4-1 裏オークション 領主再臨
変なところで三章を終わらせてしまいました。
それと申し訳ないのですが、愛猫の調子が悪く少し更新ペースが落ちるかもしれません。
領主に呼び出しを受けてから数日、街は領主の病が治ったということでお祭り騒ぎが行われていた。
俺はと言うと奴隷になった皆とお祭りを楽しむ……訳でもなくこの街の怖い人たち筆頭と優雅にテラスでお茶をしていた。
この人たちに恨みを持つ方々、今日だけは襲いに来ないでくれ。
「残念だったな。領主になれなくて」
「いいんだよ。俺が領主って玉かっての。民衆のためにあくせく動くなんざマゾじゃなきゃやってられねえっての」
「確かに。あんたが誰かの為に真面目に働いてたら笑うな」
「かー。言うじゃねえか若造が。で、実際のところどうやって手に入れたんだよ」
「知らないっての」
どう考えてもたまたま霊薬が作れたなんて話は信じてもらえないだろう。
それにダーウィンに知られるのは何か嫌な予感がする。
「私も興味あるね。でも初めから持ってたんならウェンディの時に出していてもおかしくなくはないかい?」
「それでは霊薬を作れるようになったと?」
「そうは言わないがね。私達が知らない特別な何かがあるんじゃないかって事だよ」
「何もないだろ。レインリヒは俺のギルドカードも確認したじゃねえか。なんならまた見せようか?」
「お。潔いいな坊主。どれ見せてみろ」
「はいはい。見て何もなければ納得しろよな。ギルドカードオープン」
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忍宮一樹 : 錬金術師 Lv1
HP55/55 → HP150/150
MP1020/1020 → MP2550/2550
STR : G VIT : G
INT : D→B MID : E→C
AGI : G DEX : B→A
アクティブスキル
空間魔法 Lv3
錬金 Lv9
鑑定 Lv3
パッシブスキル
農業 Lv1
料理 Lv1
アクティブオートスキル
狂化 Lv1
???スキル Lv3
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「おいおいおいおいおい。なんだよこれ。空間魔法って伝説の産物じゃなかったのか?」
「あー……」
って、やば。霊薬に気を取られてて空間魔法があるの忘れてた!
「これはこれは……。???のスキルは流れ人特有のスキルですか? もしかしてこれが関係あるとか?」
「ないない。これは残念ながらまったく別のスキルだから。『お小遣い』」
空中から突如5枚の金貨が降って俺の掌に納まった。
「はー。10万ノール金貨が五枚も降ってきたぜ。それで、次使えるようになるにはどれくらいかかるんだ?」
「一日一回だよ。何度も使えたらいいのにな」
「いや十分だろ。一日一回50万、それもまだレベル3でだろ? 9になったら金貨何枚貰えるんだよ」
「出処が気になりますね……。どこからか移ってきているのか、それとも無から生み出しているのか……」
「そんなことより霊薬だろうが。あんたたち目的を見失ってるよ」
「おっとそうだったな。んー。お、もう錬金レベルが9なのか。はええなあ」
「はあ、私は10年かかったんだがねえ」
「流れ人の成長スピードは速いですからね。それでも随分とお早いです」
「レインリヒに効率的に教えてもらえたからじゃないか?」
「だとしても早すぎますよ。普通は一年でレベル3、二年でレベル5、三年でレベル6、六年でレベル7、七年で8、十年で9です。レインリヒ様のように才能があった上でこうですからね」
んー。となると一年どころか数ヶ月でレベル9って早すぎじゃない?
おかしいな。俺経験値アップの能力は選択してないんだけど。
「それよりも特に目立ったスキルは他にはねえな。空間魔法……も詳しく聞きたいが霊薬には関係ないだろう」
「その通り! ボクもそれが気になっていたんだよ!」
バン! と、テラスの扉を勢いよく開けたのは話の中心領主様であった。
横ではウェンディがあわあわして開けられたガラスの扉を気にしていた。
「いやいやいや。今街で領主様の再起祭りをやってるんだからこんなところに来ちゃダメでしょ」
「なんだよう。お兄ちゃんはボクが邪魔だって言うのかい? あんなに仲良くなったのに酷いじゃないか」
「ちょ、膝の上に座んなっての」
ああ、もう。
シロが口をロの字に開いてガーンってなってるから!
