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3-9 マイホームマイライフ 原因は……

突然現れたふわふわの尻尾が特徴のけもみみ娘。

なんていうか、露出が真夏のビーチかってくらい多いな。

確かにくびれや胸やふとももを強調するにはへそ出しチューブトップもショートパンツもいい服装だ。

それに健康的な日焼けも俺的に高ポイントである。

あとあれね。ショートパンツの一番上のボタンが外れているところがいいよね!


「ご主人様? 何をみていらっしゃるんですか?」

「ナニモミテマセンヨ……」


冷たい声だった!

笑顔の裏に般若がいたよ!

いやでも、ほら。見ますって。

あの格好だもの。

健康的なふとももとか見てしまいますって。


「見るだけならただっすよ? 存分に見て行ってくださいっす!」

「ですよね!」

「色々な油があるっすからねー。良かったら1000ノールで説明もするっすよー!」


あ、そっちっすか。

語尾がうつっちまったよ。


「あら、貴方も奴隷なのですね」

「そうっすよー! だから説明の仕事は取らないでほしいっす」

「かしこまりました。それではご主人様。まずこの子に1000ノール銅貨1枚をお支払いくださいませ」

「うん? 悪いけど、理解が追いついてないんだが説明してくれるか?」


説明だけにお金を払うのだろうか?

奴隷が店先に立っていると、説明は別料金となるのだろうか?


「奴隷がお店に雇われている場合は、説明のお仕事を他の奴隷が取ってはいけないんです。奴隷はお店の売り上げに貢献して、その1割を返済に充てます。お金は最優先で返済に充てられるので、説明のお仕事でお昼代などを稼がなければいけないのです」

「ん? いや主人が食事を保障しているんだろ?」

「いえ、多分ですがお会いしたことは無いのですけどヤーシス様のお店からの派遣だと思われます。商店への派遣依頼ですと、説明などで手に入れたお金は自分の物に出来る代わりに食事の世話をしなくてもいいのです」


自分の好きに出来るお金を手に入れるか、お昼を保障してもらえるか選べるのか。

それでこの子は自由に出来るお金が手に入るほうを選んだってことか。


「おお、元ヤーシス様の奴隷っすかー! 自分は最近ちょっとトチリまして、反則金を払えずに奴隷になっちゃったんすよー」


なるほど。だからウェンディとも知り合いじゃないのか。


「反則金ってことは借金奴隷の方か? 犯罪ではないんだな」

「そりゃ世の中軽微な犯罪もあるっすからね! 全部が全部犯罪奴隷にされるわけじゃないんすよ!」

「なるほどね。分かった、じゃあ説明を頼むな」

「はいー! それでは確かに1000ノール戴きっすね!」


差し出した1000ノール銅貨を胸の谷間から取り出した袋に入れると、再度もとの位置に戻す。

その行為だけで1000ノールくらいならいくらでも、あすいません。見てませんウェンディさん!


「それじゃーさっそく説明していくっすよ! ところで、食用っすか? それともメンテナンス用っすか?」

「食用だな」

「それじゃあオススメはこれっすね! 値段は張りますが、当店自慢のオリブルの油っす!」

「まあ! オリブルの油を取り扱っていられるのですか。あれは抽出方法が難しいとお聞ききしたのですが」

「そこは親方の腕っすよ! 道具を使わずに圧力をかけなくてはいけないっすからね! 混じり気無しっすから鑑定してもらっても構わないっすよー!」

「じゃあお言葉に甘えて」


『オリブルの油 オリブルの木に生る実の種を、綺麗に洗った素手で圧して絞らないと抽出できない。

        道具に触れると、味が悪くとても食べられる物にはならない。

        抽出後は普通に道具に触れても問題ない。状態:良』


「ほう……。凄いな。種を素手で絞るとか……親方は熊かなんかか?」

「そうっすよー! 熊人族の親方にかかれば100個でも200個でも余裕っす! 自分もそれくらいできるようになりたいっす」


ああ、なるほど。親方は熊人族なのね。

熊って握力強いんだっけ?

道具に触れちゃいけないってことは、これまな板に押し付けるとかも出来ないんだろ?

