4-13 裏オークション 物理系聖女
昨日は忙しくてアップできませんでした!
今回も楽しくかけました!
えー……。
今どういう状況なのかを説明いたしますと、俺は椅子に座らされ姿だけはシスターの集団に囲まれたうえで、巨大な十字架を床に突き刺して横に伸びた部分に座った金髪のシスター風の女性に尋問されようとしています。
「さて、まず何から話しやがりましょうか」
足をぶらぶらとさせて楽しそうな顔で笑う金髪シスター。
その笑顔、大聖堂でしていい笑顔じゃないですよ。
歪んでます。
ええ、猟奇的な笑顔です。
「んん? よく見ると黒目でやがりますね。それに黒髪ってことはもしかして『流れ人』でやがりますか?」
「ええ、まあ」
「ならこの状況も簡単に抜け出せるんじゃねえでやがりませんか?」
「まあ……多分?」
少なくとも表にはフリードがいるし。
外で騒いでいれば騒ぎに気がついたアイナたちも駆けつけてくれるだろう。
もしかしたら嘘八百を並べ立てられて二度と王都に来れなくなるどころか、教会から追われそうになるかもしれないけど死ぬ事は無いと思う。
「ならなんでしねえでやがりますか?」
「え、だって逃げたら追いかけるよね?」
「そりゃもちろんでやがります」
「大人しくしてれば平穏無事に帰れるんでしょ? なら大人しくして帰らせてもらうよ」
「……まあそれだけは女神に誓ってお守りいたしやがりましょう」
だよね。
シロが殺気が無かったって言ってたし、もし何かするつもりならこんな普段から使用しているであろう部屋ではなく、もっと奥まった部屋や地下室に連れて行かれるはずだろうしな。
それに、今シロは机の上に置いてあるお菓子で餌付けされてるし。
基本的に超怖い状況ではあれど、悪い人って感じじゃないんだよね。
「はぁ……それで、何か見やがりましたか?」
「んんー……」
さて、どうしたものか。
正直に見たといえば何かしら反応はあるだろう。
見てないといえばすぐに解放してくれるだろうか?
まあ、それはないよな。
「沈黙は肯定っと、まあ見られて困るものでもないでやがりますけどね」
「と言うと?」
「流れ人だから何も知らないのでやがりますね……」
「あー……その、すまんな」
「いや、いいでやがります。どうせならちゃんと説明するでやがりますよ」
そういって金髪のシスターは十字架から降りて歩きながら話し始めた。
「教会の金は信者の献金、治療、お布施で成り立ってやがりますから。あとはアンデッドが湧いたとか言われれば駆けつけて浄化した際にお礼を貰うとか出やがりますね。だから『信者の金』で食っていってるわけでやがります」
「お酒の匂いがしたってのは?」
「ワインは神の血でやがりますからね。教会で許されている唯一の酒でやがりますよ」
「……紫煙は?」
「治療に使って限界まで搾り取ったイグドラシルの葉を乾燥させて刻んで、同じく使用後に乾燥させたイグドラシルの葉で巻いた葉巻でやがりますからね。悪性は0、むしろ癒し効果や緊張を解く効果もある優れものでやがりますよ? 禁止されている普通の葉巻とは違いやがりますし、当然イグドラシルの葉は合法的な薬の材料でやがります」
……。
屁理屈……って訳じゃなく本当に許可された物なのだろうか。
ワインは神の血だからってのはなんとなく聞いたことがある。
葉巻に関しては悪影響どころかいい影響を生み出すならいいの……かな?