今大事な話をするからこっち来ちゃダメって言ってるんだから。
「来やがったなドマゾ領主」
「ドマゾだなんて言うんじゃない。ボクはこの街に生きる全ての人たちの幸せを願っているだけだよ」
「はいはい。それで、なんでお前そいつの膝の上に乗ってんだよ」
「そりゃボクの席がないからね。それにボクは小さいからこの席でちょうどいいんだ。あ、このお菓子美味しい」
「あんた、ロリコンは病気だよ」
「ちょっと待て。4△才なのにロリコンなのか?」
「見た目が問題さ。40だろうが60だろうが見た目が子供ならロリコンなんだよ」
「嘘だろ……。俺より大分年上なんだぜ……」
「ふふ。否定しない辺り脈はあるのかな? お兄ちゃん」
年上にお兄ちゃんと呼ばれるのは変な感じがする。
だが、まあ年齢を知らなければ悪い気はしないのだ。
俺には姉はいたが妹はいなかったしな。
何度下の弟妹が欲しいと思った事か。
年齢を知らなければ可愛い妹のようなのだがな……。
膝に乗って俺の特製のお菓子を両手で持つ40代……。
「ん? お兄ちゃんも食べる?」
「いや、食べていいよ」
「そう? わーい」
あーあー。菓子クズをぽろぽろ落すなよ。
全部俺の膝の上に乗ってるからな。
「っと、こぼしちゃった」
「いや、落した奴は食べなくていいから」
「ダメだよ。食べ物を粗末にすると目が潰れるんだよ」
それおばあちゃんが昔教えてくれたやつ!
しかもお米だからね。
膝をつくつくとつつかないでくれませんかね?
ぐりぐりするのは違うと思うの!
「なんだか仲良しのご兄妹のようですね。昔からオリゴールを知っている身としては複雑です」
「だな」
「なんだ。四人は昔から知り合い同士なのか」
「そうだよー。よくいたずらしてはレインリヒに怒られたものさ」
「昔からクソガキだったよあんた達は」
「しかもこいつらと来たら年上の男の子のくせにボクを置いて逃げるからね。だから足元に罠を張って道連れにしたものさ」
「やっぱあれてめえの仕業か!」
「当然だね。なんでもかんでもボクのせいにして、自分は遠巻きに笑っているなんて許されるわけが無いだろう」
へえ。この四人昔からの付き合いなんだな。
っていうかヤーシスとダーウィンとオリゴールでなんのいたずらをするんだよ。
しかも相手がレインリヒって、馬鹿なの?
「それで、何しに来たんだよ」
「ん? あそこから皆が見えたから来ただけだよ?」
「そうなのか……」
ああ、門の外で執事さんがこっち見上げてるよ。
「ウェンディ、執事さんを家に」
「あ、ならもう今日は帰っていいよって伝えといてくれるかな。ボクはここでゆっくりしていくからさ」
「か、かしこまりました」
「いや、お前の再起祝いだろ? 行かなくていいのかよ」
「皆騒ぎたいだけだよ。商人なんかは理由つけて大量に物を売りたいだけだろうし、民はお酒をお昼から飲む口実にしているだけさ」
そんな正直に現実を言わなくてもいいじゃないか。
形だけだとしてもお前の再起を祝ってはいるんだから。
「それにボクも飲みすぎたからね。街を歩けば駆けつけ三杯って飲ませるんだもん。せっかく治ったのに今度はアルコールの取りすぎで死んじゃうって」
「その割には酔ってるように見えないぞ」
「んー。酔ってるよー。ほらほらー」
膝の上で弾むように上下運動を繰り返しているが、座った状態で足の筋を刺激されると痛い。
「暴れるなら降ろすぞ」
「ええ……。ボクのお尻はお気に召さないのかい?」
「いや、痛いだけだし……」
「なあ、いちゃつくのを見るのがうざってえから、話戻していいか?」
「ああ、そうだったそうだった。話がそれちゃったね」
「ああ、お前のせいでな。んで、空間魔法って何ができんだよ」
ちっ覚えてたか。
せっかく話が逸れたのに戻しやがって。
すっと掌を上に向けてダーウィンに差し出してみる。
「何だよその手」
「いくらだす?」
「よし、この情報を魔法使いギルドに売るとするか!」
「ごめんなさい調子こきました! お願いします頭下げますからまじで黙っててください」
頭を下げると、オリゴールが口をこちらに向けてんーとやって待っていたがそれを避けながら何度も頭を下げた。
するとダーウィンが俺と同じように手を差し出してきた。
「ッく……いくらだ。言ってみろ」
「冗談だよ。な。黙っててやるから教えてみ」
「そうですよ。お金は差し上げますから私だけに話してみませんか?」
「お、おいヤーシスそりゃ汚えぞ」
「伝説級の魔法の内容を聞けるんですよ? 興味が惹かれないわけ無いじゃないですか。あ、もちろんダーウィンさんには話しませんので」
「いや、いいよ。うん。まじで魔法使いギルドに黙っててもらえるなら話すから……」
「私も気になるね」
レインリヒもか。
