1-14 異世界生活 奴隷についてのお勉強
三人が部屋を出ていってヤーシスと二人きりになるとヤーシスは
「それではお待ちの間に奴隷についてご説明いたしましょうか?」
「えっと、いいのか?」
「ええ。奴隷についてあまり詳しくないようですのでよろしければですが」
「ああ、是非頼みたい」
これから奴隷を買って従業員にするのだから当然聞いておいたほうがいいだろう。
「それでは、まず確認なのですがお客様は『流れ人』ですね?」
「そうだが……なんでわかった?」
「まずその服ですね。こちらでは見ない造りですし、生地がなんなのか私でもわかりません。それに奴隷についての知識は子供でも知っていることです。知らないのは片田舎の村の子供か、蝶よ花よと育てられた貴族の娘くらいです。お客様はそのどちらにも見えませんでしたので」
「なるほど……」
『流れ人』ってのは割と一般的なのだろうか?
ってことは俺と隼人以外にも結構いるのかな?
「それで『流れ人』だとなにか変わるのか?」
「いえ。これで謎が解けてすっきりしました」
あれ? 流れ人だと何かルールがあるとか、奴隷を持つことが出来ないとかって話かと思ったらただの確認か。
「それでは細かく説明させていただきますね」
ヤーシスは先ほどの話を終わらせたようだ。本当に自分の中の謎をすっきりさせたかっただけなのだろうか? 多分違う気がする。
「奴隷には種類があります。借金奴隷、犯罪奴隷、あとは特殊奴隷でございます。すべての奴隷に共通して禁止されていることは殺人の強要と主人へ危害を加えることです」
借金はわかる。犯罪もまあそういう刑があるのだろう。
特殊奴隷については……ちょっとわからない。
「まず借金奴隷ですが、房事、戦闘、殺人の強要は禁止されています。それから無茶な労働もです。もし破った場合は罰則が御座います。これらは契約の際に設定されますので違反があれば隠し通すことはできません」
「ってことは奴隷化ってスキルかなんかなのか」
「ええ。
割としっかり人権は守られているんだな。
まあそうか。街で鞭打たれながら働かされている奴隷なんて見たことないしな。
「借金奴隷と言っても元の生活より幾分かましな生活になることが多いので、多くの奴隷が解放されずに働き続けることを望んでおります。家族のほうもそれがわかっているのか買い戻すようなことはしません。元から借金苦なのですから買い戻すとなると何年かかるかというのもあるのでしょうが」
「客層はやっぱ貴族が多いのか?」
「いえ単純に労働力として商人なども購入する場合がございます。ですが借金奴隷の衣食住は主が保障しなければなりませんし、もし奴隷が早期に亡くなった場合は詳しく調査されます。ですので食事は少なくても2食は保障されていますし、病気になれば休ませなくてはいけません。奴隷としてはやはり貴族様に購入されるのを望まれる方が多いですが、貴族様からの人気は少ないですね」
貴族、奴隷と聞くと容姿のいい女性を多く買うイメージだ。
なぜだろう。貴族が奴隷を買うといいイメージがわかないのは。
「ちなみに解放するとしたら条件はどうなるんだ?」
「そこは買った者の裁量に任されています。ただ犯罪奴隷ですと国から調査が入ります」
なるほど。ある程度貢献したと思えば解放してもいいのか。
ただ犯罪奴隷は主の一存じゃダメか。
まあそりゃそうだよな。
「さて犯罪奴隷ですが、犯罪奴隷には先ほどの権利の殆どが適用されません。それにお売りする際はその罪を購入者に告知せねばなりません」
「殆どってことはある程度は保障されてるんだろ?」
「ええ。ですが犯罪の強要は当然禁止です。そして男の場合は労働時間に制限を設けません。睡眠時間と最低一食は保証されていますが、それ以外は購入者の裁量に任されております。女性の場合は娼婦になるものがほとんどですが、別名掃除部屋と呼ばれるような大衆店へと送られ、生活も保障されていません」
おおう……犯罪奴隷には結構厳しいんだな。
