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島の構想

「アルー・・・うわっ酒臭っ!」

「うぅぅ。おはようエレン。痛っ・・・昨日は散々だったよ・・・」

「一体何があったのじゃ?アルは酒が苦手であったが、飲まされたのか」

「いやっ・・・カレンが」

「あの蟒がどうかしたのか?」

「実は────」


あの後、館の用意した部屋に彼を案内したあと、改めて子どもたちの雇用に関して話を行った。すると、プレズモさんは大喜びで父上から貰った葡萄酒の1本を開けて進めてきてくれた。しかし、お酒が得意ではないので、酒精香にあてられないよう、そよ風を起こしていると、料理を持ってきたカレンが割って入り、私が酒を飲むことができないことを伝えてくれた。すると彼は同じく父上から貰っていた葡萄の果実水を開け、それを一緒に飲み、王都であった父上との話の内容に花を咲かせた。相変わらずの父上で安心していると、隅に立っていたカレンに一緒に飲もうと声をかけた。そう・・・そこからは良かった。ただ、2人の飲む量が多くて、途中何度も魔法で葡萄酒と水を替えながら飲ませたけど効果は無く・・・そのうち私は、酒精にやられて寝てしまった。


「────と言うことなんだ」

「はぁ・・・彼奴は全く。で?こっちに寝てるのがプレズモじゃろう?もう1人の元凶は?」

「───へ?いないの?」

「部屋に入ってきた時にはもう2人しか居なかったのじゃ。それにしても、この酒臭さの中で大丈夫なのか?」

「あぁ。エレンの声で気が付いて、風魔法で自分自身を包んでいるからなんとか・・・」

「まったく・・・窓ぐらい開けないと駄目なのじゃ」


そう言って、窓を開けてくれるエレン。気持ちの良い海風が頬撫でる。


「んんー!この館の醍醐味の一つじゃな!」

「───うん。ここに建ててくれて感謝だよ」

「───あっああぁ・・・痛てて・・・。ん?おはようさんアル坊。それと・・・」

「エレンじゃよ」

「あぁ!エレン嬢か。ありゃ?カレン嬢は?」

「わからないんですよ。それが───」

「───なにやら良い匂いがするのぅ」

「───あれだけ飲んだのに、すぐ動けるのか。あの嬢ちゃんは」

「───忘れがちですが、彼女神獣ですから」

「ヒトの尺度でものを語っちゃ駄目って事か」

「ええ。神獣や精霊は底なしですから」


「魔力お化けが何を言う・・・」


「何か言った?」

「別にぃ───」


エレンが何か言ったようだったので、軽く問い詰めようかなと思ったら、カレンが朝食ができたと知らせてくれたため、その場はお開きとなった。勿論、色々と散乱していた部屋は«清掃»の魔法で綺麗さっぱり片付けてから出て行ったよ。後始末大事!





「さてと。プレズモさん」

「ん?」

「商業区の話ですが・・・」

「おぉ!やってくれるのか!」

「ええ。勿論」


朝食を食べ終わり、応接室にプレズモさんを案内して、一番の議題を話し合うことにした。まぁ彼は、朝食の内容──芋尽くし──に大層驚いてはいたけれど。


「それじゃぁよ!港からそう離れていない位置に、生鮮品を扱う市場を建てて欲しい。これが一区画目だな。その市場より奥には、日持ちする食品を扱う店を。これが二区画目。その奥に日用品を扱う店を。これが三区画目。最後に布や衣服を扱う店を。これが四区画目。ここは、海から風が吹いてくる。臭いが染みついては困るものを奥にしたいんだが・・・できるか?」


「そう・・・ですね・・・。まず港前は倉庫が多いので、そこを改築することで市場とします。雨を防げる屋根付きの常設市です。その倉庫を5繋げて、内部で第一区画と第二区画で分ければ良いと思います。三区画、四区画は市場前に道路を敷いていますのでそこで区切り、海側に三区画。山側に四区画とします。その周りに、宿屋や商館を建てて、事務所や統括。旅行者の受け入れとするのは如何でしょう」


「なるほどな。でもよう、日用品や衣類を扱う店に旅行者がくると、日常使いの導線と被らねぇか?」

「そうですね・・・では、四区画目の山側に住宅街を建てて・・・」

「そうすると治安維持が大変になるぞ?いまはまだストルネ提督の士官たちだけだからいいが・・・」

「治安維持に関しては、織り込み済みですよ。住宅街に敷く主要道路には詰め所を建てる予定なので。そして、その住宅街の奥に再度、三区画目と四区画目の商店を置けば、観光地価格と地域価格の差を作れるかと」

「成る程な。っというかよ。アル坊はこの島の位置づけをどうしたいんだ?」

「一応構想としては、穀倉地と観光地の二面性をもつ多角経営が可能となる島にしたいと思っています。幸い周囲にはまだ開発に着手していない島がありますので、環境を破壊することなく自然と共生できる開発をしていく考えです」

「ははぁん・・・まぁ森人族ならではの考えだな」

「まぁ人が住む以上は、環境改変は否めないので、保護区の制定も視野に入れていますが、自然は破壊したくないのです」

「おう。アル坊の考えはわかった。俺も伝を使って協力するぜ」

「────!ありがとうございます!」

「良いって事よ!」


そのあとも島の構想について話を続けた。朝から始めた話し合いは夕暮れまで続き、カレンとエレンに「昼食を抜くなんて」と呆れられてしまった。でも、考えを共有できるって、素晴らしいことだよね。

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