魔石と魔核
少し長いです。
誤字や脱字、矛盾があるかもしれません・・・。
本日もお楽しみいただければ幸いです。
「そもそもですが、ストルネ殿やプルーナさんに馴染みのあるものは・・・」
「それは勿論・・・」
「魔石だよ」
「わかりました。では、まずプルーナさん。魔石とはどのようなものかご存じですか?」
「えっと・・・燃える黒い石が出す煙に比べると遥かに・・・というよりも、一切の煙を出さずに使える燃料っていう感じかな」
「なるほど。では、採れる場所などは知っていますか?」
「アタシたちは、普段冒険者組合から買い入れていて・・・あっそうそう!駆け出しの冒険者でも納品ができて、そういう方が安く仕入れられたかな。まっそういう魔石の品質は低くて・・・経験豊富な冒険者ほど質の良い魔石を納品してくれるって納品担当者が言ってたなぁ。でも、駆け出しの冒険者たちを応援したくってさ。なるべく低品質のも混ぜて仕入れてほしいって、提督にお願いしていたよね」
「うむ。納品される品質は違えど、混ぜて使用することもできたしな。低品質とは言え、経験者が採ってくるものよりも大きさが均一で、使いやすかったということもあったからな」
「なるほど・・・。では、ストルネ殿に改めてお伺いします。魔石というものがどのような場所で採られるかご存じですか?」
「ふむ・・・平野や岩場、山や川、林や海岸に至るまで。主に魔物が住まう場所や古い時代に戦場となった場所でありましたな」
「よくご存じで!採取された経験がお有りですか?」
「ええ。儂もずいぶん前にはなりますが、魔石を採っては小遣いを稼いでいた経験がありますからな。往々にして、魔石は魔物の害が少ない場所でも採れましたから。ただ、確りと品質を鑑定してもらわねば売るに売れず・・・。また、鑑定料が買い取り価格から引かれておりましたから。手に入る額は本当に子どもの小遣い程度でしたよ」
「そうだったんですね。確かに、魔物のあまり生息していない場所でも簡単に採取できるのが魔石の大きな利点ですね。大きさはどの程度であったか覚えていますか?」
「確か・・・」
「10糎位が多かった印象があるよ!」
「そうだな。砕けたものが多いが、軍に納入されるものの多くはそのくらいの大きさであったな。・・・それよりも大きいものは、経験を積んだ冒険者が稀に手に入れてきたと聞きましたな。まぁ大体は研究所に納品されてはいましたが・・・」
「結構良いものも納品されていたのですね。では・・・カレン。魔核を出してもらっていい?」
「属性はいかがいたしましょう?」
「今日実際に採取する、火属性のものでお願い」
「畏まりました」
私はカレンにお願いをして、彼女の簡易倉庫に保管してもらっている火属性の魔核を出してもらった。大きさは、先ほど話していた魔石の平均的な大きさの10糎大の物を1つである。
「きっ綺麗!」
「見事な深紅の球体ですな。火属性と聞きましたが・・・」
「はい。魔石に比べると遥かに冷たいですよね」
「えぇ。どのような魔石でも若干の熱を感じますね。特に火属性だと・・・持つだけでわかるほどに熱を感じますが・・・これは・・・」
「本当だ!持っても熱くない!」
「えぇ。この魔核は加工してあるので球体ですが、これから採取する予定のものは、もう少し歪です。ただ、感触はこれと同じで全く熱量を感じることはありません」
「いったいどうして・・・」
「アタシも気になる!」
「魔核は常に魔力を放出している不安定な魔石と異なり、内包されている魔力が純粋で、常に安定しています。そのため、外部に漏れ出ることがないため、水属性であっても火属性であっても、持った時の感触は普通の石と変わりありません。唯一の違いは、内包する力が魔石の何万倍ということです」
「なんと!」
「えっえっ!?そんな!流石にありえないでしょ・・・」
「いいや。アルが言うておることは本当じゃ。この魔核一つで、あの艦が必要とする動力源を半永久的に供給することができる」
「えっ!」
「うん。エレンが言っていることは本当だよ」
「じゃっじゃぁ・・・」
「でもね、出力を安定させることが難しくて、魔核を動力源に使用できるようになったのはつい最近・・・500年ほど前なんだよね」
「500年も前にできた技術・・・」
「アル・・・」
「アルフレッド様・・・」
「あっ!そうだよね・・・普人族からしたら相当昔か・・・」
「うん」
「そう・・・ですな」
「申し訳ありません。───話を戻しますが、私たちも魔石を燃料として使用していた時代は勿論あります。それこそ、人魔大戦以前ですが。大戦後に技術革新があり、魔石の使用を全面禁止とし、代わりに純粋な魔力の塊である魔核を燃料として使うことになったのです」
「何故に魔石の使用を禁じられたのです?」
「先ほど、ストルネ殿がおっしゃられました。魔石は、魔物の害が少ない場所でも採れるということを」
「はい。それと何の関係が?」
「・・・魔核というものが純粋な魔力の塊であることは先ほど述べました。ですが魔石は?」
「魔力が安定していない。少しずつ魔力を放出している・・・」
「そう。それはなぜ?」
「「・・・?」」
「魔石というものの原型は、この魔核です。そもそも魔核には分類上、2つの種類にわけられます。1つは、自然由来。これから私たちがライラック山の麓に行って採取する火属性の魔核がその筆頭。水属性は川や海で。地属性は地中で。風属性は、常に風が吹く谷など・・・それぞれ由来のある場所で魔力が凝縮されて生成されます。もう1つは、魔物由来。こちらの場合は生成途中である魔核を何らかの形で体内に取り込んだ動植物が、魔核の持つ属性の魔物に変化し、その体内で肥大化していくというものです。後者は、狼など人に害を成すものとして討伐対象になったり、食物連鎖によって淘汰されていきます」