「犯罪奴隷には購入者を選ぶ権利もございません。その代わり売却値が安いので使い潰す前提で買われていく方がおおいですね」
……買うほうも買うほうで大概だな。
だけど需要はあるのだろうな。激務なんてどの世界でもあるもんだ。
「最後に特殊奴隷ですが、貴族や、王族、それ以外の特殊な理由で奴隷になられる方の場合ですね。今回のアイナ様も特殊奴隷になると思われます」
ほう。アイナさんもか。って
「あれ? っていうかアイナさんがどうしてこうなったか話したっけ?」
「ええ。実はレインリヒ様より朝一番にお聞きいたしました。ですがこのことをあのお二人にお話しすると根回しと思われそうであったので黙っておりました」
「お、おー……」
「レインリヒ様より公平にと承っておりますのでご安心ください」
それはよかった。
レインリヒのことだからヤーシスにも圧力をかけられるのかと思ったわ。
「お話を続けてもよろしいでしょうか?」
「ああうん。お願い」
「特殊奴隷には従属契約と自由契約が選べます」
「従属と自由?」
「はい。従属は基本的に主人に付き従い寝食を共にしますので、生活を保障せねばなりません。ですが、自由契約の場合は関係上は主人と奴隷でありますが、奴隷は今までどおり生活し必要な時に前もって連絡をして命令をする形になります。急な命令の場合などは奴隷の用事が優先となりますし、理不尽に続く命令の場合は拒否することも可能です」
聞いた感じだと自由契約のほうは使い勝手の悪そうな使い走りみたいだな。
でも生活を保障しなくていいのは楽だ。
今は住まいもないし、アイナさんとの契約はこの自由契約でいいんじゃないだろうか。
「自由契約の場合は一度の命令に対して値段を相談の上に取り決め購入金額分を稼いだら解放となります」
なるほど。
ってことは乱用もし辛くなるな。
「次に貴族や王族ですが、彼らが特殊な理由は値段です」
「値段? 高いとは思うけど、買うとしたら金持ちの貴族とかだろ?」
「ええ。貴族や王族を購入されるのは同じ貴族の方が大多数ですね。たまに大商人が自身に箔をつけるために購入される程度です」
「だろうな。そもそもなんで貴族が奴隷になるんだ?」
「お家騒動などで責任問題が起こって奴隷落ちする場合もあれば、犯罪を起こして王国から勅令で奴隷落ちする場合もありますね。ですが貴族の場合は奴隷商人が責任を持って相手を選ばねばなりません」
「どういうことだ?」
「……以前とある貴族が奴隷となった貴族を購入しました。そのことは広く知られていたのですが、一ヵ月後その奴隷は亡くなりました。死体には酷い暴行の跡があり、部位欠損も起こっておりました」
うわー……えぐいな。
「その奴隷は貴族からの求婚を断っていたのです。勿論彼女は貴族の奴隷となることを断りました。ですがその貴族は残った家族を人質に彼女に奴隷化を迫り、あのような事件が起こりました。それ以来貴族や王族を所有する奴隷商人には監督責任というものが生まれました。背後関係を調べたり、貴族間での仲の良さを調べることで事件を未然に防ぐことにしたのです。もし貴族が圧力をかけてきた場合は王国によってその貴族は御取り潰しとなります。勿論奴隷商人にも罰則はございますので、手を抜くようなまねは出来ません」
なるほど。その分値段も高くなるってことか。
下手に安くして変な奴に買われても自分が困るもんな。
「なんか、奴隷商人も大変なんだな……」
わがままな貴族の娘とかも来ることがあるだろうに、そういった場合の気苦労は考えただけでも忙しさで倒れそうだ。
「いえいえ。奴隷商人であれば一人や二人信頼の置けるお客様はいらっしゃいますから、まずその方に打診できますしね。お客様ももし御所望でしたらお申し付けください」
「……あってまだ二日なんだが?」
「率直に申しますとただの勘です。ですがこれは商人の勘が問題ないと告げております。私はいままでこの勘に頼りこの街で一番の奴隷商館を作ることができました。ですので私は自分の勘とお金だけを一番信用しております」
