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1-11 異世界生活 困ったんですけど

「お断りいたす!!!」


どうよ? 美人が遊び半分で告白してきたから振ってやった系男子の気分だぜ。

ワイルドだろ?


「なぜだ? 理由をきいてもいいだろうか?」


えー……。

いやだって、重いし……。

なんて正直に言えねえよ!


「いやー……俺としては平穏を望んでるわけで、紅い戦線(レッドライン)って多少なり名が知られてるんでしょ? そんな人を奴隷にしたら冒険者ギルドで何言われるかわかんないし……。最悪闇討ちなんてこともありえそうだし……」

「それは大丈夫だ。ちゃんと説明もするし、もし危険が迫るようなら私が君を守ると誓う」

「ええ……なんで説得に動いてるの? 奴隷にされちゃうんだよ? 俺の。わかってる?」

「ああ勿論だ」

「えー……」

「ちょっと! あっちがイヤだって言ってるんだから無しでいいじゃない」

「それでは彼への責任が果たせないじゃないか」

「堅物! クソ真面目! ほんっとうに頭が固いんだから!」


全くだ。頭固すぎるだろう。


「なんだい。あんた奴隷のことを聞いてきたんだから興味はあるんだろう?」

「そりゃなくはないよ? 最終的には数多くの奴隷を買うつもりだし」

「ならいいじゃないか。貰える物は貰っときな。困ったら売ればいいんだ」

「でも俺が奴隷を求めてる理由は俺が楽するための従業員だし、冒険者の人に農業させるってのも宝の持ち腐れだろう? それに、その、こんな綺麗な人を自分の手で奴隷に落とすってなるのは……その、ちょっと心苦しい……」

「綺麗? って私のことか? そう言われたのは初めてだな」


頬に手を当てて顔が紅く熱くなるのを隠しているのか確かめているアイナさん。

え、チョロインさんなの?

いやいや。まさかそんな……まさか。

いらないから! 大丈夫です本当に。

そんなハーレムの幕開け的なの求めてない!

そういうのは隼人のPTだけでいいでしょ。

俺は違うから! 本当、違うから!


「なら尚更いいじゃないか。精を吐き出すなり、欲のまま貪るなり、肉に溺れるなり好きにしなよ」

「それ全部一緒だよね! ってか人をそんな性欲魔人みたいに言うんじゃねえ!」


ちらりとアイナさんを上から下まで舐め回すように観察してしまう。

そして当然戻り際のボリューミーさんに目が止まった。

そしてアイナさんは視線に気がつくと、顔を紅くして背けてしまう。

可愛いなーおい! お、これが本当の紅小娘って誰がうまいこと言えと。

……失礼。少々のぼせてるかもしれない。


「ちょっと! アイナのこといやらしい目で見ないでよ! 変態! 痴漢! 性欲魔人!」

「み、見てないですし!」

「見てたじゃないいやらしい目で全身舐め回すように!」


はいその通りです。ソルテさんよく見てらっしゃいますね。

だって見るでしょ! 見るくらいいいじゃん!

何? この世界でも見てるだけで犯罪者扱いなの!?

お願いだから性欲魔人を定着させないでください!


「最低! ほらアイナこんな男絶対だめよ! なにもかもされちゃうわ!」

「と、とにかく。その、ほどほどに……な?」


なにをほどほどなんですか!?

ほどほどなら何をしていいのですか!?

俺は残念ながら性欲を抑えてるだけで難聴系主人公ではないし、欲望に忠実系なんで、すが、って危ない! いつの間にか奴隷に貰う予定で思考が固まってしまった。


「それならさ、あんた材料収集なんかを任せるのはどうだい?」

「え?」

「だから薬体草とかだよ。別に四六時中一緒にいなきゃいけないわけでもないし、採集とかをこいつに頼めば材料費はただじゃないか。それに弱いあんたが危険な場所に取りに行かなくても手に入るなんて理想だろう?」

「そういうのアリなの?」

「当たり前さ。手の届かない所で働かせてもいいんだよ」

「なるほど……」

「それにあんたはてんで弱っちいんだから護衛として使うのもいいじゃないか」

「まあ外に出る予定は全くないから街の中での護衛になるけど……いや、でも……」

「はい。じゃあ決まりだね。まあ立場は変わらないんだけどね」


ん? いまぼそっと結局変わらない的な事を言わなかった?


「そ、そうですな。とりあえずこの件はこれで終わりですかね……」

「随分疲れた顔してるね? まあ次がないことを祈るよ」

「いえいえ……これからは徹底させますので……」


え、え? 決まっちゃったの?

これで決定なの?

アイナさんいいの? 本当にいいの?


「今日は遅いから明日の朝また来ようと思う。そしたら一緒に奴隷商館に行こう。えっと、主様? それともご主人様かな?」

「私も行くから! 絶対にアイナをあんたなんかに渡さないんだから!」

「ソルテ。えっと、こちらのご主人様なら大丈夫だよ。見るからに人のよさが溢れているだろう」

「そういう奴ほど危険なの! アイナは騙されやすいんだから気をつけないとダメよ! 奴隷になんてなったらきっとこの性獣に……ダメよ! 絶対ダメなんだから!!」

「そうかな? 私の勘が大丈夫だって言ってるんだが」

「勘でしょ勘! とにかく私も明日は来るからね!」

「あ、はい。ではお待ちしております」


あれ、これでいいんだっけ?

なんか気になったところがあったような……。


「あ、そうだ! あの冒険者とその受付嬢の子はやめさせないでください」


そうだよそう。思い出した。

当事者だった冒険者がギルドから追放されてたんだ。

この流れだと俺のせいにされて闇討ちギャースされそうだって思ったけど、後の衝撃が強すぎて忘れてた。

それにこれからも冒険者ギルドに顔を出す機会はあるんだろうし、ここは是非恩を売っておきたい。


「え、ええ。そちらがよろしいのであればかまいませんが……」

「もちろん。今回は紅い戦線のアイナさんが責任を持ちその責を負ったのですから彼らの罪は放免という形でいいでしょう。それにその冒険者がアイナさんの仇だとかって闇討ちされても困りますしね。ただ詳細の説明は皆さんからしっかりと頼みます」


「ああ、お父さん!」

「おおフィリルよ!!」


受付嬢とギルドマスターって親子なの?

いきなり抱き合っておいおい泣き始めたんですけど。


「よかったな二人とも……」


え、アイナさんまで涙を流してる。


「アイナさん本当に申し訳御座いません……」

「ごめんなさい。本当は私が奴隷になるべきだったのに……」

「いやいいんだ。これで二人に恩を返せる。結婚式、近いのだろう?」


あーそういうことか。

アイナさんは二人に恩があって、フィリルさんは近々結婚する予定だったと。

なるほど。余計に奴隷として扱いづらいじゃねーですか。

感情OFFスイッチどーこー? 教えてレインリヒさん。


「情で訴えかけても撤回なんざしないからね」


ヒュー。流石冷徹冷血の師匠レインリヒ様だぜ。

そこに痺れるが憧れはしねえ。普通に鬼だ。

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