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3-12 マイホームマイライフ 騒動終結

皆に何もなかったと、消えた痣の痕を見せると、一番驚いていたのは痣をつけた張本人であるレンゲであった。

曰く、


「どういうことっすか!? 少なくとも30日は痕がついたままっすよ!? 回復ポーション(大)を飲んでもこんなに早く消えるわけないっす! まさか貴重な霊薬をこんな事に使ったんすか!?」


とのこと。

霊薬なんて存在もあるんだなとか、やっぱり回復ポーション(大)じゃ駄目だったんだなーとか考えていた。


「まあなんでもいいだろ。最初から痣なんて無かった。これが事実だ。これでなんとか無事になるっだるお!?」


があふ!

傷口にダイレクトダイビングしてくるとち狂ったお馬鹿は誰だ……。


「がうー……」


泣くのか睨むのかどっちかはっきりしなさいな。


「絶対無理した……」

「してないしてない。何もしてない」

「焦げ臭い……。人の肉が焼けた匂いがする」


……流石犬。

嗅覚が本当に犬並なんだな。


「気のせいだ」

「ウェンディの顔が蕩けてるもん。シロの顔が暗いもん絶対何かあったもん。ううー」


うぎゃああああああ。

だからそこは傷があった場所だっての。

ぐって掴むな!ぐって!


「あー、まあ気にするなっよ、うぐ!」


逆サイド! 誰だよ!


「……焦げ臭いっす」

「うん。絶対無茶したんだよぉ……」

「人の肉の焼けた匂いっすよね」

「う゛ん」


おおおう。レンゲさん?

さっきから貴方、男が嫌いっていう設定無視酷すぎませんか?

そういえばレンゲって結構背が小さいのな。

ソルテと対して変わらないよな。

でもまあ各部分は圧勝なんだけど。


「痛い!」

「今変な事考えだー」

「考えてねえよ! ってかお前わかって傷口掴んだろ」

「やっぱり何かしたんだあああうわああああん」

「めんどくせえ! こいつめんどくせえ!」

「うわああああああああん」

「お前もか! なんだよどうしたんだよ」


なんでレンゲまで抱きついて泣いてんだよもう、訳わかんないよ。


「あのーせっかく盛り上がっているところ申し訳ございませんが、これでゼロという訳にはいかないんですよね……」

「そこはほら、ヤーシス頑張れってことで」

「いえいえ、私も店主に違約金をお支払いしなければなりませんし、店主が貴方に払うはずだった慰謝料も肩代わりしているんですよ……。その為申し訳ないんですがレンゲ殿には犯罪奴隷になっていただきませんと」

「ええー……」


ひっくひっくと喉を鳴らす二人の頭を撫でながら俺のあの頑張りはなんだったのかと物思いにふける。


「考慮はしておりますよ。なので慰謝料の代わりとしてお客様にお安くご購入いただくといった形を取らせていただきます。そうすればお客様が暴行を行った奴隷を買いつけ、好き勝手しているという体面は整えられますので」

