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3-2 マイホームマイライフ マイホーム案内(庭と厨房)

一言。楽しかった。

さて、ダーマとのやり取りは一先ず置いておくとして、早速中を見てみようと思う。

案内はダーマなんですけどもね。


「さて、それではまず門を抜けてお庭からご説明させていただきますね」


先ほどのやり取りがなかったかのような爽やかな笑顔で案内を始めるダーマさん。


「こちらは現在芝生でございますが、若様のお好きなように変えていただいて構いません」

「おー。それはいいね。なあウェンディ」

「はい。季節の花々や、果実などを育ててみたいです」


いいね。きっとウェンディなら華やかな庭を造ってくれるだろう。


「ん? あの筒は?」


庭の一角に丸いパイプのような筒の先端が見える。

何であんなところに筒があるんだ?


「あちらは地下のお風呂の換気用ですね。お風呂は地下にとのことでしたので、空気を送る為に地上と繋げさせていただきました。安心してください。お風呂の中は覗けないようになっております」

「なら良かった。そういえば風呂があったんだったな」

「若様はお風呂がお好きなのですか?」

「そうだな。元の世界では毎日入ってたからな」

「ならよかったですわ! お風呂は私が丹精込めて設計致しましたので楽しみにしていてくださいませ」

「メイラが? 奇抜なのはやめてくれよ?」

「私にどういうイメージを持ってるんですの……。当然流れ人である貴方にぴったりのお風呂に致しましたわ」


いやだってお嬢様っぽいしさ、金色(こんじき)の湯みたいな全面金箔張りとか、ファンシーなお風呂とかはごめんだぞ。

お風呂ってのはくつろぎの空間で、一日の疲れを癒したいのに余計に疲れるのは勘弁だ。


「そうですね。なかなか斬新ではありますが、ご満足いただけると思いますよ」

「あれはなかなかだったな。俺の本邸の風呂を改装するなら次はメイラに設計を任せてもいいと思えるくらいだ」


真面目に建築に携わるダーマに、仕事には厳しそうなダーウィンも認めるというなら一応信用しておこう。

だが日本人の風呂に対する意識の高さを甘く見るなよ。

俺はユニットバスは反対派だからな。

一人暮らしで家を探した時は、まずそこから検索したからな。


「私、地方からの輸出と輸入が本業なのですが、各地の特産品や珍しい情報などが多く入ってきますの。ですから今回は地方に伝わっていた流れ人の方が感動したというお話を元に造らさせていただきましたわ」

「へえ。じゃあ別の街に遊びに行くときはメイラに聞けば色々わかるんだな」

「ええ。いつでも訪れてくださって構いませんわ。なんでしたらご同行してご案内もいたしますわよ?」


案内もありがたいが地方の情報通が身近にいるのは助かるな。

ここにも地方の名産品が集まっているらしいが、やはり気に入ったものは本場の味も確かめてみたいしね。


「機会があったら頼む」

「はい。お待ちしております」


メイラはスカートの端を掴んで優雅に頭を下げている。

やっぱこの人いいところの出なんじゃないだろうか。

なんでダーウィンの養子になったんだろう。


「さて、お庭の方は手を殆どつけていないのでこれからお客様にお任せするとして、それでは中のほうをご案内いたしましょうか」

「ああ、よろしく頼む」


木製の飾られた大きな扉を開くと下駄箱や靴を脱ぐスペースがないことにまず気がつく辺り、俺は日本人だなと感じる。

まあ当然ながら外国と同じように土足なのか。


中に入るとまず二階から下がるシャンデリアに目が奪われる。

そこまで大きくは無いが、高そうなシャンデリアは、二階の天井から垂れ下がっており空間をうまく使っているようだ。

そしてその先は広い廊下で、一番近い扉の前にダーマが立つ。


「こちらが厨房とお食事を取る場所です」


中に入ると左手に厨房があり、壁際には火を扱うのでレンガで組まれた竈や、食器を並べる為の棚、それに俺が頼んだ銀食器などが陳列されていた。


「こちらに数日分の食料は入っております、一応保存の利くものばかりですが足りない分は追加の目録にお願いしますね」

「分かってると思うが目録を出すのは一回きりだからな。食い終わったからって追加発注しようとするなよ」

「流石に分かってるって……」


ダーウィンさんたら、目が怖いですよ?

