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2-9 商業都市アインズヘイル 現状の最高傑作

果てしなく調子に乗った。

書き進めてしまい後に引けなくなった。

後悔はしていない。でも、すみませんでした!

こういう異世界転生モノでは、元の世界の物を作って画期的だ何だといわれ大金を手に入れるパターンが多くある。

だが現実はそう上手くはいかないものだ。

当然の如く、ある程度舗装されている地面をみれば分かるのだが、この世界もそれなりに文明は進んでいるのである。

藁や木で家が作られている時代に行けば、ライターなんかを作るだけで大儲けが出来るだろうが、この世界には既にチャッ〇マンもどきもあれば、魔導ランプもある。更には魔法やスキルで機械ばりに効率のいい生産方法もあるのだ。


加えて俺以外にも『流れ人』は以前からいるみたいだし、俺が思いつく物などもうすでに作られている可能性が高い。

こういうとき、生活必需品や生活補助品を頭に浮かべることが多いと思うが、それらの発展は現地人達も研究し著しく発展を遂げているものだと予想する。

ではどうするか。

生活必需品でも生活補助品でもない、前の世界でそんなにお目にかかる訳でもない物を作れば良いのではないか。


うだうだと詭弁や戯言を並べたが、要は何故『これ』を作ったかと聞かれた場合の後付の言い訳である。

作っている最中はへらへら笑いながら適当に冗談交じりだったのだが思いのほか上手く出来上がってしまっただけなのだ。


とはいえ、目の前にあるのは俺の英知の結晶だ。

ネタとはいえここまで再現度が高く出来るとは思わなかった。

残っている材料でこんなものを作れるなんて思わなかった。


だけど、完成してしまった。

形、機能、何もかもが思ったとおり、いや燃料の面を考えればそれ以上だろうか。

魔力で動き、オンオフも可能。

効果は折り紙つきであろう。

作っている最中はパズルをしているような気分だったが、完成したらその効果の高さに驚いた。

更に形を元の世界のものと同じにしたらまんまだった。

あとは人体に優しいピンク色の塗料でもあればいいのだが、残念なことに今回はクリアである。


外観は蚕の繭型というべきなのだろうか。本体は親指大の大きさで紐のようなものがついておりその先には魔力を注ぐ魔石を繋いである。

魔石に魔力を注ぐと起動できるのだが、注いだ魔力の量に応じて起動時間が決まっている。

魔石を囲む装置のつまみを捻れば、一瞬でオンオフはおろか強弱の調節さえ出来るのも再現度を上げてしまっている。

原理は単純で捻ると魔力供給路が閉じられるか開けられるかというものだ。

完全に塞いでしまえば魔力は流れないので止まるという俺の中で最新式システムである。


全体的なサイズでもまあ掌には乗るだろうし携帯もできるし、家においておく際にも邪魔にならない。

自分でも使えるし、誰か他人にも使用してもらうことも可能である。


もうここまで説明すればお分かりだろうか。

ちなみに起動すると、繭型の魔力誘導板に囲まれた振動球体が魔力を得て高速振動する。

さらに表裏を事細かに混ぜた魔力誘導板により引き放しが何度も行われ、本来の振動球体以上の効果を得てしまっている。

そう、呼び名は色々あれど一番一般的な呼び方をするとすれば


『(本来は)ピ〇ク色のバイブレータクリア


俺は人類の英知、快楽の走狗を生み出してしまった。

しかも二つ。

先に言っておく。用途はマッサージである。

マッサージである。

マッサージであるが、手に入れた人によって使い方は自由だ。

そこに俺の意図はないし、俺の思惑など介入しようも無い。


「ただいま! ねえちょっと大変なの!」

「ただいま帰った主君。主君すまない! 話を聞いてくれないか?」


うん。今俺の頭の中が大変だわ。

あとノックをお願いします。

俺の英知の結晶を慌てて落としてしまうところだった。


「お帰り二人とも。どうした慌てて」

「それが、冒険者ギルドで主君のポーションが売れなかったのだ……」

「在庫はソロソロ切れるはずだけど……。そうか、製薬ギルドが手出ししてきたのか」


