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3-6 マイホームマイライフ ヤーシスの贈り物

ごめんなさい。ちょっと諸事情で改変しています。

そして諸事情で無難にしています。

来週中に全ての調整を終わらせますので……。


2017 07/20

お風呂を満喫した次の日、俺はウェンディと共に寝ていたベッドで起きた。

まだ寝ているウェンディを起こさぬようにこっそりとベッドから這い出ると、カーテンを開いて朝日をたっぷりと浴びる。


んんー!

背伸びをしたら背中がぽきぽきとなり、少し寝すぎたかなと感じた。

まあ、昨日は念願のお風呂にも入れたしな。

これで疲れもたっぷり取れただろう。


「さて」

「ふわ……。おはようございます。ご主人様」

「おはよう。まだ寝ぼけてるね」

「朝は苦手ではなかったはずなのですが、昨日はぐっすりでした」


それはわかる。

お風呂に入ったあと寝ると疲れがしっかり取れるのだ。

やはりリフレッシュは大切である。


「さて、シロが起きる前に」

「起きる前に何?」

「シロ!?」


当然のように部屋の中にいるシロに驚く。

一体何時からいたのだろうか。


「もうお昼前……朝ごはんを食べたい……」

「ああ、ごめんごめん。ちょっと寝すぎたな」

「それはいい、それよりもなんでウェンディもいる?」

「あー……、それはだな」

「ずるい。シロも一緒に寝たかった……」

「先に寝ていたシロが悪いのです。早い者勝ちです」


ウェンディは勝ち誇った顔をしていた。

なんというか、ちょっと大人げないですよ。


「今回はもう別にいい。次は主とシロで二人で寝る。二日連続」

「あ、それはずるいです! 交代、交代制にしましょう!」

「駄目。絶対嫌」


ウェンディの勝ち誇った顔にカチンと来たのかシロもシロで最大限の嫌がらせを宣言していた。


二人を宥めて風呂場に赴き、洗濯をしながら水を貯めて朝風呂の準備を始める。

朝風呂の習慣はないのか二人は驚いていたが、よっぽどお風呂が好きなのだと納得してくれた。

元の世界だと、割と朝風呂、もとい朝シャワーは好きな人多い……と思うんだが。


シロとウェンディと三人でかけ湯をしてお風呂につかり、今回はシロも泳がずに俺の横にぴたりとくっついていた。

ウェンディは昨日からお風呂ではべったりで、反対側の腕を恥ずかしがらずにきゅっと抱きしめている。


「あー……気持ちいいなあ」

「そうですねえ」

「シロにはちょっと熱い」

「無理するなよ。先にお湯から出てもいいんだぞ」

「大丈夫。ウェンディと主を二人っきりにはさせない」


そうは言うがシロは大分無理しているのか、頭をふらふらとさせている。

流石にこれ以上はまずいのだが、シロは頑なに俺から離れようとしない。

仕方なく俺は頭からお湯を被り、お風呂から出ることにした。

脱衣所に扇風機がないので身体を拭いて錬金室に入り、冷房魔道具に魔力を注ぐと火照った身体をゆっくりと覚ますような冷風が出てきて気持ちがいい。


「あー……。でも長居すると風邪引くなこれ。扇風機も作るか……」


正直プラスチックが欲しい。

ガラスや鉄だと危ないしな。

でも石油の加工技術なんて俺には分からないし、この世界でもまだないだろうと考える。

あったら便利なんだけどなあ。


なんだかんだもとの世界ってプラスチック製品が多いよな。

バイブレータだって普通はプラスチックだよね?


「ぐえ」


ソファーで横になりながら涼を取っているとシロが追いかけてきて俺のおなかの上に乗ってくる。

乗るのはいいが、飛び乗るのは勘弁してくれ。


「主、髪拭いて」

「ん、ってびしょびしょじゃねえか」


ったく世話が焼ける子だ。

あーあー服もびしょびしょじゃねえか。


「風邪引くぞ」

「ん、引いたことない」

「まじか。ほれ、かゆいところないですかー?」

「んーもうちょっと下」


ほれほれ。ここか? ここがええんか?

