3-7 マイホームマイライフ 空間魔法Lv3
一人暮らしの男が一番面倒くさく感じるという片づけをウェンディとシロに仲直りがてら頼み、俺は一人錬金室に篭ることにした。
いつも通りバイブレータを5つ作り終わり、魔法空間に収納していく。
すると、
『空間魔法のスキルレベルが 3 になりました』
おおー。
ついにレベル3か。
願わくば早速転移魔法なんかだと嬉しいんだが。
【空間魔法 Lv3
指定した空間を立方的に固める。サイズ調整可能。
指定がない場合は自身の周囲を囲むように空間が凝固される】
んんー……?
空間の凝固?
それに
とりあえず発動してみるか。
…………。
んん?
何か変わったか?
「主ー! 洗い物終わったー」
扉がバンっと開き、シロが俺に向かって飛び込んでくる。
「ふぎゃ……」
「こらシロ。だからノックをしなさいって……何をしているのですか?」
「おいシロ。だいじょうぶか?」
いつものように飛びついてくると思ったら俺の手前1mくらいのところでシロは何かにぶつかって停止してしまった。
「痛い……。ぶつかった」
「あーすまん」
不可視の牢獄ってそういうことか。
空間を固めて壁を作るってところか。
指定無しなら俺の周りに、指定ありならそこを中心にって感じだろう。
牢獄って指定しないと入るの俺かよ……。
「んー。主に届かない。なんで?」
「シロ……浮いてますよ……?」
シロは見えない壁をよじ登って俺の上50cmくらいのところで浮いている。
まじか。足場にもなるのか。
便利といえば便利だな。
「悪い。新しいスキルを覚えたから試してたんだ。今解除するよ」
「新しいスキル?」
「ああ。空間魔法がレベル3になったからさ」
そう言いながら解除すると、シロが俺の腕に落ちてくる。
お姫様抱っこで抱きかかえてゆっくりと下に下ろすと、再度俺の膝の上に乗ってきた。
さて、せっかくだし色々試してみるか。
「ウェンディちょっとそこを動かないでくれ」
「え? はい」
俺はシロも含めて
「よし。シロがいても大丈夫そうだな」
「ん? なんかもわっとしてる」
「えっと、発動しているのでしょうか?」
「ああ。もう発動してるよ」
よし。中に俺以外がいても問題ないな、次は……。
「ウェンディはこっちに、シロはウェンディのいる場所に行ってくれ」
「んんー? わかった」
「はい。かしこまりました」
シロが元々ウェンディのいた場所へ、そしてウェンディは手を前に出して恐る恐るこちらへと近づいてくる。
「あ、本当に何かあるんですね」
「主、行けた。けど戻れない」
中から外にはいけるんだな。
「シロ。行くぞ」
「んんー」
俺はシロに向かって近くにあった空の魔石を投げてみる。
すると、スルリとすり抜けてシロは見事にキャッチする。
「おおお。中から外へは自由なんだな」
中から外へは物体であろうと生物であろうと出れて、外から中へは入れないって、どっちが牢獄なんだ……。
「あとは耐久度だな。流石に無限だったらチートが過ぎるだろうし……。シロ。見えない壁を攻撃してみてくれ」
「あい」
シロは腰から大型ナイフを取り出して
すると、体感的に壁の耐久度が下がった気がした。
「シロ。もう一回」
「ん」
やはりだ。
数値として見えるわけではないが、あと二撃も喰らえば壁が壊れるのが分かる。
「あと二回頼む」
「わかった」
シロは二連撃を繰り出すと音もなく壁が壊れたというのが分かる。
「壊れた?」
「だな」
「じゃあ、とう!」
すぐさまもう一度発動してみる。
再起動までタイムラグがあるのかどうかを知りたかったのだが発動できた。
当然ダイブしてきたシロは新たな壁にぶち当たる。
「主、酷い……」
「ああ、ごめんな。有事の際は使えそうだし、試せることは今の内に試そうと思って……」