そういえばレインリヒからそんなことを言われていた。

まあ言われていたから元々頼りにはしていなかったけど。

今回もレインリヒ様に助けられてばっかりだな。レインリヒ様万歳。


「んで、あいつら何をしてきたんだ?」


悪い噂を流す、俺より安く低級の回復ポーションを卸す、配達中に襲われてポーションを奪われるなどを想定したのだがどうだろう。


「それが、奴ら回復ポーション(中)を(劣)よりも安い値段で売っているんだ!」

「はあ」

「それで冒険者の皆がそれらを買いあさってしまって……」

「え、いいことだよな?」

「それはそうなのだが、だが主君にポーションを卸させておいて……」

「在庫が余ってるんなら買えないだろ。感情的にはわからなくもないが別に俺が損しているわけでもないし、冒険者が得をして製薬ギルド(あいつら)が損をするだけだろ」

「だけど今は勝負の最中でしょ? あんたの収入を下げるって手でもあるじゃない」

「それはそうだけど、元々レインリヒに言われてアクセサリー系で稼ごうと思ってたから問題ないよ」


というかもっと悪辣な真似をしてくると思ったんだがな、あ、俺あの日から錬金ギルドより外に出てないや。

そりゃなにもできないか。というか錬金ギルドに居る間は安全だろう。

まさかレインリヒのいるこのギルドに手出ししてくるとは思えないし。


「そっか。なら良かった。ところでその手に持ってるのはなに?」

「私も気になっていたのだ。主君が大事そうに持っているそれは見たことが無いな」

「いや、これはちょっと冗談で作っただけで」

「へえ。私達が日も落ちた後に材料収集してた間に遊んでたの?」

「ば、馬鹿を言うな! 冗談で作ったとは言ったが使えないとは言ってない!」

「なら見せてくれてもいいだろう」


いやさ、まずいよね。

年頃の女性に知らないとはいえこれを手渡すとか!

セクハラどころか強制猥褻でタイーホだよ! 案件だよ!


「ほら。みせてみなさいよ!」

「ああ!!」


この犬素早い! ちょ、まじでダメだって!

背徳が! 背徳感がああ!

いや待て! あれはマッサージ器具、マッサージ器具だった!

そうだ別にいやらしい物じゃない。ただのマッサージ器具じゃないか。


「なにこれ? どう使うの?」

「魔力を注いで、つまみを捻ればいいんだけど……」

「ん。じゃあ注いで」

「何で俺が!」

「だってどれくらい入れればいいのかわかんないもん」


イレレバとか言っちゃダメ!

想像しちゃうから! まだ俺現役だから!


「魔力を入れるとどうなるんだ?」

「こうなる」


実際に魔力を注いでつまみを回すと、目に見えない速さで本体部分が振動を始める。

音は小さくブブブブと唸っているのみだが、物珍しそうに二人が見ているので気まずい。


「……それを何に使うんだ?」

「いやだから冗談で作ったものだから……。まあ使用用途としてはこう、肩に当てたり」


自分の肩に当ててみる。

服の上からだが十分振動が伝わってくる。

これ、本当の奴もだけど思った以上に振動が激しいんだよな。

凝りに当てれば実際に効果はありそうだ。


「まあこんな感じで肩の凝りとかを解消する道具だよ」


嘘は言ってない。

実際に肩こりとか取れるし。


「ふーん。アイナやってみれば? そんな重いのぶら下げてるからしょっちゅう肩が凝るじゃない」

「確かに最近少し凝って痛かったんだ。頼めるか主君」


ソルテは間違いなく厭味で言ったのだろうがアイナさんは快諾し鎧を脱いで下に着ていた衣服をあらわにした。


「汗ばんでいるから恥ずかしいが、よろしく頼む」


そう言って俺の前に背を向けてかがむアイナさん。

いいんですか? いいんですね? いいんですよね?

まずは軽く触れて肩の凝りの位置を確かめる。


「ん……やはり硬いか?」

「そうだね凝りがすごいよ。頭とか痛くならないの?」

「たまにな。だがそうなる前に普段はソルテにマッサージを頼んでいる」

「へえ。まあ今回はちょっとお試しってことで」


ブブブブと唸れ俺のバイブレータ(小)。

その無骨なデザインでありながら快楽の走狗たる力の一端を解放せんとばかりに猛威をいざ振るわん!