匂いは別としてだけど。
そういえばいくら殺気が無かったとはいえシロが反応出来なかったのは、イグドラシルという葉の葉巻の緊張を解く効果のせいかもしれないな。
「それにでやがりますがもしこれが禁止な行為でやがりましたら、我々の神気が下がりやがりますからすぐわかるでやがりますよ」
「神気って変化するのか?」
さっき霊感商法だと思ったのは真実だったのだろうか。
いやでも、きっと、かもしれないと確定的な言葉は言ってなかったけどね。
「そりゃするでやがりますよ。例えば罪の無い人を殺せば神気は消えて神の加護を受けられなくなりやがりますし、信仰心がある程度ある信者は洗脳系のスキルを無効化できやがります」
「それはなんで?」
「私達はいわば女神に洗脳されている身でやがりますからね。私達のような生物のたかが洗脳系スキルが、女神の洗脳に勝てると思いやがりますか?」
「思わないな……。神気が多いと洗礼を受けられるんだっけ?」
「そうでやがります。神気の強さで聖魔法を覚えられるのでやがります。聖魔法には回復や状態異常を治したり、アンデッドを浄化する力がありやがります。まあ、洗礼を受けずに聖魔法が使える例外もいやがりますがね」
じとーっとこちらに視線を向けられるが、残念な事に俺は聖魔法は取ってないので覚えてません。
隼人ならユニークスキルが『
「あとは神気の強さで女神様から特別な加護が与えられたり、教皇様や聖女も神気の強さで決まりやがります」
「へえ、じゃあトップは不正を働く悪い奴にならないって訳か」
いいじゃんそのシステム。
正直宗教はどこもカルトじみたお金目当ての集団だと思ってました。
何かにつけて押しかけてきて、『貴方も幸せになりませんか!』みたいなね。
あの善意のおすそ分けって本気で考えてる目が怖いんだよ……。
この世界には前にいた世界とは大きく違った事が一つある。
それは、俺たち流れ人だ。
流れ人の存在が多く知れ渡っているという事は、女神が実在するという真実も広く伝わっているのだろう。
誰も見たことのない偶像の神ではなく、実在する女神に祈りを捧げるというのならいかに無宗教の俺でも意味があるとわかる。
「まあ必ずそうとは言えないでやがりますがね……。その証拠に私みたいなのも聖女でやがりますから」
「へえ聖女なん……聖女!?」
ふあ!?
え、聖女ってあれだろ?
温和で高貴な雰囲気を持っていて美しさと慈しみを兼ね備えた神の言葉を聴いたりしちゃう、使徒的な存在じゃないの?
お花が好きなのに、摘んでしまうのが可哀想だからと眺めているだけで満足しちゃうような、慈悲深い存在じゃないの?
全部俺の偏見だけどね!
何故かシスター服にスリットが入っていて、それが胸の下の長さまで伸びて腰の辺りで一度とめてあるけど露出趣味があるのかと疑うような服を着ているこの子が?
スリットから見えるおみ足は美しい限りだけど、下着の紐が見えないからさっきから歩くたびにその中が気になってしまっているような格好のこの子が?
どっからどうみてもガムとか膨らませてるストリート系なんですけど!
ガングロとかではないけど、シスター服よりもカウガール服の方が似合いそうなんですけど!
言葉遣いとかおかしいじゃん!
ます付ければ敬語になると思ったら大間違いだ!
「……まあ驚くのは無理もないでやがりますよ。私自身信じられないでやがりますから」
「そんな! 隊長は間違いなく聖女です! 信者の方々にだって大人気なんですよ!」
「歴代の聖女にもいないような下品な聖女だから物珍しいのでやがりましょう」
「そんなことありません! この前だって助けた村の人が、総出で礼拝に来てくれたじゃないですか!」
「いや待て、それより隊長に突っ込ませてくれ」
聖女で隊長?
もう訳がわからなくてついていけてないんです。
「ああ、私達は主にアンデッドの討伐をやってやがりますからね。私は神官騎士団の隊長をやってやがります」
「いいのか? その、そんなんでも聖女なんだろ?」
「まあ、私以外にもちゃんとした聖女もいやがりますから。神気の量がある程度いくと聖女扱いなんでやがりますよ」
「隊長は凄いんですよ! 神気が他の聖女様より多いですし、肉体に女神様の加護をいただいているのです!」
肉体に女神の加護……って、準チート能力的な?
「まあ言うより触ったほうが早いでやがりますね」
そういって手を取られると、腰の辺りのスリットに手を突っ込ませられた。
「ちょ、お前……あ、れ?」
なんだこれ。
俺はてっきり女の子特有のやわやわすべすべの肌を想像したんだが……。
こつこつ?
