3-15 マイホームマイライフ やっぱりお風呂は最高だ!
さて、お腹も十分に満たされた。
もうこの場にいないヤーシスはと言うと、
「それではお客様。明日はきっとダーウィン一家のお世話になるのだと思いますので錬金を今日の内に頑張ってくださいね」
と言い残して去っていった……。
うん。
まあわかってるけどさ。
もう少し待ってよ。
後でやるから……。
とりあえず今はお風呂だお風呂。
「ウェンディ、風呂に入るぞ」
「はいご主人様」
「うー……食べすぎたっす。自分もっすよね?」
「当然」
「お、おおー。やってやるっすよ!」
「シロも入る」
「わかってるって。んじゃ行くぞ。アイナ達は二階のリビングでゆっくりしていてくれ」
天井を見つめているソルテ。
それからおなかをさすっているアイナに向かって言う。
「あー……食べ過ぎた。ちょっと食休みさせてもらうー」
「そうだな。私も止まらずに食べ過ぎたようだ。遠慮なく休ませてもらおう」
それにしても四人はよく食べるなあ。
最後の方はシロVS冒険者組三名となっていたし、なんていうか圧巻だったな。
しかも勝者であるシロはけろっとしてるし。
四人で地下室に向かい、俺は速攻で服を脱ぎ捨てると急いでかけ湯とタオルで身体を洗い、頭から流していく。
そして湯船に一度つかり、まずは第一の来訪者を待つ。
「にばーん。とう!」
「いやだからせめてかけ湯はしろっての」
またもかけ湯すらせず飛び込んできたシロを空中でキャッチし、床に降ろす。
さて、出番だぞ俺のマジイイイイックアイテエエエム!
『泡がめっちゃたつ石鹸 泡がめっちゃたつ』
ふふふふふ。先ほど買い物に出た際に見つけてしまったのだよ。
シャンプーは探したけどなかったが、これは良い買い物だったはずだ。
「ほいシロ。腰をおとせ」
「ん? おぉ」
不可視の牢獄を椅子のように小さく発動させ、俺の洗い易い高さに調整。
さっき料理をしていて気がついたのだが、このスキル意識すれば発動したままの移動も可能のようである。
っということでシロが不可視の牢獄に腰を下ろしたまま宙に浮く。
かけ湯で身体を軽く流してから桶にお湯を張りそこに石鹸で泡を立ててゆく。
「泡泡ー?」
「そ。身体洗うからな。じっとしてろよ」
手に持ったタオルに泡をのせシロの身体にかけていく。
泡がめっちゃたつ石鹸は文字通り泡がめっちゃたつ。
しかも流れ落ちるような石鹸ではなく、粘度が強いというのだろうか、泡がしっかりとしていて肌に乗ってもそのまま滑り落ちてこない。
「泡泡ー」
肩、腕、背中、腰などに乗せていき、その上からタオルでこすっていくとシロは気持ち良さそうに目を細める。
一通り背中側を終えてシロにタオルを手渡して前は自分でさせようと思ったのだが、シロが急に振り向いて、ん! と自己主張の少ない胸で自己主張を始めた。
「前は、あーいいか。よし。ちょっと待ってろ」
「ん」
俺はまた泡を大量に作り出す。
そして髪にはかからないように気をつけながら泡まみれにしていく。
「主見て見て」
「巨乳だな」
シロは泡を手に取り、それを自分の胸を膨らませるように形作っていった。
「夢のよう」
「夢から覚める時間だ」
ざぱああっとお湯をかけるとあっという間になくなってしまう。
「主酷い。上げてから落すなんて」
「いや、冗談のつもりだったんだが……。まあほら、もっかいちゃんとやるからじっとしてろよ」
「ん、そこ泡ないから、タオルが少し痛い」
「あ、悪い痛かったのか。次から気をつけるよ」
「ん。お願い」
泡がめっちゃたつ石鹸で泡を大量に作っていき、それを手ですくうとシロの身体にぬりたくっていく。
「ん」
「痛くないかー?」
「ん。大丈夫」
首や脇などの汚れが溜まりやすいところをこすり、汚れを落していくとそのたびにくすぐったいのか小さく声を漏らすシロ。
大体洗い終わったかな? と思った頃次の来訪者がやってきた。
「な、なななななななにしてるんすか!」
「なにって……」
「洗ってもらってる」
「泡まみれっす!?」
「次はレンゲな」
「自分もっすか!?」
当然。
シロはシロで俺としても気持ちがいいのだが、レンゲ、そしてウェンディもこの俺が綺麗にしてくれるわ!
