堅実な両手剣で攻撃後の隙を無くすように動いているのがわかる。
堅実と言うと教本どおりで読みやすく、決定打に欠ける防御主体な戦い方に思われるがやはり長きに亘って研究された結果最も理想とされる戦い方であり、生きるという面でみれば堅実な戦い方ほど大きな弱点もなく、また実戦経験も豊富なアイナならば教本の穴をついた攻撃に対しても臨機応変な対応が可能だろう。
攻撃と回避や防御をお互いに繰り返していく光景はまるで演舞を見ているような気分だが、レンゲの装備は紛れもなく普段から使っている武器であり、その拳の痛みは俺もよく知っている。
ソルテは槍を構えて間合いをはかりながら速度を利用して近づかせないような戦い方だ。
速さと槍は下手をすれば速度が殺されて意味を成さない場合もあるが、ソルテ程の腕前ならば中々懐に潜り込ませない技量があるのだろう。
だがミィは流石隼人と共に旅をしてきた仲間である。
武器は普通のナイフではなく、ククリナイフと呼ばれるくの字に大きく内反りした長めの大きなナイフなのだが、やはりリーチの差は大きい。
それでも何度も懐に潜り込む事に成功し、ソルテが危うい場面が見受けられていた。
「この光景、元の世界では考えられませんよね……」
「その上の領域にいるやつが何言ってんだよ……」
この男、実は
しかも俺がわかるくらいに余裕があるのだ。
普通ならグレートソード並みに大きな『
それなのにステータスが高いので右手一本で振るう。
そのため、空いた左手でしっかりと頑丈な盾をもてるのだ。
はっきりいって攻防共に最強だと思う。
初めて戦いぶりを見た時は、攻めづらく守りやすい難攻不落の城でも相手しているんじゃなかろうかといった感想だった。
4対1でも冷静に護り、剣を振るえば離れてみている俺にまでその疾さがわかるほどに鋭いのである。
そのうえ全体的にステータスが高いので素早さもあるときた。
素人が見ても強すぎる事が分かった。
「……それで、シロは参加しないのか」
「っ……何故ばれた」
いやまあ後ろからひっそりと近づいてくるやつがいれば気がつくさ。
というのは冗談で普通に空間魔法スキルのレベル4『
多分驚かそうという悪戯心にも反応したのだろう。
これのおかげでシロの接近に気がつけるようになっていた。
だがまあ気がつけるだけでシロの突撃を回避できるわけではないのだが……。
「とうっ」
予想通りシロは俺を飛び越えて俺の膝の上に直接座ってくる。
一つ間違えば机にぶつかりガッシャーンとなるところだが、そんなミスは万が一にでもしないシロである。
そんなシロを俺は抱きしめるようにキャッチし、しっかりと膝上に座らせた。
中々の衝撃なのだが、もう慣れたものである。
当人のシロはと言うと目の前のお菓子を早速一口食べて目を輝かせていた。
「モクモク。何の話してたの?」
「いや四人とも凄いなってさ」
「シロさんはどちらに混ざりますか?」
「ん、こっち」
「ではカップをご用意いたしますね」
クリスは新しくカップを取ってこようと席を外そうとした。
「大丈夫。主と一緒に使う」
「ああ、それでいいよ」
新たに屋敷まで取りに行くほどでもないしな。
せっかくクリスも隼人の横で幸せそうにしているのだからわざわざ邪魔をする事も無いだろう。
「でもそうなるとお菓子が足りないか。なら昨日作った新作を出しますか」
「あ、昨日お手伝いした白いお菓子ですね!」
「そう。隼人がいなかったから食べるのは後にしたんだよな。味見はしたけどどうせなら一緒に食べようと思ってな」
「申し訳ないです……。それで、何を作ったのですか?」
「見ればわかるよ。シロも食べる……よな?」
「勿論」
だろうな。
というか初めから人数分だす予定だったけどさ。
それではご開帳といきましょう。
「じゃじゃーん。ショートケーキでーす」
じゃじゃーんは古いかな?
まあいい、せっかく生クリームが作れたのでやはりこれだろうと昨日頑張ったのだ。
スポンジの作り方がイマイチだったのだが、どういったものかをクリスに相談したら試行錯誤の末に作ってくれたのである。
「おおおお! 凄いです! 本当にイチゴのショートケーキだ!」
「シンプルな『ストロングベリー』のイチゴショートだけど、やっぱりこの見た目は感動だよな!」
「ですね! うわあ、懐かしいです……」
わかる。わかるぞ隼人!
俺も完成した時は少し泣きそうになったからな!
すぐにでも食べたい衝動を抑えて隼人とこの感動を分かち合おうと思ったのだ!
俺この世界でパティシエを目指してもいいかも知れない。
ケーキ作りも楽しかったしな!
そして今喜んでいる隼人の姿を見るとやはり嬉しいものだな!
