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4-14 裏オークション 聖女の部隊

結局壊れた机や椅子は俺が原因であるために錬金を使って直してあげることにした。

木工はあまりしたことが無いので、再構築で元の木材に戻し、無難に鉄で金具を作って繋いでいくといった具合である。


「いやあ。ありがたいでやがりますよ」

「いいよ。もともと俺が原因だし」


鉄からボルトやナット、鉄板などを作り出して木材に穴をあけてから留めていく。

どうせなら次は壊れにくいようにとしっかり補強も忘れない。


「それもそうでやがりますが、回復ポーションまで出してもらうのは悪い気がするでやがります」

「まあ、手持ちがあったしね」


正直倒れたままのシスターもいたので心配になっただけだ。

それにしても、さっき不可視の牢獄(インビジブルジェイル)に多めに魔力を使ったせいか少しの錬金でも結構疲れるな……。

でもまあ、これで終わりッと。

最後の一つである椅子の足をつなげてバランスを見る。

まあー……大丈夫かな。


「そういえば、名前を言ってなかったでやがりますね。私はテレサといいやがります。以後よろしくでやがります」

「あー俺は」

「ダーリンさんですね!」

「ダー……?」


突然何を言い出すんだこの純白副隊長は。

というか意味を知ってていってますねこの人。


「もう復活しやがりましたか副隊長。それで、ダーリンとはどういう意味でやがりますか? 副隊長とは以前からお知り合いで名前をしっているのでやがりますか?」

「やだなあ。ただのアダナですよう」

「そうなんでやがりますか?」

「いや、」

「ちがうでやがりますか?」


ギロリ。

おおう。どこからともなく睨みつけられている気がする。

だがここで選択肢を間違う俺じゃないさ。


「あー……。うん。いいかテレサ。その言葉は俺たちの元の世界で旦那を意味する言葉だ。だから外で呼べば知ってる奴には誤解されるぞ」


正しい答えだ。

もしかしたら他の転生者が広めている可能性も無いとは言えないしな。

残念だがノリが悪くてすまんね。


「あーあ。面白くないですうう。さっき人の下着を見てたの気がついてないふりしてあげたのに、罪悪感とか恩とか感じないんですかああ?」


……嘘だろ副隊長!

まさかあの状態で俺の視線に気がついていたのか!?

気がついていてなお、俺におパンツ様を見せてくれていたのか!!?


「え、やだ事実なの? 気持ち悪い……ありえない」


……。

ちくしょう。

引っ掛けやがったこの女!

とんだ演技派シスターだ。

これはあんまりだ許せない!

お前は俺を裏切った。

何が純白だ。ふざけるんじゃない!

貴様に純白は相応しくない。

これからはスッケスケでも履くといいさ!