「ヒャッ!」

「だ、大丈夫か?」

「んあ……あっ、うむ。ン……問題ない。気持ちいい、くぅっ」

「そ、そうか。ならよかった」

「ああぁあ! ん、ああそのぐらいの力が、んッっ、ンゥっ」


先生! 声が、エロイです!

こいつを使って 女性が 気持ちよく なっています。

間違ったことは言っていない。

間違ったことは! 言っていない!

オラなんだか楽しくなってきたぞ!


「しかし、ンっ、凄い振動だ、あッ、な。本当に効いている気がする、ぁんんッ、ぞ」

「大分取れてきてるかも」

「んンッ! そうか……。ただこれなら面積が広い方がいいのではないか?」


大分慣れてきたのだろう。それに凝りもほぐれてきたようで艶のある声を出さなくなってきていた。

残念だが一安心だ。

ソルテもいるなかエロイ気分になってしまいそうであった。


「ソルテもしてみたらどうだ? 気持ちいいぞ」

「私はいい……なんか変態みたいだったし」

「なっ、主君は私の体を気遣ってくれただけだぞ! なあ主君」

「ソウダネ。ソウダヨ」


そりゃそうだよね。

アイナの体に道具を押し付けて艶のある声を上げさせるなんて変態的だよね。

ソルテ。君は正しい。


「何か怪しいのよね。それって本当にそう使うものなの?」


くううう勘のいい犬は嫌いだよ!

何故俺をそう焦らせるような真似ばかりするのだ!

いや、待てよ。ここはいっそ。

どうせ犬だしな。


「だって本体がどうしてあんな小さくて丸い……ん? なに? 手招きして」

「実はこれは……ごにょごにょで、ごにょごにょ……にも使えるんだ」

「なっ! ば、馬鹿じゃないの!? あんた何作ってんのよ! っていうかなんてものをアイナに押し付けてるのよ!」


ごにょごにょの部分は濁してはいるがR18です。

予想通り耳年増のソルテは顔を真っ赤にして怒り出した。

いやなに、俺は使用用途の一つを説明しただけですよ。

ええ。懇切丁寧に。ドストレートに。


「な、なんだ。どうしたのだ?」

「アイナ! やっぱりこいつは変態よ! 早く殺さなきゃ!」

「なんなんだちゃんと説明してくれ! あの道具は悪いものなのか?」

「説明なんて出来るわけ無いでしょ! 悪……くはないけどダメなの! 絶対ダメ!」

「最近のソルテは何でもダメダメって貴族の教育ママのようだぞ! ちゃんと説明してくれれば私にだって分かるからちゃんと言ってくれ!」

「あ、じゃあ俺出かけてくるから、ソルテ、後は頼んだ!」


用事があるのは事実だし。

アイナに話すのとソルテに話すのとでは全く違う。

そういうことに疎いアイナさんに俺から話すのはちょっときついからソルテに話したわけだしね。

予想通りの展開である。

これも俺の良心の呵責の成す結果である。

……単なる嫌がらせじゃないよ?


「ちょっと逃げるんじゃないわよ変態!」

「ソルテ! 話を逸らすんじゃない。どうしてお前はいつも私を蚊帳の外に出して主君と二人で話そうとするんだ!」

「だーかーら! 説明なんて出来るわけ無いでしょ! あ、ちょっと待ちなさいよ!」

「そっちのは置いていくから好きに試してくれ、あ、ソルテに言った使い方をしちゃ駄目だゾ」

「ソルテに言った使い方ってのはなんなのだ主君! ソルテばっかりずるいぞ! ソルテ私にも教えろ!」

「だから無理だって言ってるでしょ! あ、こら逃げるな!」


さて、人体実験(?)も完了したことだし、これの活用方法を見出せたな。

早速行ってこようと思う。

がっちり掴まれているソルテを置いて、俺は錬金ギルドを出て行く。

振り向きざまに敬礼をするのを忘れない俺。

頑張れソルテ。お前がアイナに何て言ったのか楽しみにしているよ。

表現が限りなく遠まわしになったのはR15指定でありながらPRさんはまずいかもと思ったからです。

ガイドラインを読み直した結果、微妙そうだと思ったので遠まわしに《本来はピ〇ク色のバイブレータ(小)》としました。

バイブレータは振動する機械や機材ですから問題ないですよね!

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