黙ってると思ったらさり気なく聞き耳を立てる予定だったんだな。
こんちくしょうめ。
「まあまだレベル3だから大した事はないけどな」
「いいからいいから」
「まあレベル1は
「ほお。容量はどのくらいあるのですか?」
「どれくらいだろ……。でも結構一箇所にまとめることもあるから一箇所で魔法の袋(小)よりは入るな。それが0~19番に分かれてる感じ」
「いいじゃねえか。商人なら涎垂らして欲しがるスキルだな」
「ええ。行商の方なら尚更欲しいでしょうね」
あー。馬車に荷物を乗せる必要もないし、大荷物がなければ盗賊に襲われる心配もないとかか。
商人になれば良かったかな? って思ったけど外は危険が危ないからダメだね。
「それでそれで? レベル2は?」
「
「ふむ。例えば矢を撃たれた際に
「試してみた事はないけど、多分そうかな。あんまり使った事無いんだよね。レベルが上がって魔法空間の量が増えたってくらいにしか思ってなかった」
「なあ、それもしフレイルとかの鎖で繋がったような武器でやったらどうなるんだろうな」
「わかんないや。人体とか生き物も魔法の袋とは違って入るのかもしれないけど、怖いから試せないんだよね」
本当にどうなるんだろ。
先っぽだけ消えるのだろうか。
それとも同一アイテムとして見られて柄の部分も中に入るのだろうか。
まあ機会があったら試してみるか。
生き物は、グロイ結果になったら困るので試す予定はないのだけれどね。
「なんだか伝説って言ってもぱっとしないね」
「俺に言われてもな。元々魔法の袋代わりに欲しかっただけのスキルだし。ついでに転移なんかあればいいなって思ってこれにしたんだよ」
「ふーん。それでそれでレベル3は?」
「これも説明しづらいんだよな……んー」
悩んだ結果俺のティーカップを
「なにそれ。物を浮かせられるの?」
「いや、透明な箱を作れるって言えばいいのかな。牢獄、棺おけ……防御壁?」
「疑問形で聞かれてもな……。とにかく防御には使えるなら便利じゃねえか」
「だね、ちなみに」
膝の上に乗っているオリゴールを抱えて
「上に乗る事も出来る」
「おおー。なんか変な感じだね」
「気をつけろよオリゴール。そいつは変態だからな。下からスカート覗かれるぞ」
「おいちょっと待て。いつからそうなった」
「いやだってお前奴隷に宣言してたじゃねえか。確か胸を」
「ちょっと待とうかダーウィン。それ以上はいけない」
「流石はお客様ですね……。私、これ以上貴方に奴隷を売っていいものかと考えてしまいます」
「大丈夫だから……。変な事はしてないから……」
してないよね?
うん。嫌がってないもん。大丈夫だよね。
「何々ー? スカートの中が見たいなら言えば見せてあげるのに」
「残念ながらスケールが足りない。せめて巨乳になって出直してこい」
「ムキー! 種族的な不足を言うのは差別だと思うんだけど!」
「選り好みする変態だぞ」
「高度な変態ですね」
「あんた達あんまり私の弟子をいじめるんじゃないよ。ったく、弟子が変態だなんて噂が立ったらどうするんだい」
レインリヒ様!? 助けてくれたようだけど変態だと思っておられるんですね!
「ほら、そろそろ私達は帰るよ」
「そうですね。まだ仕事もありますし」
「俺もそろそろ宝石商が来る頃だったな。ああ、改装の件はダーマに伝えとくから安心しろよ」
「何事も無かったかのようだ……。畜生。からかったな」
大人は!
これだから大人は!
「あれ、オリゴールは帰らないのか?」
「いや本来の目的がまだだし」
「目的あったのかよ……」
「ええー忘れちゃったの? ボクと二人きりで個室に入る約束をしたじゃないか」
「「「……」」」
「……チョットオチツイテモラエマセンカ?」
「じゃあな」
「帰るかね」
「失礼しました。ごゆっくり」
「待ってお願い帰らないで! おいロリどういうつもりだ! ちょ、話を! 話を聞いてくれ!」
せめて俺はロリコンじゃないと説明させてくれ!
勘違いされたまま帰られるなんて不本意だ!
「……さっきから人をロリロリって失礼じゃないかな。ようし、個室でボクの魅力を見せ付けてやろう」
「いやそんなこと言ってる場合じゃないから! おいちゃんとお前からも説明してくれよ! ねえ領主様ぁ!」
ああ、待ってまじで帰っちゃう!
違うんだって、あれは本当にただの子供だと思ってただけなんだ!
子供と遊ぶだけだと思ったんだああああああ!
俺の魂の叫びは伝わらず、三人は無情にも帰っていった。
2017 7/6 17:40 誤字、文章のおかしいところを修正しました。
2017 7/8 11:16
ごめんなさい。先にオークションを済ませます。
タイトル、章も全て変更いたしました。
2017 8/07 オリゴールの年齢アップ。