あとお姉ちゃん、そんな所を目指しちゃ駄目だと思うわ。


「あ、ちゃんと手を清潔にしてからやってるから大丈夫っすよ! 抜け毛の心配もないっす!」

「へえ。じゃあこれを貰おうか」

「はいはーい。小瓶で2万ノール、大瓶で10万ノールっす」


結構するな。


「それじゃあ大瓶を5つで。50万ノールだな」

「え……。そんなにいるんすか?」

「んーまあ使う機会は多そうだしな」


揚げ物とか作るならこれくらいの量は欲しいところだ。

それにもしかしたら錬金の再構築で不純物と分ける事ができれば再利用も可能かもしれないしね。


「おおおおお……。これだけで5万ノール自分に入るっす……。今日のノルマ余裕で終わりっすよ……」

「ご主人様お金の使い方が荒いです……」

「んー。まあ出不精ってのもあるんだよね。いちいち買いに来るのも面倒だしさ。まあお金はまた稼げばいいし美味いもの食べたいじゃん?」

「はぁ……。これからは厳しくいかないといつか痛い目を見てしまいそうです」


いやいや。

食って大切よ?

食事回数は上限があるんだから一食一食美味しいものを食べたいじゃないか。


「凄いご主人なんすね。羨ましいっす」

「勿論自慢のご主人様なのですが……」

「貴方はお妾になられるんすか?」

「お妾だなんて……。そんな、恐れ多いです。でもなれたらいいなーなんて、なんて」

「シロはなる。主の子を孕んで主の妾になる」

「おおー……。お二人とも房事有りなんすね。お綺麗っすのに……」

「主はエッチ好きだから」

「まだシロは出来ませんけどね」

「おー……。自分も買ってもらえないっすかねえ」

「今のところは増やす予定はないんだ。すまんな」

「ってことはいずれならあるんすか?」

「えっと、なんで?」


この子は俺に買ってほしいのだろうか?


「一般的な奴隷が願う主人像というのがありまして、優しいこと、お金持ちなこと、それと既に奴隷がいてその奴隷の状態を見て判断するのです」

「ん。主は最高。ご飯もたくさん。それに優しい」

「いいっすねえ! どうです? やっぱり自分も買ってくれないっすか? いっぱいサービスするっすよー!」


そういうとけもふわ少女はちらりと谷間を見せてくる。

それを当然のようにウェンディが視界を封じるまで、一秒かかっていない。


「それについては結構です! ご主人様には私がいれば十分ですから!」

「それに主には他にも二人奴隷がいる。これ以上は多い」

「えーでも、私のふとももとかすっごい見てたっすよー?」

「……。ご主人様?」


っお。あの調味料面白い色してるなー……。

怖くてお顔が見れないよ!


