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3-8 マイホームマイライフ 三人でお買い物

お昼は俺の元の世界の料理を再現できないか試してみることにした。

アイナとソルテが帰ってきたら食べさせる約束なので、先に何が作れるか考えてみることに。

それとシロが野菜を美味しく食べられるように工夫しないといけないので、それも考えようと思う。


っということでやってまいりましたのは中央広場から北に行った商店街。

中央広場の付近には出来上がった料理を食べる屋台があり、そこから北に入った大通りは商店が立ち並ぶ市場のような場所であった。

あるねあるね。果物、野菜、魚に、当然お肉。

あとはなんかの粉が袋売りされている。


「さあさあいらっしゃい! 採れたて果実のウムルの実が一籠1400ノールだよ!」

「奥さんいい肉入ってるよー。 キングターキー、ピグル、ブラックモームの美味しいところが揃ってるよー!」

「さあ! 朝取り一番鮮度抜群のキャタピラスだ! 頭もまだあるよー!」


おおおう……。

あの店は駄目だ。あの店だけは見ないように心がけよう。


「そうだ先にウェンディとシロに言っておくが、俺の家でキャタピラスを食べることはないから覚えておいてくれ」

「美味しいって聞くよ?」

「美味しかろうが世界一だろうが虫なら全部駄目だ。絶対無理だ。自分で買って食べるのはいいが、食べたら暫く近くに寄らないでくれ……」


ごめんだけど残り虫汁が、残り虫汁がついてる気がして無理だ。


「ご主人様は虫が苦手なのですか?」

「苦手っていうか触るのも無理。見るのも無理……」

「無理、ですか。わかりました。私も食べません」

「シロも。食べてみたいけど、主に近づけないのは嫌」


ありがとう。

理解してくれて本当に嬉しいよ。

じゃあこれからも俺らの食卓には虫NGってことで。


「んじゃ早速色々見てみようか。二人とも解説よろしく」

「はい。お任せください」

「味なら任せて」


勿論せっかくなので鑑定も使うが、生の声も聞きたいのである。

早速西地区拠りの商店から順に見ていく。


「さあさあそこの別嬪な奥さんを連れたご家族さん! 見てってくれよ! サービスしとくぜ!!」

「奥さん……私は奴隷ですのに、えへへ」

「それってシロは子ども扱い?」


シロ、流石に俺とお前が夫婦でウェンディが子供って訳にはいかないと思うんだ。


「おや、二人とも奴隷なのかい? どっちにせよ羨ましいぜ旦那! そんな幸せを俺にも分けてくれってことで何か買っていかないか?」

「あはは、見てもいいか?」

「勿論だ旦那! 今日はいいのが入ってるぜ!」


元気のいいおっちゃんだ。

売っているものはちゃんと動物の肉類だ。


「へえ。霜降りが凄いな」

「そりゃもう! 絶品だぜ! なんて言っても脂が甘い! ブラックモームは革だけじゃないんだぜ!」

「へえ。部位は何があるんだ?」

「なんだってあるぜー! 一匹分丸々あるからな! 欲しい部位を提供できるぜ!」


そいつは凄い。

ところでこっちでもカルビとかロースで通じるんだろうか?


「カルビ! カルビ!」


あ、通じるのね。便利ですこと。


「カルビは脂が多いので、ロースやフィレ、ランプなんかも欲しいですね。あ、貴方様」


貴方様か……。なんだか呼び方一つ変わるだけで気持ちも変わってくるもんだな。

でも言った本人は凄く恥ずかしそうだ。

ぽっと頬が熱くなったのか、顔を両手で伏せてるのは可愛いんだけどね。


「そうだな。あとはテールも欲しい。バラなんかも頼めるか?」

「勿論だとも! テールは最後まで売れ残るんだが、アレは煮込むと最高なんだぜ!」

「いいねえ。牛テール煮込み。それだとワインも買わないとだな」

「あるぜえ! 呑んでよし、煮込んでよしの相性ぴったりの奴が!」

「お、商売上手だな。あとはタンはあるか?」

「「「え……」」」


ん?

おいどうした店主。

さっきまでのノリと勢いはどうした。


「主、牛の舌食べるの?」

「流石にそれは……」

「牛とキスだぜ? 流石にきついわな……」

「ええー!? お前ら虫を食うのはいいくせに牛の舌は駄目なのかよ!」


嘘だろ?

俺虫食うくらいなら生きてる牛とキスした方がずっとマシだぜ?


「主、美味しいの?」

「そりゃあ俺の国では人気な肉の一つだぞ」


最初に頼む人多いし。

でもアレって歯ごたえもあるしお腹に溜まりやすいから食べ放題だとあんまり入らなくなるんだよな。


「でも、牛のベロですよ? その、ちょっと気持ちが……」

「ウェンディもか……」

「ま、まあ引き取ってくれるってんなら売るぜ?」

「ああ引き取るよ! いいさ。俺だけで食べるから」


いいもんいいもーん。

一人でつまみにして食べるもん。


「それで何を買ってってくれるんだい?」

「カルビ、ロース、ランプ、バラとサーロイン、フィレとテールを適当に1キロくらいずつかな。牛タンはある程度薄くきってくれ。後はさっき言ってた赤ワインを頼む」

「おいおいこっちは嬉しいが入るのか?」

「ああ、これに頼む」


魔法の袋に食材は入れてしまおう。

匂いとかうつらない、よな?


