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火の大精霊

「キミは・・・誰だい?」


ストルネ殿と話していたところに割って入った謎の声。その正体は、岩の上に立っていた葡萄色のドレスを纏った少女であった。


「アルフレッド殿・・・」

「大丈夫です。敵意はなさそうです。今のところは・・・お任せいただけますか?」

「はい」


「なぁにをごちゃごちゃ言ってるのよ!早く応えなさいよ!」


「失礼。私はアルフレッド。隣はストルネ殿と申します。可憐な女性に話しかけられ光栄です」


「なにが可憐な女性よ!まだそんな年齢になってないわよ!」


「これは失礼・・・。ところで・・・お名前を伺っても?」


「そうね・・・応えて貰ったからには・・・ッ!」


「──ッ!危ないですよ?」


「チッ。外したか・・・」


「そこまで警戒なさらなくても。どうです?降りてきてお話しいたしませんか?」


「嫌よ!不審者2人と仲良くお話しなんて!」


「そうですか・・・それは残念です・・・。では、このままお話しを。貴女がこの辺りの魔核を?」


「マカク?────あぁ!火石ね。そうよ!あたしが全部食べたわ」


「なんと・・・それではこの少女は・・・」


「ええ。火属性の神獣・・・」


「おぉ!なんとまぁ・・・不死鳥の幼生体ではないか!珍しいのぅ」


「エレン!」


「あら。何者かがぴぃぴぃ喚いていると思ったら・・・子どもがお山の大将気取って・・・」


「カレン・・・それは言い過ぎ・・・」


「ねえねえ提督。どったの?」


「あぁ。プルーナ。どうやら不死鳥と呼ばれる種の子どものようなのだ」


「ほえぇ・・・」


「なんだか増えたわね・・・。そうよ!あたしは不死鳥よ!恐れ入ったか!」


「まったく・・・恐れを知らないとは嘆かわしい・・・」


「あはは・・・でも・・・親は何処に・・・あっ!」


「どうかされましたか?アルフレッド殿」


「あぁ・・・驚かないでくださいね・・・」


2人が不死鳥の少女と言い合いをしている時にふと、親がいない事に気付き上を見上げると、結界にへたり込んでいる親鳥の姿が・・・。そこで、結界を限定解除してあげると、ものすごい勢いで降りてきた・・・。結界も確り戻してっと。