「なんで、そんなに買って欲しがってるんだ?」

「いやーちょっと理由があって、ご主人なら早めに解放してくれそうっすし、あ、でも解放してもらった後でも房事くらいならしてもいいっすよ」

「理由?」

「そうっす。私一応冒険者なんすけど、どうやらPTメンバーがクソ野郎に半ば強制的に奴隷にされたみたいなんすよ。だからそいつをぶっ殺さねえと気がすまないんす!」

「まあ、そんな酷い方がいらっしゃるんですか? でも、不当な奴隷化は極刑のはずですよ?」

「それが、不当ではないらしいんす。手紙で見ただけなんで詳しくはわからないんすけどね」


……。


「頭がいい? でもヤーシスが関わってるならヤーシスは相手を知ってるはず」

「そーなんすけどね! ヤーシス様に相手の事を聞いたら笑って問題ありませんよばかりで、守秘義務とか言ってなんも教えてくれないんすよ!」


…………。


「そのPTメンバーの方は女性なのですか?」

「そうっす! 一人は大丈夫でしたけど、もう一人は房事もありにされたんすよ!? すっごい綺麗なんで、絶対なんか弱みとか握られてるんすよ! 外道っす!」

「ダーダリルみたい」

「私もあの人を思い浮かべました」

「知ってるんすか!?」


…………………。


「でもダーダリルはありえない」

「そうですね。ありえません」

「なんでっすか? わかんないんで説明がほしいっす!」


あのさ。

これ俺だよね。

どう考えてもPTメンバーってアイナとソルテだろうし、ヤーシスが笑ってたって言うし。


「へえ。そんなことがあったんすか。ご主人は意外と男気溢れてるんすね」

「ええ。あの時は凄くかっこよかったのです。大丈夫って微笑んでくれて、勝負を買って出たときなんて思い出すだけでもキュンキュンします!」

「シロは主にご飯貰ったから。主のご飯美味しくて温かかった。それに凄く優しい」

「いいご主人にめぐり合えたんすねえ」


なにやら今は好感を持ってくれているみたいだが、真実を知ったらどうなるのだろうか。

いや待て、まだ確証を持つには早い気がする。


「あのさ、お前って男嫌いか?」

「ん? 何で知ってるっすか?」

「そうか。いや、待て。俺は?」

「んーご主人も男っすからね。ただ奴隷として房事はするんで、その分早く解放してくれると助かるっす」

「いや嫌いな男に抱かれるって、それでいいのか?」

「そりゃいやっすけど、ご主人は気持ちいい。自分は早く解放されるっすから、WIN-WINの関係っすよ。それより奴をぶっ殺さねえと気がすまないんす」


物騒だこの子……。

目的の為なら手段を選ばないどころか、嫌いな男にも抱かれるとか……。

いやもうどうしようか。

油も買ったし、調味料は別のところで買ってとっととエスケープするべきか。

それともちゃんと誤解を解くべきか……。


んー……。あー……。

どうしよ、まじで。


「それでどうっすか? ご主人もヤーシス様のところで二人を買ったんなら顔見知りなんすよね? だったら手っ取り早く私を買っちまわないっすか?」

「あー……」


黙っとくか?

でも言ったほうがいいよな……。


「なあ一ついいか? レンゲ」

「なんす……。なんで私の名前知ってるんすか?」

「多分だがお前アイ……」


ドゴォッ!


「ご主人様!」

「っちィ! 少ししかはじけなかった! 主、大丈夫!?」

「い」


痛ええええええええ!!

わき腹ある!? 俺のわき腹残ってる!!?

速すぎて何も見えなかった!