シロについた泡を流れ落すと、シロはふるふると身体をふって水気を切っていく。
そういうのは離れてやろうな。
「ほい次レンゲ」
「ほ、本当にやるっすか? 自分でできるっすよ?」
「レンゲお前最後に風呂に入ったの何時だ?」
「お風呂っすか? 水浴びじゃなくてお風呂だとー……あれ、どれくらい前だったか覚えてひゃわああああ」
そんなに前なのか。
これは湯船が汚れてしまう恐れが高いな。
問答無用で脇に手を入れて抱え、不可視の牢獄の上に座らせると一度かけ湯をしてやる。
「わ、わ、わ」
「じっとしてればすぐ終わる」
そういいながらめっちゃ泡を立てていく。
さっきのシロで学んだのだが、先に泡を大量にたてておいたほうが楽だ。
そしてこれまたシロで習ったとおり満遍なく泡をかけてから優しく背中側をこすっていく。
こするといってもあくまで女性の身体を傷つけないよう優しく、汚れだけを落すイメージだ。
「おおおおお……なんか変な感じっすね。オトコに背中を洗ってもらってるんすよね……」
「そうだぞ。嫌だったら言えよ?」
「いえいえいえいえ。嫌ではないんすけど、なんかむずがゆいというか、恥ずかしいというか……」
「ん。大丈夫。このあとはもっと恥ずかしい」
「何が待ってい!? ちょ、ちょっと何処に手を入れてるんすか! そこは別ああああああ! なんで尻尾さわるっすか!」
「そこに尻尾があるからかな」
「哲学っぽく言ってもダメっす! 砂狼族の尻尾はああああ!」
「レンゲの尻尾ってふわっふわだよなー。でもやっぱり少しごわってしてるのは許せん」
せっかくいい尻尾なのだからきちんとケアすべきだ。
「主、シロのは?」
「シロの尻尾も好きだぞー。つやつやでスベスベだからな! 毛質が最高だ!」
「んふー」
「はぁ……。あれなんすね。諦めた方がいいんすね。わかったっす……」
「その通りだ。好きに洗うから身を任せてろ。次は前な」
「了解っす。もう好きにしてくださいっす……」
「いいんだな?」
「あ、やっぱりほどほどでお願いするっす。その顔怖いっす!」
もう遅い。それでは早速いかせてもらおうか!
まずはその太ももから綺麗にしてくれるわ!
「あ、いきなりそこなんすか?」
「うわ、すごいな。ずっと気になってはいたんだが柔らかさと筋肉の固さが絶妙だ」
「そりゃ砂狼族は砂漠を駆けるっすから足は命っす。自慢の足っすよ」
「ああ、これは自慢できる。はぁ、はぁ」
「息が荒いっす! なんか怖いっすよ!?」
「大丈夫だ。何も問題はない。あ、ちょっとそのふとももで顔を挟んでもらえるか?」
「何も大丈夫な事がないっす! 変態が、変態がいるっすよ!」
「ちぃ、流れでいけると思ったのに」
「何処にいける流れがあったんすか!」
……。
…………。
………………。
ふう。
ああ、何で人類は争いあうのだろうか。
世の中の皆が手を取り合えばきっと素晴らしい世界になるとは思わないのだろうか。
世の中間違っている。
だがそれを声に出していうものはいないのがとても悲しい……。
「うううう……全部洗われたっす……。もうお嫁にいけないっす……」
「心配ない。主が貰ってくれる」
「変態な旦那様は嫌っすー……」
「いずれわかるときが来る」
「その日がとても怖いっす……」
「っさ! 続きをしようか!」
「手を出したくなるほどすがすがしい笑顔っすね!」
「あ、レンゲお前無駄毛があったから後で剃るぞ」
「ギャー! 乙女に何てこと言うんすか!!」
「シロはつるっつる。残念」
「何が残念なんすかー!!?」
それから、最後までレンゲも大人しくなっていて、もとい諦めた様子で無抵抗に身をゆだねていた。
最後に湯船からお湯をすくいかけてあげると、レンゲも気持ち良さそうに目を細めていた。
「さて、最後は」
「ご主人様。準備は出来ています」
振り返るとウェンディが既に泡まみれで待機していた。
んんんーエロイ。
大事な部分は既に泡で隠れているのだが、真っ白い泡の下に見える地肌がイイネ!