「……ありえないのは貴様でやがりますよ副隊長。未婚の、それも聖女である私が衆人環視の前で夫と呼んだらどうなるか……。覚悟はできてるんでやがりましょうね?」

「あ……あは。おっと、終業時間だ帰らねば!」


壁に時計などかかっていないが、一瞬視線をそらして壁を見ると振り向きざまにダッシュで部屋を出ようとする。が、


「にがさねえでやがりますよ?」


ばっちりテレサに捕まえられていた。


「うおおおおお。はっなっせえええええ! ヘルプ! そこの変態ダーリンさんヘルプ!」

「無理だ。諦めてくれ」

「パンツならいくらでも見せてあげるから! 一回見られたんだから二回も三回もおなじでいいからああああ!」

「…………無理だ」

「今一瞬悩んだじゃん! じゃあせめてまた回復ポーションをください! 死ぬ前に!」

「あー……良かったな」

「何が!? 話の前後があってないよ!」

「ここ、教会じゃん。ね!」

「うおおおおおおお! 女神様のもとに送られて、たっまっるっかあああああああ!」

「「「副隊長! 頑張れ頑張れー!」」」

「だったら手を貸してくれ! 皆のその二本の手を!」

「あ、シロちゃんお菓子おかわりいる?」「私果実水取ってくるね」「シロちゃんの主さんシロちゃんに頭撫でさせてもらえないか頼んでくれないかな?」


俺、この人達の都合のいい耳好きかも。

普通わざわざ死地に飛び込まないよね。


「ああ、俺はいいよ。でもシロがダメって言ったら諦めてな」

「ん。お菓子貰ったからいい。でも本当は主専用。だから今日だけ特別」

「「「可愛いいいいい」」」


シロがうりうりされるのを眺めながら俺もほっこりする。

あまり気にせずお菓子を黙々と食べるシロも可愛いなあ。

あー……カメラが欲しい。

今、この時の記録を取りたい。

願わくばシロの成長記録を取りたい。

でもカメラの原理がなんとなくしかわからない……。

生前何故俺はもっと知識を溜め込んでこなかったんだ……。

バイブレータなんて作ってる場合じゃないだろうが!


「うおおおおおお! 目覚めろ私の神気! 神様女神様! どうか私に加護を! 今すぐ! できればこの状況で死なない奴を!」

「……殺しはしないでやがりますよ」


いつの間にか副隊長は十字架に磔にされて、テレサの持つナイフによってスリットが脇の下まで伸ばされていた。


「ひひひひ。副隊長も恥ずかしい思いをすればいいのでやがります……」

「私は神気が下がったら困るんですけど! っていうか男の視線が! ああ、背徳的な状況に興奮している男の視線があああああ!」

「あー……シロ可愛い」

「主、あーん」

「あーん」

「「「いいなああああ!」」」

「ん、あーんはダメ。主だけ」

「「「ずるいいいいい!」」」

「シロ。お返し。あーん」

「あーん。ん、主からのが一番美味しい」

「俺も、シロから貰ったから特別美味しいよ」

「あれ? 見てない!? 嘘でしょほら、今スリット全開よ? 下着とか上も下も見放題なのに!? ほらほら、私一応この部隊で一番いい身体してるのよ? ボンキュッボンなのよ? あれ? 興味ないの? やだ、凄く悲しい……」


いやだって、なんだろうこのこれじゃない感。

脇の下までスリットってなんか微妙だなあ。


「んー……」


どうするか……。

とりあえず裾を短くしよう。

股下5cmくらいで。


「テレサ、裾短くしてみよう」

「このあたりでやがりますか?」

「んーもうちょい上。行きすぎ。そこじゃ見える。そうそうその辺りがいいね」

「わかったでやがります」


最初から見えちゃダメなんだよ。

見えるか見えないか、そのギリギリがミニの魅力だからね。


「わああああ! ちょっと、神聖な法衣であるこの服を切るんですか!? だめですって神気減っちゃいますって、ああああ! そうだった姐さんは神気を減らしてお嫁さんになりたいんだった!」