「へえ。魔法の袋かい。こりゃ思った以上のお大尽様だったな。全部で11万4000ノール。おまけしてだぜ?」

「ああ、ちょっと待っててくれ」


そういえばお金も魔法の袋の中だった。

ヤーシスにバイブレータを売ったばかりとはいえ結構な出費だな。

まあでもアクセサリも売れてるしそこまででもないか。

……金銭感覚狂ってないよね?

お肉沢山だし。うん。コンナモンダヨネ。


「毎度あり! またきてくれよ旦那!」

「ああ、虫を取り扱ってないみたいだし贔屓にさせてもらうよ」


動物肉専門店! って感じだからな。

牛肉と一緒に虫が並んでたら俺は無理だぞ。

過剰反応かもしれないが、無理な物は無理なのだ。


「おっ肉ー! 肉肉お肉ー」

「こらシロ。野菜も食べなければいけませんよ」

「食べきれないほどお肉がある。だから私はお肉を食べる。ウェンディは野菜を食べた方がいい。それ以上は……危険」

「どういう意味ですか? 私は別に太ってません!」

「そうだぞシロ。あとお肉ばっかりは流石に駄目だ」


痩せる時は胸から痩せるって言うし、もしあの至宝が小さくなりでもしたら困る。

いやべつにウェンディの魅力がそこにしかないわけじゃないけど、至宝は至宝なわけでして、ええ。


「さあそこの新婚さん! 良かったらうちの畑で取れた野菜を見て行ってよ。新鮮で美味しいわよー!」

「美味しいってさシロ。見に行くぞ」

「うー。野菜は好きじゃない」

「ほらほら、行きますよ」


おおう。

凄いな。見たことのない野菜ばかりだ。

似たようなのはあるのだが、これジャガイモなのかな?

ごぼうみたいなのが二本くっついてるけど。


『モイ  繊維質が多く潰してスープに混ぜるなどすると美味。

     安価な一般食。二足歩行で畑を歩き回る』


んー……。

ジャガイモだな。よし。

モイって逆読みでイモだし。うん。

こいつが二足歩行で歩き回るとか恐怖でしかないけど。


「ご主人様。どれもおいしそうですね」

「そーだなー……」


『ピギーマン 苦さを含んだ緑色の野菜。

       子供の天敵。これを食べられれば大人だと言える。二足歩行で畑を歩き回る』

『キャレス サラダの定番。これを食べれば快便間違いなし。二足歩行で(略)』


……。

なに?

なんなの?

この世界の野菜はデフォルトで二足歩行なの?


「なあ、野菜って歩くのか?」

「そうですね。基本的には畑内からでることはないですが、歩き回ってます」

「なんのために?」

「さあ……? 日当たりがいいところに移動してるんでしょうか?」

「あんた達何も知らないんだねえ! そりゃあ野菜も運動をして身体を絞っているんだよ。歩き回る元気があればあるほど美味しく育つからね!」

「それ捕まえるの大変じゃないか?」

「夜の間は寝床で土の中や茎にぶら下がって休んでいるからね。その間に一気に収穫しちまうのさ!」


なるほど。夜の間は俺が知ってる野菜と同じなんだな。

良かったー。後々農業をするにしても夜に徘徊を続ける野菜とか恐怖映像だろうさ。


「んーじゃあとりあえずこれとこれとこれとこれを、一籠ずつ貰おうかな」


とりあえず全部イモっぽいのとピーマンぽいのとキャベツっぽいの、それとニンジンっぽいのに、トマトっぽいのを一籠買っておくとする。


「おーさすが色男は気前がいいねえ!」


気前がいいというか、うちには大食漢がいるからな。


「そんなにいらない!」


当の本人は野菜嫌いみたいなんだけどね。

まあでも工夫一つで幾らでも美味しくなるからな。


「ありがとう。持っていけるかい?」

「ああ、これに入れてくれ」

「おや、魔法の袋かい? いいねえ。私もこれを買えれば野菜を運ぶのが楽になるんだがねえ」

「残念ながら預かり物だよ」

「おや、こんな別嬪な奴隷を二人抱えてるからどこかのお金持ちかと思ったよ」


別嬪なのは激しく同意するが、残りの人生を働かずに遊んで暮らせるほどにはまだまだ遠いしな。

ああ、お金持ちになりたいなー。


「野菜多い……」

「そんなしょげるなって。お肉もいっぱいあるだろ」


魔法の袋には上限があるので、誰にも見られないように野菜やお肉を魔法空間に移していく。

魔法の袋(小)だと時間が経過しちまうが、魔法空間は時間の経過もしないし、鮮度が落ちることもないからな。


「ご主人様何を作るおつもりなんですか?」

「んーとりあえずまだ何も決めてないな。っていうか野菜や肉は代用が利くけど、調味料とか主食がどうなるかだな」


異世界モノって大概は米が無かったり、どっか凄い田舎にしかなかったりなんだよな。

でも白パンはあったから小麦粉か、それに近い物はあるだろう。

だったらアレなら作れそうだ。

日本食ではないんだけどね。

っていうかもうこの世界にはあるかもだけど。


「お次は何を見られますか?」

「油と粉類、後は調味料の店があればいいんだけど……」

「お兄さん油って言ったっすか? 油ならうちが一番っすよ! 調味料もお酒もうちが一番っすよー!」


話しながら歩いていると、目の前に健康的な日焼け肌でへそ出しのショートパンツチューブトップの獣人が俺達を止めるように元気よく横から現れた。

普通なお話。

次から少し話が進む感じかも? 予定は未定ですが…。

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