「あー……酷いもんだな」

「他の方に買われて皆様が無理矢理なことをされても構わないのでしたらどうぞお好きに」


お好きにとは言いつつもあの顔は俺が買うってわかってんだろうな。

まあヤーシスとしても最大限の譲歩がこれか。

俺の馬鹿げた嘘に付き合ってもらってるわけだし。

でもレンゲに聞いてみないとわかんないしな。


「だとさ。レンゲどうする?」

「なるっすうう……。恩返しするっすうううう」

「あーはいはい。涙拭けほら」


差し出したハンカチ(元の世界産)を無視して俺の洋服でぐしゃぐしゃの顔を拭うな。

ぎゃーウェンディに選んでもらったお気に入りの一枚が……。


「わだぢもなるうううう」

「いやお前は別にいいだろ……。手紙もないんだし」

「やぁあだあああああ」

「嫌だじゃねえよ……。意味がわからん」

「「うわあああああん」」

「子供か! あーもういい加減離れろ馬鹿犬二人!」

「「犬じゃないいいい!」」


あーもーまじでめんどくせえ……。

おいそこでクスクス笑ってるギルドマスター、ちょっと引き剥がしてくれよ。

じゃないともうポーション卸しに来ないぞ。ねえ、ちょっと。


「なあウェンディ助けてくれ」

「知りません。ご主人様が招いた結果です」

「シロ」

「シロは今反省中」

「アイナ!」

「ん。いいのではないか? レンゲが主君の奴隷になる以上私達も同じ道を辿らねばならんしな」

「ギルドマスター!!」

「まあ若旦那なら問題ないだろ」

「冒険者諸君!!!」

「爆発しろ!」


え、なに?

なんなのこのアウェーの洗礼。

欲しいか欲しくないかで言われればそりゃ欲しいよ?

でもさ、こういう俺の周りに人が増えるとしたらもっと後じゃないの?

もっと後半っていうか、お金にも余裕ができて家ももっと大きくなってから増えていく的なね。

だってもうこれ1PTじゃん。

前衛多めだけどダンジョンとかいけちゃうよ?

俺まだこの世界に来てそこまで経ってないのに奴隷が5人だよ?

このペースでいったら来年には五十人くらいになっちゃうよ?


「ちょっと待て……。犯罪奴隷って俺の家に住むんだよな? あー残念だなあ部屋が足りないや」

「ご安心を。二階の大き目の部屋を二つに改装しても十分住めますから」

「そーなんですけどね!」

「ご主人はいやっすか?」

「がううううううう」


あーもう。

ああああもうわかったよ!

頼むから上目遣いで涙目をやめてくれ。

多分これに強い男なんてドSの変態鬼畜野郎以外いないだろ!


「はぁ……。わかったよ」

「それではご契約ですね。まあご安心を犯罪奴隷ですから料金は格安で三人で1000万ノールですので」

「はぁ……分割払いで頼む。今は金が足りない」

「かしこまりました。でしたらこれから工房の方に参りましょうか」

「今作らせるのかよ! 俺もう今日は超疲れてるから風呂に入って寝たいんですけど!」

「ああ、では他に買い手が現れてしまうかもしれませんね」

「わかったよ! 作るよ! 作るから道具屋で材料貰ってきてください!」

「かしこまりました。ではうちの者を使いに行かせるとしましょう」


作ればいんだろ作れば!


「アイナ、ソルテ、鉱石は採ってきてるか?」

「あるぞ。ちゃんと良質な物を沢山採ってきてある」

「……本来ならその分で奴隷解放だったのにな」

「いやいいさ。主君のもとならば今までどおりと変わらない生活ができそうだしな」

「まあそうだけどさ。多分引き続き冒険に出て材料なんかを集めてもらうと思う」

「ご主人んんん! 自分も頑張るっす! 頑張るっすからああああ!」

「あーはいはい。レンゲにも頑張ってもらうから」

「ふとももも好きにしていいっすからあああああ」

「……おう」

「ご主人様?」

「っひ。なんでもないです!」


なんというハニートラップ。

いやもうあのむしゃぶりつきたくなるようなふとももを好きにしていいって言われたらさ。

そりゃしょうがないよ。


「旦那旦那」

「ん?」

「爆発しろ!」

「いちいち呼び寄せてから言うなよ……」

「あー! 俺らのマドンナがあああ! 憧れがああああ!」

「じゃあお前らで何とかしろよ!」

「いいのか? そうなると旦那が死……」

「その時はうちの奴隷全員で押しつぶしてやる。レインリヒ様に助けを求めてやる!」

「他力本願が似合う旦那だな! 自分は何もしないのかよ」

「出来るわけねえだろうが! ああなるほどな! 帰ったらエッグイ薬を開発してやる! お前ら全員一生不能にしてやるからな!」

「こいつなんて恐ろしい薬を! やはりレインリヒの弟子の名は本当だったのか! 野郎共奴を止めろ!」

「はっはっはっは! シロ俺を守れ! こいつらは全員不能にしてやると俺が決めた今決めた!」


もうやけくそだ。

こうなっては恨まれても仕方ないとは思う。

俺も冒険者だったら美人三人を奴隷にしたなんて奴を男として羨ましすぎて許せない。

だから俺は自己防衛用のお薬を開発しないといけない。

不能なんて男にとっては怖すぎる薬だからな。

俺を殺すつもりなら俺はお前達から快楽と子孫を奪おう。

死なば諸共。全員一生不能にしてやるからなああああああ!