「あちゃぁ・・・彼女の子どもか・・・」


「彼女とは?」


「げっ・・・彼奴が親なのか!?本当にそうなのか!?アル!」


「あら。久々ですね・・・。はぁ・・・今度は引っ付かせないようにしないと」


「──さまぁ!─────アルさまぁ!」


「あぁ・・・というか・・・何で彼女は結界を通過できなかったんだろっぷ!」


「アルさまぁ!お会いしとうございましたわ!」


「うっうん。それよりもさ、皆が見てるから離れて・・・」


「嫌ですわ!最後にお会いしたのは500年以上も昔なのですからっ!離れませんわ!」


「ヴェル!離れなさい!アルフレッド様にご迷惑でしょう!」

「そうじゃ!ヴェル!アルから離れるのじゃ!」


「アルさまぁ!アル様ぁ!」


「もう!はぁなぁれぇなぁさぁい!」


「うぐぅ!何をするのです!この無礼者!わたしくしは!わたくしは!」


「ったく!これだからたちが悪いのじゃっ!」


「えっえっ!?誰なのあの綺麗な女の人は?」


「彼奴はヴェル!ワシらの古馴染みじゃ!カレン!儂も加勢するのじゃ!と言うわけでもう暫く待ってるのじゃ!」


あぁ・・・厄介だ・・・。私が突き放すのは簡単なんだけど、そのあとが面倒だからなぁ・・・。




「───何をするのです!逢瀬を邪魔しないでくださいまし!」

「っ!離れなさい!ヴェル!いい加減にしなさい!」

「離れるのじゃ!ヴェル!」


「いーやーでーすーわー!」




「・・・ねぇねぇ提督あのヴェルって人さ・・・なんか」

「うむ。この状況を楽しんでおる」

「だよね・・・」


「──いい加減にしないと、アルフレッド様に嫌われますよ!」


「───それは嫌ですわ・・・アル様。わたくしのことお嫌いにはならないですわよね?」


「っ・・・ふぅ・・・。2人とも助かったよ。ヴェル。嫌うことはないけれど、正直言って人前であの様な振る舞いは淑女としていかがなものかと思うよ」


「うぅ・・・ですが・・・」


「久々に会えたのは嬉しいし、結界内に入れて舞い上がっていたのもわかるけど・・・迷惑をかけた5人に確り謝って。それから・・・以後気をつけてね」


「はい・・・カレン。エレン。それに後ろの普人族のお2人。ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでしたわ」


「ええ。謝罪は受け取ります。ただ、会う度にこうでは流石に疲れるので、アルフレッド様に引っ付くのは止めてください」

「うむ。引き剥がすこちらの身にもなるのじゃ!」


「───それは嫌「ヴェル?」はい・・・以後気をつけますわ」


「ええ。そうしてください」

「まったくじゃ!」


「それで・・・ヴェルさんですか?正直驚いてただけで何もしていないしされてもいないんだけど・・・一体・・・3人とはどういう関係・・・?」


「そうだよね。プルーナさんが不思議がるのも無理はないよね。でも・・・その前に」





「まっ・・・ママ!?ママなの?」


「ええ!やっとあの厄介な結界から降りてくることができましたわ!寂しい思いをさせてごめんなさいね」


「ううぅん!あたしは大丈夫よ!だって!火の大精霊の娘なんですもの!」


「あらあら・・・背伸びしちゃって・・・」








「と・・・いうわけで、2人は母娘なんだ」


「ほえぇ・・・」


「初めまして。わたくしはヴェレールと申します。普人族のお嬢さん。紳士様。以後よしなに」


「どうも・・・」

「よろしくお願いいたします」


「でもなんでヴェルは結界から降りられなかったんだい?」


「───大変お恥ずかしい話・・・娘が孵る直前にこの島に戻ってきたのですが・・・件の結界が張られていて入れず・・・怒りと悲しみで我を忘れておりましたの。つい最近、結界に揺らぎがあり大変お懐かしい気配がすると思いましたら・・・」


「私たちがやってきた・・・と」


「はい。その通りにございます。あとは・・・先程起きたことで全ててございます」


「───どの位結界の上におったのじゃ?」


「覚えてはいないわ。だって・・・結界一枚隔てて我が娘がいるのに何もできなかったんですもの」


「親が子を思う気持ち・・・か」


「ええ。懐かしい気配と共に、この結界の特性を思い出した。けれど・・・気付いた途端に力が抜けて、落ちたら危ないと思って浮いていたのよ。そうしたら、眼下にアル様がいらして!なりふり構わず落ちてきたの!だって!絶対に受け止めていただけると確信していたのですから!」


「なんとまぁ・・・相も変わらず勘違いが多いのう」


「そう言う貴女は背が低くいままですわね!」


「なにおう!これは魔法で姿を変えておるだけじゃ!」


「ふんっ!どうだか!」


「「むむむむ・・・」」


「エレン!言い過ぎです。ヴェルも!折角娘さんの前なのですから。落ち着きなさい」


「「むぅ・・・」」


「あはは・・・ところで・・・ヴェルの娘さん。貴女のお名前をお伺いしても?」


「アル様。まだこの娘には名前がないのです。本当は生まれてすぐに名付けることが仕来りなのですが・・・そうもいかなかったので・・・。そうですわ!アル様が名付けてくださいませんか!?」


「なぬ!」

「なっ!貴女!それは・・・」


「うぅん・・・うん。そうだね・・・この娘に名前がないのは、半分は私の責任だから・・・」


「では!是非・・・「ただし!」・・・はい」


「私の名前の一部を入れるということはしないからね」


「・・・はい。仰せのままに。アル様」


「「ふぅ・・・」」


「?」


「どゆこと?」


「2人とも不思議ですよね。理由は───」

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