「勝手に決めるなでやがります」


テレサが容赦なく裾を束ねてまとめてナイフで切り裂いた。

それにしても切れ味のいいナイフだな。

って、よく見たらシロのか。

いつの間に貸してたんだよ。


「ああああああ! 切った! この人本当に切った! やだ、なんかスースーする。もの凄く恥ずかしいんですけど!」

「後ろも切るでやがりますね」

「ちょ、ダメですって! 見えますから! 今私少し高い位置にいるから、腰を上げたらあの男に見られちゃいますから! 布越しに大事なところを見られちゃいますから!」

「あ。短すぎやがりました」

「酷すぎる! 後ろは確認できないんですよ!」

「いいじゃないでやがりますか。どうせ破れてたんでやがりますよ?」

「そういう問題じゃないですよ! 私、このあとこれで一回家に帰るんですよ?」

「痴女だな」

「痴女でやがりますね」

「「「副隊痴女う」」」

「あまりに酷い扱いだ!」


それにしてもこの子達打ち合わせをしている様子も無いのによく声が重なるなあ。


「そういえば主さんは王都住まいでやがりますか?」

「いや、アインズヘイルに家があるよ」

「へえ。その歳で奴隷と家を持ってるでやがりますか。随分稼いでやがるんですね」

「ほどほどだよ」


家はレインリヒ様とヤーシスの策略によって手に入れたものだしね。


「そうは思えないでやがりますよ。うちの金庫番が追加の献金をお願いしやがりましたでしょう?」

「ああ、そういえば1億献金してくれって言ってたな。そんな大金持ってないっての」

「ふむ……おかしいでやがりますね。金庫番の嗅覚は本物でやがりますのに」

「おかしいのは教会で詐欺まがいをしてることだろ……。献金で神気が本当に増えるのか?」

「実際にとある貴族が献金をしてご子息が洗礼を受けられるようになった事もあるでやがりますから、一概に詐欺とは言えないのでやがります」


それは事実なのか?

『〇〇を買ったら彼女が出来ました』『〇〇を買ったら宝くじに当たりました』って広告と同じじゃないの?

あれを嘘だとは言わないけど、信じてるともいいづらい。


「まあ、無いなら仕方ないでやがります。金は持ってる人に出してもらう! それが一番でやがりますからね。それで、アインズヘイルから王都には観光に来たのでやがりますか?」

「友達が参加するっていうオークションを見に来たんだよ。あわよくば参加しようと思ってね」

「……明後日のオークションでやがりますか?」

「そうだけど……知ってるの?」

「知ってるも何も主催は教会でやがりますよ。というか場所は教会の地下室でやがります」

「……まじでか」


まさか裏のオークションの主催が教会だとは思わなかったな。


「それより、参加資格の魔法の袋はあるのでやがりますか?」

「参加資格なんてあるのかよ。一応小ならあるけど」

「小だと中身は空で来た方がいいでやがりますよ。入らないものは買えないでやがりますからね」

「入らないものは買えないの? なんで?」

「一応市井の者には関係ないほど高額取引ばかりが行なわれやがりますからね。貴族やお偉いさんが集まって決められた日に礼拝をするという行事だと思われてるのでやがります。だから売るものを運びこめない者、買ったものを運び出せない者はお断りなのでやがりますよ」

「怪しまれるからか」

「そうでやがります」


教会から高級な物を持って外に出られたら流石におかしいもんな。

裏で汚い事してるんじゃないかって勘ぐられるか。


「奴隷を買うなら気がつかれはしないでやがりますけどね。人を隠すなら人の中でやがりますから。でも遺跡から発掘された巨大な像とか、巨大魔獣の毛皮なんかもありやがりますからね」

「さすがにそれを教会から運び出されるのを見られるのはまずいか」

「で、やがります」


なるほどね。

まあでも魔法の袋も一応あるし、最悪魔法空間を隠蔽して使えば大丈夫か。


「そういえば主さんは錬金術師でやがりましたか。何か商品は出すんでやがりますか?」

「一応アクセサリーは作ってきたんだけど、出品って今からできるのかな?」

「……締め切りは過ぎてやがりますね。何点ありやがりますか?」

「一応セットで売りたいから数点はあるけど1つかな?」


様子見がてらだし、あんまり作ってもしょうがないかなって。


「なら私が捻じ込んであげやがりますよ。当日、持ってきてくださいでやがります。あ、偽物とかはダメでやがりますからね」

「大丈夫。全部自分で作った奴だから」

「たまに宝石なんかだと本物を見せてから渡す直前にすりかえる輩もいやがりますからね」

「騙されるやつとかいるのか……?」


この世界には鑑定スキルがあるのだから、調べれば一発だろう。

付き添いも許可されているんだから、一人は鑑定スキル持ちをつれてくると思うんだが。


「初参加の貴族なんかがたまに騙されやがりますね。出品者の公表は行わないので、誰に文句を言えるわけじゃないのでやがります。次からは鑑定スキルを持ってる奴を連れてきやがりますが」