やっぱり耳周りがかゆいんか?

なんだかいつにもまして甘えん坊だな。


「こらシロ。まだ頭を拭いてませんよ!」

「んー主に拭いてもらってるから大丈夫」

「あ、こら! ご主人様になにをさせているのですか!」

「いいよいいよ。ウェンディのもしようか?」

「私は……もう拭いてしまいました……」

「じゃあ髪でも束ねようか?」

「ご主人様は束ねた方がお好きですか?」


そういうわけじゃないが、髪の長い女の子の髪ってちょっといじりたくならない?

まあ出来ても三つ編みくらいだけど。

それに失敗して跡がついちゃうとせっかくの綺麗な髪が残念になりそうだな。


「そうでも……ないかな? ウェンディはそのままの方がいいかも」

「そうですか……うー」


あれおかしいな。

俺の中では褒めたつもりなんだけど、何故かしょげている。


「ほい、シロ終わり。ウェンディも風邪引くとまずいからそろそろ出るぞ」

「はい。それじゃあ朝ごはんにしましょうか」

「そうだな。俺も手伝うよ」

「はい。うふふ。シロはゆっくり待っててくださいね」

「むー。ご飯には代えられない……」


さすがのシロも料理の時は大人しいか。


二人で朝食を作り、せっかくなので食卓に並べると朝から結構豪勢になってしまった。

初めて見る食材が色々あるからあれもこれもとウェンディに調理法を聞いてしまい何時の間にか6品も出来てしまったのだ。


「こらシロ。ちゃんと野菜も食べなさい」

「やー。肉肉パン肉肉肉」

「肉の比重多すぎだろ……」

「好きなものは好きなときに食べる。じゃないと食べられなくなる事もあるから」


以前俺の牛串サンドを食べていたときもそんなこと言ってたな。

シロは戦闘種族って言っていたし、戦いで死ぬことを前提で話しているのかもしれない。

確かにシロには護衛を頼むつもりではいるが、積極的に敵に向かっていってもらうつもりもなければ、わざわざ危険を冒すつもりもないのだ。


「シロ。野菜も食べないと大きくなれないぞ」

「……。ウェンディ。サラダも食べる」

「はいはい。これくらいでいいですか?」

「ん。……苦い」

「そうか? これなんて瑞々しくて美味いぞ。ほれあーん」

「あーん。……やっぱり苦い」


舌が違うんだろうか。

そういえば俺も子供の頃はピーマンが苦くてしょうがなかったが、大人になってからピーマンの肉詰めが大好物の一つになってたな。

焼き鳥のたれで簡単に味をつけるんだが、あれがまたうまいんだ。


リーン リーン リーン


「何の音だ?」

「ご来客のようですね。私が出てまいります」


ああ、インターホン的なあれか。

そういえば門があるから、直接ノックも出来ないもんな。

それにしてもどういう原理で鳴っているんだろう。


「主、野菜美味しくない」

「今度美味しくなるよう作ってやるから今日は頑張れ」

「うえぇ……」


悲しそうに食べるなあ。

仕方がないから俺の分の骨付き肉を分けてあげよう。


「ご主人様、ヤーシス様がお見えになられました」

「お食事中に失礼致します。お引越しのお祝いをしに参りました」

「おうヤーシス。あの日以来だな。奥さんとは仲良くやれたのか?」

「ええ勿論。子供達も久しぶりに私と遊ぶのを楽しみにしていたようで、たっぷり普段の恩返しが出来ましたよ」


子供までいたのか……。

しかも達ってことは一人じゃないみたいだな。


「使いから商品は受け取ってるよな?」

「はい。さすがお客様お仕事が速いですね。こちらとしても売る相手を選んでも、予約待ちが続いている状況でしたので大変助かりました」

「また少し作ってあるから、今日渡すよ」

「助かります。本来の使い方をご所望される方が多いので、大き目の物を多めに作って頂いてもよろしいでしょうか?」

「了解っと」


大きい方が当然材料費がかかるのだが、それでも元は余裕で取れる。

ヤーシスに安く売っているとはいえ元が取れて安定して売れるならば俺はそれでいいと思う。