勘って……。
そういえばアイナさんも勘で大丈夫とか言ってたな。
コンコンコンコンと4度扉を叩く音が聞こえ、ウェンディさんとアイナさん、ついでにソルテが戻ってきた。
「終わったようですね。丁度いいので、ウェンディもこちらに座りなさい」
「承りました」
そういうとウェンディさんは俺の正面に、アイナさんとソルテは両脇に座るが、ソルテが何もしゃべらずうーとかあーとか口から漏れている。
アイナさんもぽーっと顔を紅くしたままどこか上のほうを見つめていた。
「アイナさん?」
「いひゃあ! な、なんだ主君!」
アイナさんらしくない奇声をあげて慌てながら返事をするアイナさん。
一体奥の部屋で何があったんだ……。
「それでは見せてください」
ヤーシスがウェンディさんから書類を受け取ると、胸ポケットに入っていた眼鏡をかける。
上から下まで斜め読みかってほど早く読み上げると、その紙を机に広げて向きを変えて見せてきた。
「文字は読めますでしょうか?」
「えーっと、うん。大丈夫みたいだ」
異世界の文字って読めるんだな。
普通読めないとか書けないもんだと思うんだけど。
でもしっかりはっきり読み取れた。
「それはよかった。まずはアイナさんのご説明から、アイナさんは家事は△戦闘が〇、房事も〇となっております。容姿もよく、房事は未経験でスタイルも抜群の為従属契約で3500万ノール、自由契約で600万ノールといったところでしょうか」
アイナさんとは特殊契約だからな。まあ自由契約の予定だったし、丁度いいくらいか。
「結構ふり幅があるんだな」
「ええ。房事が〇の場合従属契約と自由契約では大きな差が生まれます」
なるほど。従属なんてしたら求められるだけ求めてしまいそうだもんな。
まあでもそれは従属の場合だし。
自由契約にしたい俺には関係ない話だ。
「次にソルテさんですが家事が×戦闘は〇で房事が×となっております。容姿は良いのですが、スタイルは正直申しまして年齢の割りに未成熟です。房事も×のため従属で1000万ノール、自由契約で400万ノールといったところですね」
従属契約での大きな値段の差は容姿とかではなく房事が〇か×かが大きいとのこと。それでも自由契約ではそこまで差が付いていない辺りどれだけ重視されているんだ。
それにしても600万と400万か。
あわせて1000万なのはレインリヒの入れ知恵も混ざっているのだろうか。
でもこれで材料調達のめどが立つ。
あとは家の購入費を貯めて奴隷を購入し、農業スキルを活かして自給自足の生活を従業員に任せればいい。
仕事は従業員に任せて俺はお小遣いスキルを使って散策三昧だ! 当然町の中を。
「ちょっと待て。年齢の割りにってソルテはまだ子供だろう?」
見た目どう見ても10代だ。しかも前半から中盤の。
「いえいえ。彼女はもう成人済みですよ?」
「は?」
いやいやいや。
身長も小さいし顔も幼いし胸なんてぺったんぺったんだぞ。
ウェストなんてくびれてるんじゃなくて痩せてるってだけで、強いて言えば尻から見える尻尾の毛並みがいいことくらいだろう。
「人狼族は成熟してもこのくらいの身長なのです。ですがその中でも特に、胸が小さいですね」
「いやでも小さいにしたって子供っぽすぎないか?」
「ええ。小さくてもこれで立派な大人なのです」
「うっさいわね! さっきから聞いてればちっちゃいちっちゃいって! 胸なんて戦闘の邪魔なのよ! どいつもこいつも胸胸胸! 大きくったって冒険じゃ邪魔なの! アイナなんか胸が大きくなるたびに鎧を変えるんだからお金の無駄なの! わかる?」
お、おう。
放心してたんじゃなかったのか。
あーとかうーとかずっと言ってたくせに小さいって言葉に過剰反応してんのか。
だから俺はこんな言葉をお前に送ろう。
「ひがみか?」
「ガウ!」
いってえ! こいつ腕に噛み付きやがった!
やっぱ子供じゃねえか!
おいやめろ放せ! 俺のHPは低いんだよ!
