糸瓜と果樹栽培と
夕方とはなんぞやって時間になってしまいました・・・申し訳ありません。
本日の更新。お待たせ致しました。
「やぁストルネ殿にプルーナさん」
私たちは館を出て街へと向かったが、ストルネ殿とプルーナさんはすでに畑の方に行っているということだったので、こうして畑まで2人を探しにやってきた。ちょうど、青椒と胡瓜の収穫をしていたので声をかけた。
「おぉアルフレッド殿!館での暮らしはどうです?」
「もぉ提督・・・。その聞き方はさすがに駄目だよぅ。まだ1日しかたっていないんだから」
「おぉ・・・。そうであったな!年を取ると忘れることが多くなって困るな」
「気まずくなるとすぐそうやって年のせいにする!少なくとも、国許にいるよりも若返ってるから」
「そうか?そう言われると嬉しいな!はっはっは!」
「はぁ・・・。来てくれてありがとうねアルくん。館はどう?過ごしやすい?」
「うん。風は抜けるし、景色はいいし。非の打ち所がないよ。ありがとう」
「いやいや。過ごしやすくできてて何よりだよ。・・・っていってもアタシが建てたわけじゃないんだけどね」
「それでも、いろいろなことに協力して建ててくれたのだから。皆さんにもだけど、プルーナさんとストルネ殿、実際に差配してくれたカンネさんには特に感謝だよ」
「そう言ってもらえるとこっちも嬉しいな!」
「カンネには儂から伝えておきますよ」
「ありがとう!ストルネ殿お願いしますね」
「・・・アルフレッド様」
「あぁ・・・忘れるところだった」
「?」
「なぜ我らが畑に来たのかわからん。という顔じゃなプルーナ」
「うん。だって・・・」
「もしかしてですが、何かあるのですかな?航海病を防ぐことのできるものが」
「そうなんですよ。それに、プルーナさんが糸瓜のことで相談があると伺ったので」
「助かります。して・・・」
「えっと・・・最初は二人にも相談しようかなと思ったんだけど、糸瓜も育てるならと思ってこの果樹の栽培に挑戦しようかなって」
そう言って私は、簡易倉庫から10本程の苗を取り出した。
「・・・5本の苗に関しては、蜜柑ということはわかりますが・・・。こちらの苗は?」
「そうです!半分の苗は蜜柑の苗です!残りの苗は・・・芒果の苗になります」
「「芒果?」」
「はい。暖かい地方で収穫される果物の1つです。主に生で食すものに適した種類と、乾燥させても美味しい種類になります。今回はこの三種類の果樹栽培に着手しようかと思っています」
「なんと!乾燥させるということはつまり・・・航海中でも腐りにくく、補給がうまくいかなくても保存食として有能ということなのですな!」
「その通りです!しかも、航海病を防ぐことのできる栄養も含まれていますので、甘味としては勿論、病予防の食材としても有能なのです。もちろん、馬鈴薯も有効なのですが・・・乾燥させた物に比べるとやはり持ちませんので。日持ちする乾燥芒果を作ろうと思いまして」
「なんと!それは素晴らしい!」
「ええ。それとともに、普段から手軽に食べることができる蜜柑にも栽培し、この島での水菓子の普及にも着手しようかと。海風にあたると甘くなるとも言われていますしね」
「ねぇねぇアルくん。その芒果と糸瓜に何の関係が?」
「それはね、共に温かい地域で育てられる作物という共通点があるんだ」
「へえぇ!それは一石二鳥だね!」
「ですがアルフレッド殿。今の季節ではちと難しいのでは?まだ春の半ばですし」
「はい。ですので、さんちゃん」
『「ハイ ノウチノカクチョウキノウ デスネ」』
「うん」
「「農地の拡張機能!?」」
「なんじゃ!アル!そんなものまでさんちゃんにはあったのか?というか拡張機能とは何ができるのじゃ?」
「うぅん・・・ごめん。詳しくはわからないんだ」
「へ?」
「初めてできることなの?」
「うん・・・さんちゃん。説明をお願い」
『「ハイ カクチョウキノウトハ ノウチニアラタナシセツヲ ツクリアゲルコトデス コンカイヤカタノケンセツヲ ワタシジシンガオボエタタメニ デキルヨウニナリマシタ イワユル レベルアップ デスネ」』