すぐ解除して抱き上げて撫でてあげるから機嫌を直してくれ。
「ご主人様。私空間魔法のことはわからないのですが、魔法は防げるのでしょうか?」
「ああ、じゃあそれも試してみよう」
「それでは失礼致します」
俺も
「いきますね。『
ウェンディの周りに水の弾が複数でき、それが俺とシロへと向かってきたのだが
どうやら魔法でも物理攻撃と同様に防ぐことはできるが耐久力が減っていくようである。
「ふう。回数制限のある防御魔法って感じかな?」
「はぁ……。そうみたいですね。魔法も防げてご主人様に当たらずよかったです」
これはいいねえ。
何が起こるかわからない世界だし、いざという時に守る為のスキルがあるのは心強い。
ついでといわんばかりに魔法空間の容量が増えていた。
今まで0~9だったのが0~19に増えている。
まあこれは別に今まで10枠全て使ってないのだが、余裕があるのはいいことだろう。
「転移スキルじゃなかったけど。これでシロの突撃を防げるな」
「やー。防がないで」
俺の膝上でじたばたと暴れるシロだが、飛び込んできさえしなければ構わないんだがな。
あれ地味に痛いんだ……。
今も腰のナイフが硬くて地味に痛いんです……。
あとはMPの消費量が問題だが……。
「MPの消費量はサイズによって変わるみたいだな。あと複数個だしても過剰にMPが減る心配はなさそうだ」
「便利」
「だな。あー……そうだせっかくだしスキルの実験を含めてゲームをしよう」
「げーむ? 何するの?」
「一回部屋から出てくれ。準備が出来たら言うからそうしたら部屋に入ってきてな」
「私はどうすればよろしいですか?」
「ウェンディもせっかくだからやってみようか。シロと競争で俺のところに先にたどり着いた方が勝ちってことで」
「シロが勝つ……」
「身体能力では負けてしまいそうですね……」
「まあ大丈夫だと思うぞ」
一先ず二人には部屋を出てもらい準備を整える。
まあぶっちゃけると見えない壁の迷路だ。
部屋は狭いので薄く細く不可視の牢獄を形成していくのだが、これあれだ。
薄く細く不可視の牢獄を作った方がMP効率がずっといい。
恐らく内部空間の広さでMPの消費量が決まるのだろうと予測を立てた。
これなら中の空間の薄い一枚壁のように出せば大分MPの消費を抑えられそうだな。
多方向からの攻撃なら普通に囲めばいいだけだし。
やばい。このスキル便利かもしれない。
とりあえず行き止まりや分岐を作っていき、迷路が完成する。
「二人ともいいぞー。先に俺のところにたどり着いたほうの勝ちな」
「とう! ふぎゃ」
「いやシロ、スキルの実験って言ったんだから真っ直ぐ来れるわけ無いだろう……」
「壁が……あいた。どこにあるかわかりませんね……」
「当然ながら壊すのは無しな。それ以外ならなんでもありってことで」
「むう。主が意地悪する」
「いや壊したらゲームの意味がないだろう」
それにせっかく作ったんだから頑張ってクリアしてもらいたい。
でも二人は恐る恐る進んでいて、正解ルートが分かる俺からするとウェンディがやや有利だろうか。
あまり迷わずに俺のところにたどり着きそうだ。
「んー……あ、これで、私の勝ちですね!」
やはりそのままの調子で先に辿りついたのはウェンディだった。
「むう……」
「シロは同じところを行ったり来たりしてたな」
「匂いを辿るならできるのに……」
「うふふ。では勝者として、ご主人様のお膝戴きますね!」
「え、ちょ」
ズガガガガガガガ!!!
「それは容認できない」
シ、シロさん? 物凄い速さでここまで壁を壊して来ませんでしたか?
大丈夫かなこのスキル。
防御スキルとしてちゃんと使えるのかな!?
あとナイフは危ないから早くしまいなさいな。
進み具合がスローペース。