「ソルテとは仲がいいのだな……」
「ちなみにアイナさんは炎人族でしょうか?」
「そうだ。正式には半分だけ炎人の血が混じっている」
「なるほど。灼熱の申し子の血族であられましたか」
「……今はただのアイナだよ。私は人としていままで生きてきたからな」
アイナさんが物憂げな表情になった。
察するになにかあるのはわかる。だが
「痛えっての! そろそろ放せ犬っころ!」
「ガウガウガウガウガウ!(私は犬じゃない! 狼だ!!」
「何いってんのかわかんねえよ! あ、ダメだ。ふらふらしてきたかもしれない」
あーもう! こいつマジでただの子供だろ! むしろ餓鬼だ! 年相応どころかまだ低学年レベルだろうが!
「わかった! 悪かった! だから放せ! 放してくださいお願いします!」
「ガウー……次いったら噛み切るから!」
フーフーあー痛え。すっかり噛み跡がついてるじゃねえか。
「んで、炎人族だっけ? それって皆アイナさんみたいに髪が真っ赤なのか?」
「ええ。真紅の炎髪は炎人族の証と言われていますね。ですが髪が赤いだけでは炎人族とは限りません」
「そっか。でもアイナさんは炎人族で良かったな。すげえ似合ってる」
アイナさんのきりっとした表情に紅い髪がよく似合う。
正直他の髪色だとなんかしっくりこない気がするのだ。
「そ、そうか。怖がられる事のほうが多いのだがな」
過去に何かあったー……的な話だな。
きっと炎人族が忌み嫌われていたり、曰くつきである可能性が高い。
だが俺はそれを知らないし、炎人族の血を引くアイナさんを見て馬鹿真面目の堅物ないい女としか思わない。
「さて、それでは話を戻して
「ああ、できれば今日中に済ませておきたい」
「ではまず契約内容を双方でご確認を」
特殊奴隷のルール決めってことか。
「契約方法は自由契約でかまわない。アイナさんは冒険者だし、無理に従属してもらう必要もないだろう」
それに普段どおりに生活できるなら、俺が襲われる可能性も下がるだろう。
万が一襲われた場合は護衛がいないので一発アウトだが、まあその可能性は低いと見る。
しっかりとアイナさんはともかくギルドからは説明をされているだろうし、万が一何かあればレインリヒが黙っていないとわかるはずだ。
まじ守護神レインリヒ様。威光に逆らえないね。
「いやしかし……」
「従属されたら正直色々持たないと思う。特に理性とか」
この言葉にアイナさんは顔を真っ赤にしてうつむいた。
いったい奥の部屋で何があったっていうんだ。
「自由契約ですね。その場合PTメンバーからの同意を」
「もちろんおっけーよ! 今までどおり冒険が出来てこいつの毒牙からアイナを守れるなら当然でしょ?」
誰の毒牙だこら。毒どころか病気すらないわ!
「
「うん。今は二人ね。あと一人いるんだけど今は用事でしばらくPTを抜けてるから」
「ではメンバーからの同意条項は大丈夫ですね。次に返済方法ですが」
「それは普通に材料の買取値段でいいんじゃないか?」
「ですね。販売価格は相場の末端価格ということで。では他に要望などはありますか?」
「特にない。あ、待った! 材料収集を頼んでいるとき以外でのレア素材を見つけた際に優先的に俺に売ってほしい」
まず俺は冒険に行く気がないから、レア素材なんかと出会いにくいだろう。
とりあえず持ってきてもらって活用方法が見つからなければ他所に売ってもらえばいいのだ。
「当然かまわない。大丈夫だよねソルテ?」
「ええ。いいわよ」
「それで……その、房事の方はどうしよう」
「あー……」
いや聞かれても困る。
正直、正直に言えばあったら嬉しい。
でもそれを俺の口から言ってしまっていいのだろうか。
立場を笠に着て強要しているように思えるのだ。
いや、本当、あるなら嬉しいんですけどもね! ほら! 俺も男の子ですから!
「んー……任せる。もし別にかまわないって思ったら……ってことで」
逃げました!
相手に任せます! 無理です!