継続は力なり、って意味は違うがまあそんなとこだろう。


「ところで……どうやらうまくやっていらっしゃるようですね」

「……なんのことだ?」

「いえいえ。なんでもありませんよ」


なんでもないって事はないよな……。

この男、油断ならないからな……。


「ええ、それで今日お持ちしたのは取っておきです。お客様にぴったりかと」


そういってヤーシスが魔法の袋から大きめの瓶を一つ取り出した。


『-アルティメットナイト-  詳細不明 究極の夜を貴方に』


……。

だからさあ。

なんでレインリヒといいヤーシスといい詳細不明の品を俺に渡すのかな?

究極っておい……。

何が起こるの? アルティメットナイトってどういうことなの?


「こちらはかの絶倫皇が作り上げた世界に数本しかない逸品でございます。所有していることを誰にも言わないことをオススメしますよ」

「いやいやいや、訳がわからない。なんでだよ?」

「貴族の方の中には殺してでも欲しいという方が多数いらっしゃいますからね」


物騒な話過ぎるだろう……。

っというかヤーシスはなんでこれを持ってるんだよ。

しかもこれ、どう見ても未開封じゃねえか。


「ヤーシスは試してないのか?」

「うちは妻も私も淡白なもので。子供も成長していますしあとは普通の幸せがあればそれでいいのです」


試してもない薬を俺に譲るのか……。

危険は、ないよな?

あとヤーシス。お前の普通の幸せってどんななのか俺は凄く気になるぞ。


「シロ。これでお客様が小さい方には反応しない方だとしても安心です」

「ヤーシスよくやった!」

「喜んでいただけたようで安心しました」

「まあ、貰ってはおくが使うかどうかは別だぞ……」

「ええ。構いませんとも。ですがくれぐれも私から受け取ったことと、貴方が持っていることを広めないでくださいね?」

「ああ、わかった」


更に念を押してくるとは、これは本当に危ないんだな……。

魔法空間から出さないようにしておこう。


「そうだ。朝食食べていくか?」

「いえ、今日は妻の愛情が詰まった朝食を食べましたので」

「そうか。じゃあアイナ達が帰ってきたら引っ越し記念の食事会をする予定なんだがどうだ?」

「予定が合えば是非参加させていただきます」

「じゃあその時に。予定が合うことを願ってるよ」

「はい。その時はよろしくお願いいたします」


それだけ言うとヤーシスは帰っていった。

わざわざ忙しい中俺の為に引っ越し祝いを届けにきてくれたんだと思うと、たとえ持っているだけで危険な物でも嬉しいもんだ。


「主、シロのときは使っていいからね?」

「いやいやいや。普通に怖くて使えないからね……」

「わ、私のときも構いませんから!」

「ウェンディも張り合わなくていいから……」

「シロだけ。ウェンディは年が……」

「そこまで違いません! まだ私だって若いです!」

「シロと比べれば年m……」

「あーそういうこと言いますか。ではシロはお昼ご飯は無しですね!」

「そういうのはずるい。でもお財布は主が握っている。主にご飯頼むからいい」

「でもでも私とご主人様は同じご飯で、シロだけ屋台のご飯ってことですね。私とご主人様はおそろいですけど!」

「むう。ウェンディ性格悪い」

「悪くないです。シロよりも悪くないです」


はぁ。

とりあえず朝飯を食べ終えたらヤーシスに頼まれたバイブレータの製作をしよう。

そのあとは何をしようかな。


「ご主人様聞いてますか!? シロが酷いんです!」

「主、諸悪の根源はウェンディ。ウェンディが全部悪い」

「お前ら、初めの仲良くやってた二人はどこに行ったんだよ……」


これからよろしくだとか、一緒に幸せになるとか言ってたじゃないか。

頼むから仲良くしてくれ……。

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