クリスも無邪気に喜んでいる隼人を見てニコニコといい笑顔をしているしな!
相変わらず何故か料理スキルのレベルは上がらないけどな!
「主、食べていい?」
「まあ待て、こういうときはまず隼人からだ」
「僕からでいいんですか!?」
「ああ、俺がハートのエプロンをつけて作ったショートケーキを食べてくれ!」
「一気に食べづらくなりました!」
「だってエプロン貸してくれって頼んだらそれだったんだもん」
「え、フリードが普通のを持っていると思ったのですが……」
……おいフリード。
お前、昨日ハートのエプロン持ってきたのお前だったよな!
どういう了見だ!
俺ならこれでも大丈夫だろうって事か!
いやまあ普通に使えるからつけましたけどね!
クリスがずっと笑いをこらえてましたけどね!
「隼人、早く食べる」
「あ、はい。すみません。それではいただきます」
銀のフォークで先から切り分け、ホイップクリーム、スポンジ、イチゴを全て揃った欠片を一口パクリと食べた。
「ンーッ!」
すると目を瞑り感動に身を震わせるように天を見上げた。
「美味しいです! すごく、とても美味しいです!」
「そうかそうか! いやあよかったよかった」
「主、食べていい?」
「ああいいぞ。またせてごめんな?」
「ん、だいじょうぶ」
シロはまずフォークで一番上のイチゴを突き刺して一口食べる。
シロはいちごを最初に食べる派だったか。
ちなみに俺は真ん中くらいのタイミングで食べ、一度味を変える派だ。
クリスも自分の分を嬉しそうに切り分けて食べ始めているし、俺も食べるか。
「甘い! 美味しい!」
「だな。ストロングベリーの酸っぱさの後の濃厚な甘みとホイップクリームが交じり合って濃厚なのにさっぱりと食べられるな!」
「とっても美味しいです。あ、隼人様ほっぺにクリームがついてますよ」
「えっと、どっちですか?」
「ここですよ」
そういってクリスは隼人の頬についたクリームを指ですくうと、それをぱくりと自分で食べる。
そのあと、皆の視線を感じて何をしたのかに気がつき隼人と共に顔を真っ赤にしていた。
くう、初々しいのう!
「むぅ……やりおる」
シロは対抗意識を燃やしたのかクリームを指でたっぷりとすくうと俺の方に腕を伸ばしてきた。
「あーん?」
「……違う」
あれ、違ったか、と思ったら頬の方に逸れてそのまま向かってきている。
俺はシロの手首を慌てて掴んで止めるのだが、いかんせん小さなシロのほうが力が強い!
「シロ? お前、それはちがうぞ? 指ですくって俺の頬に塗ろうとするんじゃない!」
「主、観念する!」
「何をだよ! わかったお前もやりたいならつけるから! 自分でつけるからそんなたくさんはやめなさい!」
「ん。わかった」
そういってシロは指についたクリームを自分で舐め取り、俺は渋々自分の頬に小さくクリームを付けた。
隼人、笑いをこらえるのはやめなさい。
いっそのことこの滑稽な行動を笑えばいいじゃないか。
「じゃあほら、シロ早く済ませてくれ……」
「ん」
ペロ。
……。
てっきり俺は指ですくいにくるものだと思ってたのだがな。
座り方を変えたあたりからおかしいなとは思ったのだ……。
シロならやりかねないなとは冗談気味に考えていたけど、まさか本当にするとは……。
ペロペロ。
ぺろぺろて……。
だが舐める際に目を瞑っているのにはポイントをあげよう。
「主ぺろぺろ」
「言葉でだと!?」
擬音ではなく言葉で言う子初めて見た!
女の子がぺろぺろなんてやめなさい!
「あー……シロ?」
「ん?」
「いつまで舐めてるんだ……?」
「んー。飽きるまで」
「そうか……」
くすぐったい……。
そしてさすがはシロ。猫人族である。
本当の猫ほどではないが舌がザラザラだ!
猫舌だし、こういったところも猫っぽいのだな……。
「あー……シロさん? そろそろやめません? もう取れてますよね?」
「もう少し」
「そすか……」
いやまあ、目の前で顔を真っ赤にしている二人がいるのでね、そろそろやめましょうね。
「シロ、大変だ」
「なに? 欲情した?」
「いや、してないけど」
「……続ける」
いや待て、これで欲情しろって言うのは無理では無いが今は無理だ。
まだ次のお楽しみも控えているのである。
だから
「シロ、このままじゃ次のお菓子が出せない」
「あい。やめます」
シュパッ!
っと元の定位置、定姿勢に戻るのが早すぎる!
全く動作が見えなかった!
「まだあるのですか?」
「はい! こちらもとっても美味しそうでした!」
「主、早く。お菓子が逃げる」
「逃げねえよ……」
さて、それじゃあお楽しみ第二弾を出しますか。
とは言ってもショートケーキと似たようなものなんだけどな。