「そ、そうか。うん。そう言ってくれるなら嬉しい」
やはりアイナさんも不安だったのだろう。
未経験だって言ってたしな。
こういうのはちゃんとしないといけないと思うしね。
「では以上の条件でよろしいでしょうか?
「おう」「はい」「もちろんよ!」
これで契約か。
しかし、念書とか同意書とか書かなくていいのだろうか?
「どうすればいいんだ?」
「片手を差し出して重ねてください。アイナさん、ソルテさん、そしてお客様の順番でお客様を一番上にお願いします」
「私も? こうでいいの?」
言われたとおりに重ね合わせる。
ソルテの手の甲に触れるとむっとされたのだが仕方ないだろう……。
「それでは、この契約をラシアユ王国の名の下に宣誓致します」
《
ヤーシスが手をかざすと俺の手の甲に光が走る。
痛みはないが、その光はまっすぐに俺たち三人の手を貫いていき、一度大きく輝くと収束していった。
光が収まり、手を見ると何かの紋様が刻み込まれている。
「なんだこれ。タトゥー?」
「ラシアユ王国の紋章でございます。この印が正式にラシアユ王国の名の下に宣誓された契約であることを示し、奴隷を所持している証となります」
ラシアユ王国? は知らないが要するにちゃんとした契約だよ。ってことだろう。
「特に何もないんだが……本当に私は奴隷になったのだろうか?」
「ええ。試してみますか?」
「ああ……どうすればいい?」
「では主を殺そうとしてみてください」
は?
っておいソルテてめえ嬉々と槍を抜いてんじゃねえ!
殺す気まんまんじゃねえか!
「その首もらっワオオオオオオオオン!? 痛い痛い痛い! 頭が痛いー! なんでなんで!?」
突然ソルテが槍を手放し両手で頭を抱えるとその場でごろごろと転がり始める。
「奴隷が過度な暴力や、殺意を主に持つと強制的に罰がくだり、ストップがかかります。主の方も許可していないことを行うと罰として頭痛でこうなるのでお気をつけください」
「どうして私まで! 私はこいつの奴隷じゃないのに!」
「いえ……登録していますが……。確認したじゃないですか。自由契約の場合はPTメンバーの方も縛られますって」
「言ってない! 絶対に言ってないから!」
「そうでしたっけ? ですがもう宣誓してしまいましたしね。取り消すには借金分の1000万ノールを払い終わらないと無理ですよ」
一瞬パチリとこちらに目配せをするヤーシス。
……こいつわざとやったな。
だが助かる。これでソルテに襲われる心配もないだろう。
「ワオオオオン! いつか絶対痛い痛い嘘です! 殺す気なんてないです!」
この犬こりねえ。
「こいつからの買取を拒否し続けたら一生このままか?」
「ええ勿論」
「よし、いいことを聞いた」
「ちょっと! 嘘よね? 冗談でしょ? 一生あんたなんかの奴隷なんて嫌よ!」
「態度次第だ犬っころ。次殺そうとしたらまじでそうするからな」
「クウン……。わかったわよ。あんたがアイナに変なことしないなら殺そうとしないわ」
「しないってか、材料収集を頼むだけだって……。それにアイナさん次第だって契約で決めただろうが」
「そっか。そうよね。アイナがあんたなんかに許すわけないし。ならいいわ。せいぜい良い物を取ってきてすぐに終わらせてあげるんだから」
「はいはい。期待して待ってるよ」
「……やっぱりソルテとは打ち解けてるように見えるのだが」
こうして無事に契約を終えることができた。
次に待ち受けるのは冒険者ギルドか。
どちらにせよ冒険者ギルドのギルドマスターには報告が必要だろうし、レインリヒからのお使いもあるのでその時に済ませてしまおう。
「それじゃあ二人ともこれからよろしく」
「ああ。こちらこそよろしく頼む主君」
「私はご主人様なんていわないわよ! あんたなんかあんたで十分でしょ!」
別にかまわないが、こいつにはご主人様と呼ばせたくなるな。
いや、いつか必ず嫌がらせで呼ばせよう。
16時投稿間に合わなかった……。