「それと魔石に何の関係が?」
「たとえば・・・純粋な地属性魔核を持つ魔物が水場で人によって打ち倒されたとします。そうすると、魔核に馴染みのない人々は、魔石と異なり熱を放出しないために、その場に放置してしまうことが一般的ですよね」
「うん。偶に町で耳にしたよ。魔物だと思って討伐したのに、魔石は落とさずに石だけ落とす魔物がいたって」
「そう。そうやって捨てた魔核を他の魔物が食べてしまったり、自然の魔力・・・この場合だと水属性の魔力と結びつくことで、純粋な地属性の魔力の中に異なる魔力が蓄積されていくよね。そうすると魔核内部では、異なる属性同士が反発しあって熱を生み出し、魔石が内部の圧力に耐えられなくなって自壊してしまう。多くの場合は土の中に埋まったり水の中に沈んだりするんだけれど・・・魔石が人々の手にわたることもあるよね。冒険者たちが組合に納品することで」
「うん。現にアタシたちはそうやって魔石を手に入れていたわけだし。でも・・・魔物はどうして魔核を食べるの?」
「それは・・・魔物は、常に純粋な魔力を求めているからなんだ。木が水や光を欲するように・・・魔物もまた、自らの糧になる魔力の塊を求めて徘徊している・・・。たとえ、自らが持つ属性とは異なるものであったとしても。そうやって、違う属性を体内に取り入れてしまうと、力が反発し・・・」
「魔物が狂暴化する」
「その通りです。ストルネ殿」
「その魔物を冒険者が討伐することで、魔石が手に入るということですな」
「あぁ!だから魔石はどこでも手に入るんだ。捨てられた魔核に違う属性がまとわりついて、許容量を超えて砕けてしまうから・・・」
「そう。二人とも大正解!」
「でも・・・それが何の問題が?単なる生成過程の違いじゃない?」
「儂もそう思います」
「はい。ここまでは、生成過程に関しては問題ないのです。砕けた魔石も、自然に分解されて魔核に戻っていくので・・・。ですが、これを熱源や動力源に使用すると話が変わるのです」
「なんで?」
「それはね・・・魔核は、10糎を超えるとそれ以上肥大化することなく、内部で安定的に力の消費と生成を繰り返してるんだ。その力を我々森人族は利用することに成功し、今現在、自然由来の魔核を動力源として使用している。ただ・・・魔石は・・・」
「魔石は?」
「ただでさえ安定していない力を無理やり使用することで、魔石内部の均衡が崩れ、崩壊する」
「確かに・・・熱源や動力源として使用した魔石は粉々に砕けるため、必ず屑受けを用いないといけません」
「そうなのです。砕けて粉になるため、新たな魔石を補充する際に清掃が必須。ただ、その部分でもって使用禁止としたのではないのです」
「じゃぁ・・・なんで?」
「魔石はね、崩壊した後周囲の熱を吸収し続ける性質があることがわかったんだ」
「へっ!?じゃっじゃぁ・・・」
「もちろん、崩壊した魔石・・・崩壊した後は魔核のなりそこないという認識を私たちはしているんだけれど、元の属性と同じ場所に戻すことで、魔核に再生成されることがわかっているんだ。だけど・・・」
「儂ら普人族はその事を知らず。もちろん技術も持たず・・・魔石廃棄場に捨てている。そして今現在も・・・増え続けている」
「そう・・・なんです。一つ一つが吸収する熱量は少ないですが、量が多いと」
「それだけ吸収する熱量が多くなる───。それって・・・すっごくまずいんじゃ!?」
「そう・・・。プルーナさんは言っていたね。お母様の畑では、年々糸瓜が育たなくなっていると。寒い日が続くようになってきた感じがすると。ストルネ殿は訓練中に遭遇しましたよね。極地海域の魔物であるはずのクラーケンと」
「うん」
「うむ・・・」
「事態は深刻さを増しています。今現在も。だから私は、あなたたちを国に帰し早いうちに国交と魔石を魔核に再生させるための技術提供。そして、半永久的に使用できる魔核を熱源として、使用する街づくりのお手伝いをしたいと考えているのです。そのためにもまず・・・」
「儂らが魔核に触れ、知識を深めることが重要である・・・と」
「はい。その通りです。ただ、残念ながら一度破壊れてしまった自然環境をもとに戻すためには・・・」
「膨大な時を要する・・・」
「───はい」
「でも、でもでも、食い止めることはできるんだよね?手遅れではないんだよね!?」
「私たちの国の技術が信用されて、各国に提供できて浸透すれば・・・ね」
「────儂らの国がその橋頭保になると」
「・・・黙っていて申し訳ありませんでした。ですが中々魔石を燃料として使っていらっしゃるのかの確証が得られず・・・」
「いやっ・・・話にくいことを話していただき、感謝申し上げます」
「そうだよ!アルくんはなんにも悪くないよ!何にも知らなかった。でも、手遅れになる前に教えてくれたんだから!」
「2人とも・・・ありがとう」
「して・・・我々が成すことは・・・」
「まずは───」
中継地点である元宿場町での話し合いは1刻半にも及んだ。やはり、魔石燃料が普人族の間では主流のようだ。この中継地点をしばらくの間、魔核教育の場として整備するための人員や計画も話し合い、私たちは一路ライラック山の麓へと歩みを進めるのであった。