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第7話 酔いどれ赤ずきん

 何故こうなってしまったのだろうか…。いくつもの空き缶の上で白目を向いて気絶しているシンデレラ。そしてもっと問題なのは赤ずきんだろう…。


「大松さん、本当のことを言ってくれよ…。」


 赤ずきんの右肩からワンピースがずれ落ち下着が見えそうになっているが大松に気にしている余裕はない。頬を赤らめ上目遣いで大松とキスができるほどの距離に顔を近づけている赤ずきんをどう対応すればいいのかもうそれしか大松の頭にはない。


(いったい僕はどうすれば…。)


 ~飲み会が始まって30分後~


「…。ヒクッ…。ヒクッ…。」


赤ずきんから飲み会では聞きたくない酔っ払った時の号砲が聞こえた。次に赤ずきんは首を回し始めた。


「これは…赤ずきんさんの上戸ルーレットですの。」


女の子座りをし、ビール缶を片手に持ったシンデレラが深刻そうな面持ちで赤ずきんをガン見した。


「シンデレラさん…。その上戸ルーレットってなんですか?とても嫌な予感がするんですけど」


「上戸ルーレットというのは『泣き上戸』『怒り上戸』『笑い上戸』などの種類の上戸から赤ずきんさんがどれになるかを決めているルーレットですの。」


「それって!全てハズレのロシアンルーレットみたいな物じゃないですか!?」


「私も赤ずきんさんがお酒に弱いことすっかり忘れていたんですの!」


シンデレラと赤ずきんの2人がお酒に弱いなんて大松にとって最悪な状況だが、シンデレラは大松の忠告を守って今回はセーブしてくれていたらしく全く酔っ払っていない様子だ。


「何が出るかによって共にこの危機をくぐり抜けましょう!」


「了解ですの!!」


赤ずきんの首の回転が止まり、頭の上から湯気が立ち上った。


「なんで…。なんで…アタイには彼氏が出来ないんだよ~。うわぁぁぁん~~!!」


赤ずきんの目から大粒の涙が、そして口からは男ができないと文句が発射された。どうやら今回は泣き上戸のようだ。泣き止まない赤ずきんにシンデレラが特攻を仕掛ける。


「赤ずきんさん!!男なんてクズばっかですの!」


「シンデレラさん!慰め方が真逆ですよ!」


大松がツッコミを入れるがシンデレラの真逆の慰めは止まらない。


「最初は、平和で皆が平等に暮らせる国を作りたいなどと言っていたんですの。でも男なんて直ぐに考えが変わるものですの!急に隣国と戦争をしだして…。本当に男はクズですの!!」


いったい何の事を話しているのか全く分からないが、男のクズポイントを上げている。だが、これで大人しくなる赤ずきんではない。


「クズ男でも、結婚はしてたんだろ…。ヒクッ…。私は結婚の『け』の字!いや!彼氏の『か』の字もないんだよ!!うぇ~~ん!!」


やはり、シンデレラの発言は火に油を注ぐだけだった。


「こうなったら男目線で褒めるしかないですの!!大松さん!」


「えっ!?ここで僕の出番ですか!?」


シンデレラからの急なパスに心の準備が出来ていない。こうなったら当たって砕けろの精神で行くしかないと大松は覚悟を決めた。


「そうですね…。赤ずきんさんはとても明るくて、スタイルもいいですし…。何よりとても綺麗ですし…。」


大松はこの数時間で赤ずきんから感じた事を素直に述べたが、赤ずきんがこんな薄っぺらい言葉で喜ぶはずが…。


「そんなこと言われても…。別にアタイは嬉しくねぇからな…。」


赤ずきんの顔はより一層に火照りだし、体をモジモジさせ出した。


(まさか…。これは…、ツンデレだとぉぉぉぉおお!!)


これなら行ける!!大松はどんどんと赤ずきんの事を褒めて褒めて褒めまくった。褒めると同時に赤ずきんの顔もどんどんと火照ってくる。


「だがら…。そんなに言われても嬉しくねぇからよ!!」


赤ずきんは嬉しさが抑えられないのか右平手打ちを急に放った。


(これに当たれば死ぬ…。)


そう直感で感じた大松は頭を下げてギリギリ避けたが、後ろで大松を応援していたシンデレラの左頬にクリーンヒットした。シンデレラは『ヘブシッ!!!』と謎の言葉を叫びそのまま吹き飛ばされ空き缶を積み上げていた所にダイブした。


「シンデレラさん!しっかりしてください!!」


シンデレラはいくつもの空き缶の上で白目を向いて気絶している。


(何故、楽しい飲み会がこうなってしまったのか…。)


右肩からワンピースがズレ落ち下着が見えそうな赤ずきんが上目遣いで大松に寄り詰める。


「大松さん…。本当のことを言ってくれよ…。」


赤ずきんの目は今にもまた泣きそうな瞳をしていた。


「全て本当のことですよ!お酒を飲んで酔っぱらっちゃうのも可愛いですし!何よりツンデレの所が可愛いです!!もう全部可愛いです!!」


「大松さん…!!あんたって奴は…さい…こ…。」


大松の可愛い責めにあい我慢の限界まで達した赤ずきんはそのまま言葉を最後まで言わずに倒れるように寝込んでしまった。


「全くしょうがないですね…。赤ずきんさん。」


大松はシンデレラの部屋にあった毛布を赤ずきんにかけ、シンデレラをベットに寝かせてから部屋へと帰宅した。


~翌朝~


大松は心配になりシンデレラの部屋を尋ねると2人は起きていた。


「大松さん。おはようございますですの。」


「おはような!大松さん。」


2人は何もなかったようにケロッと起きていた。


「まさか…。昨日のこと覚えていないんですか!?」


「覚えているですの。」


先にシンデレラが応えた。


「たしか…。大松さんが赤ずきんさんを慰めようとして…。あれ?そこでたしか私は強い衝撃に襲われてどうなったんですの?」


「なんだよ?強い衝撃って?アタイは何も覚えてないからよ。何がなんだか。」


「嘘だろ…おい…。」


自分の頑張りは何だったのだろうと泣きたい気持ちと昨日の言葉責めを墓場まで誰にも話さず持っていくと決めた大松であった。




























 






 


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