「大迫力っすね……」
「ごくり。これにはシロも言葉が出ない」
わかるわー。
初めてビーナスの誕生を見た人はこんな衝撃が訪れたのかな。
「さあご主人様。お好きにして下さって構いませんよ?」
「まじすか……じゃあここ座って」
「はい」
一挙手一投足がいちいち艶やかだ。
染み一つない背中に指を這わせ、ゆっくりとこすっていく。
「ん……」
もうね。何も言えないよね。
なんて言えばいいのかもわからない。
ごくりと生唾を飲んでしまう。
しっとりとしつつ艶やかな肌。
長く美しい髪の毛に石鹸の泡が当たらないように気をつけながら身体を洗っていく。
石鹸で髪を洗うとギシギシになるからな。
背中を洗い終わり、次は前なのだが……。
後ろからでも大迫力なのである。
「うおお……」
重い。そして質感がやばい。
腕全体にのしかかるすべすべの至宝が俺の全てを狂わせそうだ。
「うっわあ……見てるとドキドキするっすね」
「ん。エロ魔人」
そんな茶々を入れる二人の事なんて全く気にならないほど俺はこの身体を洗うことに熱中していた。
「ご主人様、いかがでしょうか?」
「最高です」
上目遣いで言われると、尚更扇情的で俺を刺激する。
あー……。
これ刺されるんじゃなかろうか。
知られたらいけない。
誰にも、この状況を、外に漏らすのはいけない。
「うふふ。ご主人様」
「主、ちゃんと洗う」
「そ、そうっすよ。忘れちゃだめっす」
「あの二人は気にしなくてもいいのですよ?」
「いや、そういうわけにもいかないだろ……」
なんとか理性を取り戻すと、俺は身体洗いを再開した。
当然それ以外でも俺を惑わすような存在が幾重にも現れるのだが、鋼の精神力でどうにかこの場では収めざるをえなかった。
ウェンディについた泡もお湯で流すと、湯船のお湯が結構減ってしまったのでウェンディに魔法で水を出してもらう。
若干温度が低くなってしまったが四人でそのまま入る事にした。
「んー……このくらいがいい」
「そうっすか? 自分としてはぬるすぎて寒いっすけど」
「まあじきに温まるからさ」
「熱いのはいやー」
「んーじゃあこうするか」
湯船の半分に不可視の牢獄を発動させて湯船を二分する。
火の魔石側は熱くなり、反対側はぬるいままなのでシロもゆっくりできるだろう。
「おー。でもこれじゃあ主と一緒に入れない」
「なら俺は真ん中にいるから」
解除して再度かけなおし、真ん中に移動しつつ再度不可視の牢獄をかけ直して俺のいる部分は空けておく。
こうすればシロも一緒に入れるだろう。
そして俺が移動するとウェンディも一緒に俺の横から離れないように移動してくる。
その反対側をシロが陣取り、俺にもたれかかってゆっくりし始めた。
「これで二人っきりにはさせない」
「あらあら。でも寝室では今日も私が一緒に寝ますからね」
「それは無理。今日は主は私と寝る。ね」
「あーそうだな。約束だもんな」
「ずるいです! 私も一緒に寝ます!」
「ずるくない。ウェンディは昨日一緒に寝た。だから今日は私」
「三人、三人でならいいじゃないですか」
「ダメ。ウェンディと一緒だとベッドが壊れる」
「壊れません! ご主人様? 私はダメですか?」
「ダメ。今日は私と主二人きり」
「あー……二人ともゆっくりお湯を堪能しようぜ」
はぁ……いいお湯だなあ。
「どうしてそんなに慕われてるんすかね」
スイーっと湯船に浮かんでいるレンゲが訝しげに聞いてくる。
そんな事を言われても、さあ、としかいいようがないのだがな。
「そういえばどうしてレンゲはこちらにこないのですか?」
「いや、両サイド埋まってるっすし」
「一番いいところを空けてあげてる」
「え……」
じーっと見つめられるのは俺の中央部。
「あー……あははは。自分にはまだ早いか」
「レンゲこっち来い」
「あ、はい」
一瞬戸惑いながらもレンゲが浮いたままスーッとこちらに寄ってきた。
真剣なまなざしの二人から見つめられればそうならざるを得ないか。
「じゃあえっと、失礼します」
レンゲが俺の胸板に手を添えて恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。
俺に見えているのは綺麗な背中と、ぬれて細くなった尻尾。
そして横を見れば抱きついて目を閉じているウェンディと。
少し熱そうながら満足そうなシロ。
「ううう……恥ずかしいっす」
「まあでも全部もう見てるしな」
「そ、そういうこと言うのはダメだと思うっす!」
「レンゲ、うるさいですよ」
「ん。静かに入る」
「さっきまで言い争ってたじゃないっすか!」
ぱちゃぱちゃと揺れるお湯。
それに伴って揺れる尻尾。
ああ、今日のお風呂も最高だったな。
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