「れべるあっぷっていうのが何なのかはわからないけれど・・・とにかく、出来ることが増えたみたいなんだ」
「へえぇ・・・じゃぁ今回はなにを作るの?」
『「コンカイハ オンシツヲ ツクレルヨウニイタシマス」』
「「温室?」」
「温室!うそ!すごいじゃないか!」
「ほぉ・・・この島に温室とは。薬草も育てられるようになるのじゃな!」
「色々とできることの幅が広がりそうですね。アルフレッド様」
「うん!拡張機能の詳細は今初めて知ったから驚いてしまったけれど・・・。土全体の温度を魔法で上げようかなって思っていたから。とっても嬉しいよ!」
「待って待ってまって!魔法で土の温度を上げるっていうのにまず驚きだけれど・・・。温室って、なに!?」
「「えっ?」」
「寡聞にて申し訳ないアルフレッド殿。儂も温室に関してあまり存じ上げず・・・。教えてはいただけぬかな」
「提督も?」
「うむ・・・。聞くは一時の恥 聞かぬは一生の恥。と言うからな」
「わかりました」
そう言って、温室とは何かという講義を始めることになった。
「とても簡単に言うと温室というのは、風雨の害をある程度防ぎ、また外気温が低くても建屋内の気温を高くして、その季節では育たない・・・。例えば、夏にのみ栽培可能な西瓜を冬でも収穫を可能にする。といったようなことができる施設です」
「なんと!そのような施設であったのか」
「へえ!それじゃぁさ。なんで、農地をすべて温室にしないの?」
「温室はね、維持管理にとてつもなく魔力や燃料を消費するんだ。夏の時期はいいのだけれど・・・さっき話したように冬にはその作物に適した気温を維持するからね・・・。寒くなる季節には燃費が非常に悪くなる。しかも、ある程度収量がないと費用対効果が望めない」
「ふむ。燃料に資金を費やしてしまうと、翌年の作付に影響が出る」
「その通りです。ですので我が国では、大量収穫が可能である物や連作可能な物。それに付加価値が高い果樹を温室内で栽培しています」
「なるほど。そうすることで費用の回収が見込める。と」
「はい。大概は建設費用の回収になりますね。気温維持には、管理者の魔力を補充するだけで動くものが普及していますので」
「なるほど・・・。さすがは魔力量の多い森人族」
「ただ、薄く透明な強化硝子も魔道具もないこの島なので、導入は絶望的だと思っていたのですが・・・」
「?それがどうしてできるって踏んだの?」
「それはね。館の窓硝子を見たからなんだ」
「あぁ!確か・・・」
「おぉあれはカンネが趣味で作っておるものなのですよ。本人は、もう少し技術があればと嘆いていたが・・・」
「そうそう!少し不格好だけど海が見えるようにって付けてた付けてた!」
「カンネさんが!そうか・・・。であれば、早々に建設する場所を決めて、館工事で余った棒鋼を柱にして骨組みを作るのと、苗を植えてしまいましょう。幸い、季節は暖かくなっていく一方なので、寒さで痛むということもほぼないでしょうし。寒くなったとしたら、火弾をいくつか浮かせて気温を上げればいいだけですしね」
「——————火弾を浮かせる・・・」
「まぁ・・・遠隔操作は可能だけど、だれかが間違って入らないように警備をしないとならなくなってしまうから・・・。さすがに・・・怪我をされてしまうと嫌だからね」
「ああぁ・・・確かに。遠くから見たときに松明の明かりと勘違いしそうだしね」
「うん。というわけで、作ろう!温室!決めよう予定地!」
「腕がなりますなぁ!」
「頑張っちゃうよ!」
「・・・あれは、アルが作りたいだけじゃな。その気になれば、人には無害な火弾を浮かせることができるじゃろうに」
「ええ。可能でしょうね。繊細な魔力操作は、森人族というよりも世界一ですからね」
「うむ・・・。しかしまぁ」
「あそこまで目を輝かせているお姿を見てしまうと」
「「止められない(ですね)(のじゃ)」」
さぁ!私が作りたい全天候型温室を作るぞっ‼