「なるほどな……」

「あのう……そろそろ降ろしてもらえないでしょうか……。あとよかったらこの服を錬金で直すことは出来ませんかね?」

「あー……」


完全に忘れてた。

もう既に部屋のオブジェと化していたから、太ももを鑑賞する事もなかった。

ふむ。しかし、なんだろう。

裾が短く肌が見えている上にナイスな体なのだが妙に興奮しないのだよな。

俺の性欲も減衰の傾向にあるのだろうか……。


「てりゃ」

「ギャーッス! なにめくってやがりますか! うつっちゃった! 姐さんのしゃべり方がうつっちゃうくらい驚いてます!」

「んーなあテレサ。なんか違うんだよなあ」

「難しいでやがりますね。露出を増やせばいいということじゃないのでやがりますか」

「みたいだな。これで履いてないとかどうだろう?」

「いいでやがりますね。脱がすでやがります」

「流石にダメだよ!? これまでは許してもこれ以上は女神様だって許さないと思うの!」


この子はこの状況でも元気だなあ。


「ふう。これ以上食べたら夕ご飯が食べられない。満足」

「シロちゃんまた来てね! いつでもお菓子あげちゃうから!」

「ん。また来る」

「「「嬉しいー!」」」

「貴方達よく見て! 異常に気がついて! 今大聖堂で起こっちゃいけない事が起きてるから! シスターの下着が剥かれそうになってるからあああ!」


テレサがイジラレキャラだと思ったが、どうやら副隊長の方が本命らしい。

隊員達もシロを愛でるので忙しいのか、話どころか目も向けない徹底ぶりだった。


「まあ冗談だ」

「当然でやがります」

「嘘だ! あの目は完全に私を剥いて帰り際に追いかけてきて家まで押しかけて乱暴をする目だった!」

「そんなことしないっての。外に馬車を待たせてるしな。ああ、あと良かったらこれ着て帰りな。男の服だから嫌かもしれないけど、ちゃんと洗ってあるやつだから」


そういって魔法の袋から俺の替えの服を取り出す。

流石にズボンは新品を出してあげよう。

洗ってあるとはいえ嫌だろうし。


「え、あの、ありがとうございます……?」

「まあ悪ふざけが過ぎたと思うし、でも楽しかった!」

「そ、そう? なら良かったの、かな? うん。着替えはありがたくお借りするね。ちゃんと洗ってお返しするから」

「返さなくてもいいよ」 

「ううん。ちゃんと返すから。だから、その。また来てね」

「うん? まあ明後日はどちらにせよここに来るけど……」

「そうじゃなくて、普通の日に来てよ。明後日じゃ渡せないでしょ?」

「ああ。うん。わかった。シロも気に入ったみたいだしまた来るよ」

「うん!」


満面の笑顔である。

しかし……。

『月刊ドキッ! 実はいい人なの? 何この気持ち……』の体験談にあった事を真似てやってみたのだが効果は抜群のようだ。

優しくするならば相手をいじりすぎのぎりぎりまでいじってから、最後の最後で優しくする事により実はいい人という印象を強く残すという考えだそうだ。


「主、すけこまし」

「何処で知ったのその言葉!?」

「レティが言ってた。女の子を誑かすのはすけこまし」


レティからってことは隼人からか?

でも隼人からすけこましって単語が出るのか……?

むしろ隼人自身がすけこましだと思うんだが……。

ああなるほど。


『そんな、それじゃあボクがすけこましみたいじゃないですか……』


ってところか。

自爆したのが目に浮かぶ。


「それじゃあそろそろ帰るよ」

「なら入り口まで見送るでやがりますよ」

「ああ、ありがとう。じゃあまた明後日に」


今日は楽しかった。

だけどその分疲れたな……。

夕ご飯を食べてお風呂に入ったらすぐ寝てしまおう……。

テレサ 王都の大聖堂神官騎士団に在籍する隊長。女神の加護を受けた特殊な身体を持つ聖女。中身は乙女思考なのかもしれない。


副隊長 テレサを隊長とした神官騎士団の副隊長。隊長を唯一姐さんと呼ぶ。イジリ側に回りたいが弄られる事も多い。

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