それに俺はレインリヒ達と違ってそんな恐ろしい真似を堂々と出来るわけないじゃないですかーやだなーもう。

それに目録は鋭意製作中である。

家を見て必要な物に気がついたら追加してお願いする所存ですよ。


「そういえばウェンディってご飯作れる?」

「一応料理スキルも持っていますがまだレベルが4なのであまり期待しないでいただけると助かります」

「んーいいよいいよ。出来るだけ良かった。俺はレベル1だし。じゃあ料理はウェンディに習えばいいな」


まだこの世界に来てほとんど錬金しかしてないからな。

料理も農業もこれからゆっくりレベルを上げられればそれでいい。


「ご主人様と共同作業……。はい。精一杯努めさせていただきます」

「いや、そんな気合入れなくてもいいよ?」

「いえ、ご主人様のご命令を遂行するために全身全霊で頑張ります!」


握りこぶしを作ってまでやる気満々のウェンディもなんか可愛い。

そうか共同作業……。


『ご主人様? 包丁の持ち方が悪いですね。失礼します。ここをちゃんと押さえて……』

『……ウェンディ? その、後ろから密着されると……』

『? ……ッ! キャ!』

『痛ッ』

『ああ! 申し訳ありませんご主人様!』

『いてて……』

『血が! 失礼致します! はむ』

『ウェンディ!? 指を!!? ああーー』


みたいな? みたいな!

うっへっへ。我ながら最高に気持ち悪いな。


「えっと……」

「突然何を言い出すんですの!?」

「主。指をぱくってすればいいの?」


ん?ん?

んーーー???

んんんんんん!!?


「何をまさかそんな馬鹿な!」

「いやいや。なかなかいないぞ。自分の妄想を口に出す奴」

「俺が妄想を口に出していたとおっしゃられるでござりますか!!?」

「なんだその話し方。ああ、後ろから密着されるところから、指を口に含ませるところまでな」

「あっはっはっは。殺してくれ!」

「それよりいいのかそっちは」

「そうだった! ウェンディさん違うんです!!」

「ッ……」


ウェンディは顔を赤くして目を逸らしてしまった。


「そ、その恥ずかしいですが、ご主人様が望まれるのでしたら……」

「違うんです! 冗談なんです! ジョークなんです! ただの妄想なんです!」

「あ、それでしたら私がしてさしあげましょうか?」

「ちょっと黙ってろ色男!! 今俺の人生において一世一代の土下座をするから! ウェンディ頼むからこっちを向いてくれ!」


ウェンディはしばらく顔を真っ赤にして俺のほうを向いてくれなかった。

せっかく積み上げてきた俺の好感度がまさかの真っ逆さまなんじゃなかろうか!

土下座で足りますか? 五体投地しますか!?

頼むからウェンディこっちを向いてよ!

あとシロ! まだ指切ってないから指を咥えようとしないでいいから!

でも引かないでいてくれて、なんかありがとう!


「……まあなんだ。確かにあの胸だしな。気持ちはわからんでもない」


ダーウィンの優しい慰めが余計に俺の心を削っていく。

しくしく……。


……いや待て俺。

俺は風呂にウェンディとシロと三人ではいる予定だ。

とすれば胸を押し付けるくらい普通。

むしろ大分弱い部類だろう。

こんなことで二の足を踏まれたら後々困る。

それならば!


「っふ。ふふふ……」

「主、怖い」

「今度は突然笑い出しましたわよ!」

「あれは開き直った顔だな。あいつ次は何をするんだろうな!」

「父上、若様は必死なのですからあまり楽しそうになさらないでください」

「ウェンディ!」

「は、はい!」

「いいかウェンディ! 俺に料理を教える時はその胸を押し付けるように! あと出歩くときは以前と同じように俺の腕を胸に押し付けて歩いてくれ。いいな!」

「「「……わお」」」


ビシッとウェンディを指して言い放つ俺。

主人の命令って形にしたんだけど、正直何をしてるのかわかんなくなってきちゃった。

だがここで引くわけにはいかない。

これからの俺の生活には適度なエロスが必要なのである!

ウェンディと一緒に住むんだぞ? 耐えられるわけねえって。

だったら今の恥は長い目で見れば一瞬! この一瞬で俺が禁欲を迫られるのかが決まるというものだろう!