かちかちというか、腹筋が割れているというわけでもなさそうなんだがな。
「堅いでやがりましょう? 筋肉が変に強力になってやがるんです。お腹だけじゃないでやがりますよ。腕も、そして足もこんな感じで超発達してやがります。これが女神様からいただいた加護でやがります。女の私にこんな加護をくれる辺り女神様はろくでもないのでやがりましょうね。唯一の良心か、見た目がムキムキになってないだけましなのでやがりましょうけど……」
少し悲しそうな顔を見せる金髪シスター。
そうだよな。
女の子だし身体が硬くなるなんてショックだよな。
「まあ、こんなんでも便利なのでやがりますよ。怪我も恐れずに突っ込めやがりますからね」
「だからアンデッドを倒す部隊の隊長なのか」
「そうでやがりますよ。武器はアレでやがります。重さはまあ、大男が持っても振り回せないでやがりましょうね」
そういって指差したのは、先ほど腰掛けていた巨大な真っ白い十字架だ。
多分特注なのだろう十字の上と下の先は二つに割れており、振り回しやすいように掴むための棒が取り付けられている。
そして、交差している中央部分にも丸い穴が開けられてこちらも棒がついて掴めるようにされていた。
あれでアンデッドを叩き潰し吹き飛ばしてきたのだろう。
ただその痕が残っていないほど綺麗で、教会に飾ってあるような美しい純白の十字架であった。
きっと手入れをかかしていないんだろうな。
「ところで……いつまで人のおなかを触ってやがりますか?」
「ん? ……おお!」
つい、なんか凄かったんだ。
今まで味わった事のない感触で、なんだか放したくない。
「ったく、こんな硬い肌触ってもつまらないでやがりましょうに……」
「怒らないのか?」
「減るもんでもないでやがりますし、むしろ柔らかくなくて申し訳ないと思ってやがりますよ」
そうはいいつつも、おなかをさすって軽くジト目に見えるんだが、やはり恥ずかしかったのだろうか。
「隊長照れてます! 男に普通に触れられたからですかー?」
「うるせえでやがりますよ? ぶち潰されてえでやがりますか?」
顔を真っ赤にして巨大な十字架を持ち上げる金髪シスター。
その顔はどう見ても照れ隠しなのがまだ会って間もない俺でもわかった。
それにしても、
「へえ、本当に見た目は変わらないんだな」
巨大で重量のある十字架を持ち上げているというのに、腕の筋肉は若干盛り上がっている程度である。
「ちょ、だからべたべたさわるんじゃないでやがりますよ」
「減るもんじゃないんだろ? せっかくだし」
「なにがせっかくでやがりますか! 普通に、常識的におかしいでやがりましょう!」
「もう少しだけ、な」
なんだろう。
病み付きになるというのか、この硬さが、いい。
改めて自分のストライクゾーンの広さに驚きもしない。
いやだってこの照れながら怒ってる顔は可愛いしな。
それにもしかしたらこんな話し方とかは実は女神様からの神気を減らす目的があるのに、教会に気を使ってせめて『ます』だけ残している相手にも気を使ういい子なのかもしれない。
気の使い方はおかしいが、そう考えるとスリットが長いのも、もしかしたら履いていないのかもしれないのも女神様からの神気を減らす目的で、実は
『うう、こんな格好恥ずかしいよう。でも、これで普通の身体に戻るなら……』
『普通の身体に戻ったら教会をやめさせられちゃうかな? でも、そうしたら結婚とかもできる、よね?』
『旦那さんかあ。普通で、優しくて、あとは……ちょっと格好良くて、私をちゃんと愛してくれる人がいいなあ。なんて……えへへ』
とか考えてたら、滾るね!
クッハー!
「……」
「ん? どうした顔を真っ赤にしてプルプル震えて」
「隊長? もしかしてそんな事考えてたんですか!? この男の妄想じゃないんですか!?」
「え、俺また口に出してた?」
「ええ、その発想は私達には無かったです! 感銘を受けました! 姐さん可愛い!」
なんでだ!?
何で俺は妄想をし始めると口に出してしまうんだ!
俺には密かに女の子で妄想することすら許されないというのか!
でも他のシスターの子からは称賛を受けた。
良かった。ドン引きされないで。
まあ、
「……お前ら全員ぶっ潰されやがれですよ!」
「姐さんがご乱心だ! 皆防御陣形を!」
「「「「はい! 副隊長!」」」」
その後、この休憩に使われるらしい部屋の惨状は酷いものであった。
机は折れ、椅子は木っ端に、シスターが足をおっ広げるのもお構い無しで倒れ、俺は部屋の隅で一人
そんな中、シロはちゃっかりお菓子を確保してもくもくと食べ続けている。
「……主。これ美味しい!」
「そうか……良かったな」
「うん!」
この大暴れは金髪シスターが落ち着くまで続いた。
だが落ち着いたと思ったら無傷の俺を発見して顔をまた真っ赤に染め、俺に向かって飛びかかろうとしたところをシロが止めて無事に場が収まった。
流石シロ。最後の最後で頼りになるな。
ちなみに、お尻の部分の布が破れていたシスターこと、副隊長さんの下着の色は純白でございました。
やはりそこはシスターらしく純白でございますよね。
まあ個人的にはシスターなのにあえての紫、大人な黒、可愛らしくピンクや水色でも構わないのですけど。
アニマルプリントなんかもこの世界にあるなら問題ありませんし、Tバックでも履いてなくても問題ありません。
ふう。
ごちそうさまでした!!