おうえ、シロが一応防いでくれたのか。あぶねえ……。


「やるっすねちっちゃいの。でも悪いっすけどそいつは殺すっす。じゃないとうちのメンバーが解放されねえんで」

「何を言ってるかわからない。突然暴行とか頭がおかしい」

「シロ。貴方は主を守りなさい。私も頭にきています」

「へえ、ただの綺麗な人だと思ってたっすけど結構やりそうなんすね」

「あー……いってえ……」


よく死ななかったな。

俺HPめっちゃ低いんだけど。

シロ。生きて帰れたら今日だけはお肉パーティにしてあげるからな……。

とりあえず回復ポーション(中)を取り出して呷るも、痛みは引いていかない。


「二人には用はないんで、退いてもらえないっすか? 奴隷でも何もしないくらいならできるっすよね? 邪魔するんならまとめて殺すっすよ?」

「こっちのセリフ。今なら半分で済ます。来るなら絶対に殺す」

「へえ、いい度胸っす」


はぁ……。

俺の平穏……。

それにしても若い娘が殺すだのなんだの物騒だねえ……。


「はぁ……」

「主! 大丈夫?」

「ご主人様!」

「はぁ……」

「ご主人様?」

「あのさ、周り見ようか」


俺達の周りにはいつの間にか人が集まり取り囲んでいる。

そしてレンゲの後ろには腕を組んだ大熊男の姿。


「はぁ……」

「はぁ……。契約違反だな。客に手を上げやがって……」

「お、親かンギャアアアアアアアアア!!!」


レンゲが頭を押さえて地面を転げ回る。


「痛い痛い痛い痛いいいい!」

「当たり前だ馬鹿……。ヤーシスのところに行ってくるからそこで反省してろ」

「そんな、ずっと痛いままっすか!」

「奴隷なんだから当然だろうが。悪いけど旦那も待っててもらえるか」

「ああ。お互い災難だったな」

「全くだ……。旦那みたいな上客を逃がすなんざ損失がでかすぎるぜ」

「はは、まあなんだ。次があるさ」


悪いが今は流石にここでもう一度買い物をしようとは思えないしな。

それよりもこっちだ。


「シロ。助けてくれたのはありがとう。後でお肉パーティをしてやる」

「やった! 主を守るのは当然」

「ウェンディも。俺の為に怒ってくれてありがとう」

「いえ、当然です。今でも、そのまだ煮えきらないのですが……」


二人をぎゅっと抱きしめる。

はぁ。幸せものだな。

こんなにも想ってもらえる相手がいるだけで幸せだよ。


「だけど……。あんまり危ないことはしないでくれ……」

「ですがあれはご主人様を守る為ですので!」

「ん。主は絶対に守る。敵は殺す」

「敵ならな。あれ間違いなくアイナとソルテのパーティメンバーだろ」

「……あっ!」


いや気がつかなかったのかシロ。

冒険者で、二人の内一人は房事可、男嫌いで、更には不正かもしれないのにヤーシスが笑って対処してたんだぞ。


「知っていましたよ? でもご主人様に手を出した以上、たとえ知り合いの友人でも敵は敵です」

「シ、シロも気がついてた。ウェンディと一緒」

「いやシロ。お前あっ! って言ってたじゃないか」

「気づいてたの! あっ! は違う」

「はいーはい」

「本当なの! 嘘じゃない!」

「あのーいちち……。助けてくれないっすかー……」

「いや、無理だろ」

「そんなー……。頭が割れそうっす……」

「自業自得だろ。流石に同情もできんぞ」


まだ地面に横たわり頭を押さえるレンゲ。

そういえば一つだけ気になった事があったんだよな。


「ううー……勢いよく頭をぶつけたから回復ポーションが欲しいっすー……」

「あげてもいいけど、一つ聞いていいか?」

「なんすかー? くれるんなら答えてあげなくもないっす」

「あ、じゃあいいや」

「嘘っす! ナンデモ答えるっす! あ、処女っすよクソ野郎」


んなことはどうでもいいんだよ……。


「お前の名前さ、レンゲだよな?」

「そっすよ。生まれた時からずっとレンゲっす」


んー……。

微妙だな。

レンゲって日本名っぽいから関係性があるのかと思ったんだがたまたまかな。


「うー頭がー。もういいっすか? ポーションくれるっすか?」

「ああ、悪かったな。先に言っておくとアイナとソルテのことは誤解だぞ。っていうかあと少しで解放だ」


そういって回復ポーション(中)をくれてやる。

傷じゃないので利くかどうかわからないが、それでも少し顔が楽になっていった。


「あー……。そうっぽいっすね……。冷静に考えればお二人にそれだけ慕われてるっすし、奴隷に対して傲慢な態度も取らないから今なら変だなと思うっす」

「手紙だっけ? ソルテからだろ?」

「そうっす。ソルテから変態に無理矢理奴隷にされたって言われたんで急いで帰ってきたんすよ。途中の関所を無理矢理通ったら奴隷にされたんすけど、理由を話したらここの商館に案内されたんすよ」


はぁ、やっぱりあいつか。


「まあそれも成り行きっていうか、そもそもの原因も俺に無いしな……」

「どーいうことなのかちゃんと教えてほしいっす……」

「ええ、ですがその前にレンゲさん。貴方には残念なお知らせがあります」

「ヤーシスか。早かったな」

「店主から内容をお聞きしまして、お客様がお相手とわかり慌ててしまいましたよ。こちらの不手際です。本当に申し訳ございませんでした」

「旦那。申し訳ない」


ヤーシスは申し訳なさそうに頭を下げている。

それにあわせて熊店主も頭を下げていた。


「いや、まあ一応誤解だってわかったみたいだしな」

「はぁ……それだけで済まない状態なのですよ」

「なんすかー……私どうなるんすかー……」

「うちで保障してやることもできるんだがな、ヤーシスの方から賠償を買って出てきてくれたから後は任せる」

「ええ勿論。店主にもご迷惑をおかけしました。こちらで違約金もお支払い致しますので」

「ああ。元気がよくて接客も上手い子だったんだがな。次は普通の子で頼む。旦那、本当にすまなかった。出来ればまた来てくれ」


そう言って店主は店の奥へと消えていく。

なんだか店主の後姿が悲哀に満ちていてこっちとしてもやるせない。

思えば店主も被害者なんだよな。

これだけの人に見られてるわけだし……。

調味料を買いに来る時はここに買いにこようと思う。


「レンゲさん、私問題ないといいましたよね? 本当に残念です」

「うええ……頭痛いっす……。私どうなるんすかー?」


ヤーシスは顔つきが少し怖いくらい真剣になっている。


「しかるべき措置をさせていただきます。っというか貴方一人の問題でもないのですよ……」

「あー……俺としては穏便に済ませたいんだが……」


一応アイナとソルテの知り合いだし、できれば刑罰なんかを与える必要はないんじゃなかろうか。


「そうもいかないのですよ……。一度冒険者ギルドのほうに行きますのでついてきてください」


そういうとヤーシスは先を歩いていく。

俺はその隣を歩き、レンゲはシロとウェンディに挟まれて腕を捕まれ、まるで連行される宇宙人の図であった。

だがまだ痛みが続いているのか、頭はあがらずふらふらとした足取りを補助されながら歩いていた。


「申し訳ございませんお客様。お客様には少し面倒になるかもしれません」

「はぁ……。俺の平穏短すぎねえかな……」

「心中お察しいたします」

「そのわりに笑ってるじゃねえか」

「いえ、お客様はつくづく女性と縁があるのだなあと思いまして」


それは俺のせいじゃないよね……。

はぁ。

冒険者ギルドねえ……どうなることやら。

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