023 VS鎖縛りの骸骨
攻略を開始してから数分後。
俺たちの前に、2メートルを超える全身を鎖に縛られた骸骨が現れた。
手には武骨な棍棒が握られている。
「ステータス」
そう唱えると、目の前にメッセージウィンドウが出現した。
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【鎖縛りの骸骨】
・討伐推奨レベル:28
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チェインドスケルトン。
動きが鈍重な代わり、防御力に優れた魔物だ。
アンデッドはただでさえ物理攻撃に対する耐性が高い。
会心斬撃のスラッシュでも、倒すには複数回命中させる必要があるだろう。
だが、今の俺にはアンデッドと戦う上で最高の仲間がいる。
シュナに視線を向けると、彼女も敵のステータスを確認していたのか、緊迫した面持ちで口を開いた。
「なんて迫力……レベルも28だし、今すぐに引き返した方がいいんじゃ……」
「いや、問題ない。想定通りの相手だし、一撃で仕留めよう」
そう返すと、シュナはきょとんとした表情を浮かべる。
「い、一撃で? ゼロスのレベルって24だったはずだよね? あっ、それとも何か特別なスキルを持ってるってこと? すごいなぁ、ゼロスは……」
「いいや、アイツを倒すのは俺じゃなくてシュナだ」
「……へ?」
何を言っているか分からないとばかりに固まるシュナ。
その直後だった。
「ギィィィイイイイイ!」
ここまで間合いを測っていたチェインドスケルトンが、雄叫びを上げながら迫ってくる。
俺はすぐさま地面を蹴り、敵に向かって駆け出した。
そんな俺に向かって、チェインドスケルトンは勢いよく棍棒を振り下ろす。
「パリィ」
「ッ!?!?」
だが、俺は軽く敵の棍棒を弾いてみせた。
そもそもコイツとのレベル差はたったの4だし、今の俺には【守護者の遺剣】によるパリィ時の斬撃威力+15という恩恵がある。
この程度なら朝飯前だ。
俺は振り返ると、シュナに向かって叫ぶ。
「とにかく、聖属性を付与したマジック・ミサイルを準備して、俺の合図で敵に放ってくれ! 時間なら俺が稼ぐ!」
「――ッ! わ、分かった!」
戸惑いつつも、俺の指示に従い魔力を練り始めるシュナ。
「――グゥ!?」
その瞬間、チェインドスケルトンは血相を変えシュナに顔を向けた。
アンデッドにとっては弱点である聖属性の気配を感じ取ったからだろう。
だが、
「悪いが、シュナの元には通さないぞ」
「――ァァァ!?」
力ずくで通ろうとしてくるアンデッドを、パリィやテクニックを駆使することで凌いでいく。
そして、戦闘開始から約十秒が経過したタイミングだった。
「準備できたよ、ゼロス!」
彼女の前に浮かぶのは、眩い輝きを放つ、巨大な純白の光球。
それを見た俺は、機を見計らってチェインドスケルトンから距離を置いた。
「よし。今だ、撃て!」
「――セイクリッド・ミサイル!」
放たれた聖なる砲撃は、真っ直ぐチェインドスケルトンに向かっていく。
回避を試みるチェインドスケルトン。
ただ奴の鈍重さが災いしてか、全く間に合わなかった。
結果、聖なる砲撃はそのままチェインドスケルトンの胸部に着弾。
そのまま敵の体を貫き、粉々に打ち砕いた。
「ア、ァァァ……」
断末魔の声を零しながら、チェインドスケルトンは瘴気となって消滅していく。
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
『ステータスポイントを2獲得しました』
うん、討伐完了だ。
レベルも上がったし、理想的な立ち上がりと言えるだろう。
「よくやった、シュナ。おかげで簡単に倒せ……」
「…………ほ、本当に一撃で倒せた? 格上の魔物を、私が?」
労いの言葉をかけようとするも、シュナはこの状況に困惑しているようだった。
俺はそんな彼女に向かって簡潔に状況を説明する。
「そう驚くことじゃない。アンデッド系に魔法は効果的だし、聖属性なら弱点をつくこともできる。今はまだスキルレベルが1だから、倍率としては30%しか加算されないが、それでもあの程度の敵を倒すには十分だ」
そもそもマジック・ミサイル自体、格上の相手に放つことを想定された高火力な魔法である。
安全を最優先に考えるパーティーだと、格下しか現れないダンジョンにしか挑戦しないため、燃費の悪さが目立っていたのだろうが……
使いどころさえ間違えなければこうして格上にも通用するし、効率的に経験値を稼ぐこともできる優秀なスキルだ。
俺も近いうちに習得するつもりだし。
「それで、レベルは上がったか?」
「レベル? ……う、うん! 上がってるよ、一気に3つも! こんなこと初めてだよ!」
驚きと嬉しさが入り混じった顔で、シュナはそう伝えてくる。
経験値は戦闘における貢献度が高いほど、配分が大きくなる。
バフやデバフ、回復なども含めるため計算式はかなり複雑だが、一番わかりやすいのはどれだけのダメージを与えたか。
シュナに攻撃役を任せた甲斐もあり、目論見通り、一気にレベルアップしてくれたようだ。
俺は微笑みながら、彼女に向かって力強く告げる。
「よし、それじゃこの調子で30程度まで上げるか」
「……へ? さん、じゅう?」
どうやら今度は驚きが勝ってしまったようで、シュナは再びぽかーんとした表情に戻るのだった。
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