「えっと……。はい。わかりましたご主人……様?」

「ハッハッハッハ! やべえこいつ。まじでやべえ。ククク……アッハッハッハッハ!」

「変態ですわ! とんでもない変態でしたわ! 追加要求までしてきましたわ!」

「いやー。流石はレインリヒ様のお弟子の若様ですね。まさかです」


変態でいい。俺は俺の望みを叶える為ならばどんな汚名だろうと構わない。

ただ明日の俺がどうか冷静になって悶え死なないことを願う。

それにしてもダーウィン笑いすぎだ。

おいそのきれいな食事机を叩くなよ。

そしてシロ、無理してくっつかなくていいぞ?

お前さんのは……その、残念ながらもう少し成長したらでいいからな。


「我慢しない……。それは突き通せば美徳になる。今は耐えろ俺……!」

「突き通しても変態にしかなりませんわ! 捕まらないことを考えなさいませ!」

「たとえ変態でもご主人様はご主人様ですか、ら……? それにそういえば私はご主人様とお出かけした時に自分から胸を押し付けていましたし……。あれ? さっきのも別に普通のことなのでは……」

「ウェンディさん混乱していますわよ! 早く正気にお戻りなさい! 歩きながら胸を押し付けるのとはわけが違いますわ!」

「えっと、あれ? でも身も心もご主人様に捧げていますし……」

「大丈夫だウェンディ。何も問題ないさ」


そう。

何も問題などないさ。

同意の上ならば問題なんてないのだよ!


「は、はい。そうですよね。問題……ないですよね?」

「もちろんだとも。いいか俺はこう考えている。想ったことは声に出さないと伝わらない。だからウェンディもシロも俺にしてほしいことができたらちゃんと言ってくれ。言われないと、わからないこともあるからな……。俺は二人が好きだ。大好きだ。ずっと一緒にいたい。ずっと一緒に暮らしていきたい。俺は二人が望むことを出来る限り叶えたい。だから、俺の望みを叶える時は、二人に協力してほしい」


これは本心だ。

奴隷ではあるが、二人がしたいことは俺も応援したいし、協力もしたいと心から想っている。

そこにちょっと俺の願望を混ぜ込んだだけである。


「ん。シロは主が好き。だからしてほしいことはちゃんと言う」

「ご主人様……。はい。私もご主人様が大好きです。ご主人様のお望みは私達が叶えます。いかなる時も、ご主人様とずっと一緒ですから」

「今度はいい話風にして誤魔化しましたわ! ウェンディさんシロさん騙されてはいけませんわ!?」

「メイラ。今俺たちはある意味 家族 の話をしているんだ。部外者は静かにしていてほしい」

「家族……。シロも家族!」

「そうですメイラさん。私達のことに口を挟まないでいただけますか?」

「うう、私はお二人のことを思って……」

「大丈夫です。ご主人様の本質を私達は信じています。ご主人様のいいところも悪いところも全て含めて私達のご主人様ですから。ご主人様が少しエッチだからといってそれで失望するような私達ではございません」

「シロは家族と、主の幸せを守る。それだけ」

「今度は共通の敵を作って絆を深めたぞ。こりゃ天性の詐欺師だな」

「凄いですね。あっという間でした。私も見習いたいです」


なんとかなった!?

なったよね!!?

ウェンディには《親愛の証》もあるから状態異常とかじゃないよね?

もしかしてとっくに親愛度が0で状態異常にかかってるとかじゃないよね??

っていうか俺にそんなスキルはないし!


「ふう。なんとかなったぜ」

「なってませんわ! お二人を元にお戻しなさいこの外道!」


おいおいおい。外道なのはお前さんの親父殿だろうよ。

この善良な錬金術師である俺に向かってなんてことを……。


「そういえばメイラは俺の嫁になるとか言ってたな。じゃあメイラも家族になるかもしれないもんな。メイラも、俺の家族になるなら俺の言うことを聞いてくれるんだよな?」

「はえ!?」


そっと耳に口を近づけて内緒話。


「〇〇に××××して、メイラの■■■に俺の□□□□を強引に△△△してもいいか?」

「っば! っな! 何を言い出しますの!?」

「おい今度はうちのメイラまでやられそうだぞ」

「止めますか? 正直見ている分には面白いので関わりたくないのですが」

「賛成だ。どこまでうちのメイラが落とされるか見てるとしよう」

「助けなさいよ私の家族達!」


ふう。よし。なんとかなった! 問題解決!

あと三人はこの話を広めないでくださいお願いします!

なんか若干えちぃ話が多い気がするけど、きっときのせいだよね!


それにしても相変わらず進まない物語。

普通家の説明って一話で終わるよね……。

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