中継地点に向けて
「では。向かいましょうライラック山の麓まで!」
「はい」
「訓練にもなるしっ頑張るよー!」
「研究に使えそうな材料が見つかれば良いのぅ!」
「いやぁ・・・大量採取!───腕が鳴りますな!」
天幕浴場を片付けた翌日──片付けている最中のストルネ殿旗下の方々から向けられる視線が何とも哀愁に満ちていたが──私たちは、火属性の魔核を採取するべく、ライラック山の麓を目指して歩き出した。
「ねぇねぇアルくん!今日はどの位歩くの?」
「儂も行程を知りたいですな」
「───今日の行程は・・・行きは4刻。中継地点の様子も見ていきたいので、少し余裕を見ています。因みに・・・帰りは半刻です」
「「???」」
「なんで帰りがそんなに短いの!?」
「それはね」
「それは、空を飛んで帰ってくるからじゃ!じゃろうアルよ」
「まっ・・・まぁね。折角驚かせようとしたのに!」
「「空を!?」」
「えっ!だって・・・えぇっ!」
「大丈夫ですよ。アルフレッド様はもちろん、エレンも私も空を飛べます。まぁ・・・私の場合は飛ぶというよりかは駆けると言った表現が正しいですが」
「でも・・・」
「大丈夫!飛翔補助魔法をしっかりとかけるから!」
「そうじゃなくて・・・」
そう言ってプルーナさんは横を歩くストルネ殿に目を向ける。そこには、青ざめた顔のストルネ殿がいた。
「どうかされましたか?ストルネ殿」
「あっ・・・いえっ・・・そのぉ・・・」
「アルくん。提督は昔から高いところが苦手なんだ。艦橋に登れないくらいにね」
「えっ・・・だって・・・この間の水門工事の時はかなりの高さから飛び降りていたけれど・・・」
「えっ?そうなの?じゃぁどうして苦手なの?」
「───気分が昂ぶっていれば・・・どうということではないのだが・・・な」
「なるほど・・・?」
「気分が昂ぶるように魔法でもかけるかの?」
「いっいえっ・・・そんな滅相もない」
「エレン・・・今のストルネ様に魔法を使ったとしても・・・」
「恐怖の方が勝っておるか・・・」
「まっまぁ・・・帰りの方法は、追々考えるとして・・・っと。中継地点に着きました」
ストルネ殿の意外な弱点?を見つけたけれど・・・高いところが駄目だなんて・・・少し方法を考えないと・・・日が沈まないうちに街へ戻って、お湯が使えるようにしないといけないし・・・浄化魔道具や排水量の調整も行わなきゃいけないからね・・・
「───ここは?建物の跡が多いけど・・・」
「ここは、巡礼者たちの宿場。前に説明したと思うけど、山の麓の神殿に向かう中継地点だったんだ。この辺りに有ったと思うのだけれど・・・あっ!あったあった!」
「おぉ・・・見事な水晶ですな」
元宿場町の中心部に淡い光で輝くのは、翠色の石。魔物除けとして使われていたものだ。
「これは水晶に見えますが、そう見えるように加工した蛍石です。内蔵魔力が枯渇し始めているため、色が薄くなってしまってはいますが」
「おぉ・・・しかしずいぶんと大きいですな」
「これ程までに大きな結晶は、ワシでも見たことがないぞ!すごいのぅ!」
「元々の大きさは小さいんだ。いくつもの蛍石と風の魔核を繋ぎ合わせて作り合わせたんだ」
「・・・ねぇねぇアルくん」
「ん?」
「魔核ってよく言うけどさ、魔石と魔核の違いってなに?」
「儂も知りたいですな。正直、違いが判ららんのですよ」
「やはり・・・そうですか・・・」
「アルフレッド様・・・」
「アル・・・これは・・・」
「「??」」
「わかりました。少しお話しをさせていただければと思います。何処か適当なところに腰掛けましょう」
私の危惧していた事が現実味を帯びてきた。勿論、悲観的なことばかりではないと思いたいけれど・・・この話の流れだと、明確な区別がなされていないし・・・もしかしたら最悪の事態も想定していないといけない・・・。ここ最近、魔物たちが生息域を拡げている・・・いやっ元の生息域から移動している原因を知ることができる貴重な場となるかもしれない。
「では────魔核と魔石の違いからご説明いたしますね────」