「奴を逃がすな!」

「いやでもこの小さいのが強すぎて!」

「アイナ、ソルテ、レンゲも加勢して俺を逃がせ! ウェンディ行くぞ!」

「はい、ご主人様」

「はいじゃないって! 俺らの股間がピンチだぞお前ら! あの顔はまじでやる!」

「どいてくれお三方! 俺らが、俺らの俺らがピンチなんだ!」

「無理っす! ご主人のご命令っすから!」

「うん。駄目。もう私達主様のものだから」

「はは、主様か。ソルテも主君に正直になったものだな」

「別になってないわよ! 主様はもう主様なんだから仕方ないでしょ!」

「さっきまであんなに泣き喚いていたくせにっす」

「あんたもでしょ! 大体あんたのせいで私たちまで奴隷のままなんだからね」

「じゃあPT解散すればいいだけっすよ! 別に自分だけご主人の寵愛を受けても構わないっすもん!」

「はあああ!? あんた男嫌いはどうしたのよ!」

「ご主人なら問題ないっす! ソルテこそ、そんな態度だとご主人に嫌われるっすよ?」

「変わるもん! これからはちゃんと好きになってもらうようになるもん!」

「「「「「「野郎やっぱぶっ殺す!!」」」」」」


はっはっはっは!

もう遅い!

既に俺は彼方の向こうだ!


「暫く冒険者ギルドに行けないな」

「ふふ。ではご自宅でまったりしましょうか」

「だな。落ち着いたら三人の歓迎会をしようか」

「はい。ご主人様のお手伝いをしますね」

「ああ頼む。まだまだ忙しい限りだな、はあ」

「自業自得です。ご主人様はもう少し考えてから行動するべきです」

「耳が痛いよ。でもまあ悪くはないだろ?」

「結果だけ見ればお三方も助かりましたけど、もっとやり方はあったと思います」

「そうかもな。まあ結果だけ見ようぜ!」


終わりよければ全てよしだ。

冒険者達からのヘイトは上がっているかもしれないが、一部始終を見ていたんだから手心くらいはあるだろう。

奴隷が五人に増えた以上今まで以上にお金を稼がなければならないな……。

そろそろお小遣いスキルがレベル上がってもいい頃なんだけどな。

今は10万ノールだから、できれば50万ノールにはなってほしいところだ。


「ご主人様……」

「なんだウェンディ!」

「人数が増えても、変わらぬご寵愛をいただけますか?」

「当然! とりあえず帰ったら二人で錬金室に篭るぞ」

「っはい! ご主人様!」

「いやはや、私もいるんですけどねえ」


ヤーシスいたの!?

まさか走って追いついてくるとか。

しかも息切れ一つしてないし、気配も感じなかったんですけど!


「ああ、別に私はリビングでお待ちしますので構いませんよ。ええ。他の方が戻ってきても錬金室には近づかないようにさせますので。二時間くらいでよろしいですか?」

「変な気を使わなくていいから! しないから!」

「え、しないのですか?」

「ウェンディも恥ずかしがりなさい!」

「恥ずかしがってたら負けてしまいますから!」


何にだよ!

ウェンディは負けないよ大丈夫だよ!


「ははは。仲睦まじくて大変よろしいですね」

「はい! 私幸せです」

「俺も幸せだよ!」


そろそろ家が見えてくる頃だ。

後ろは4人が守ってくれているから問題ないのだろうが、未だに走り続けている。

今日はいい風呂に入れそうだよ全く。

帰ったら早速お風呂の準備だけは済ませておこうと固く誓った。

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