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領主の館 ④

「────姫様・・・」


「っく・・・これしきのことで音をあげてはなりません」


「しかし・・・」


「まだ・・・希望はあるはずです・・・うみを・・・海を渡りましょう!」


「───ッ!」














「うぅん・・・こんな感じかな?」


「そうじゃのぅ・・・ここをこうするのは?」


「こうすると・・・片方で多く使った際にもう片方で使おうとすると・・・出なくなってしまうのでは?」


「そうだよねぇ・・・でも、これ以上太くすると重くなるし・・・」


私は今、カレンやエレンと一緒に建設現場の端で、館に設置する水利用の管を作成している。が、水を必要とする場所に分岐させる方法で悩んでいる・・・2階に送る方法は、以前水路で制作した風魔法の応用をするという方法に目途はついているけれど・・・どうしたら必要な分の水を送る装置を限りある資材で造れるか・・・。


「どうしたのアルくん?それにカレンにエレンも。難しい顔しちゃって」


「あぁ・・・プルーナさん。今ね分水で悩んでいるんだ」


「分水?」


「そう。水を必要とする部屋が複数出たときに、必要分未満の水が来ても作業が捗らないでしょう?」


「あぁ・・・確かに。お皿洗っているのに水滴ぐらいしか出ないのは困るもんね・・・」


「まっまぁ・・・そこまで極端なことにはならないけれど、そんな感じだね。だから悩んでいるんだ・・・水路直結型にしようと思ったんだけど・・・」


「そう言えば水路って、今送水を止めているんだっけ?」


「うん。製材所内で循環する量が確保できたから止めてるよ」


「ものすごい勢いで水を送れるんだよね?」


「まぁね。最終的には街より少し広い範囲まで水の量を確保できるくらいにはね」


「それじゃぁさ。その凄い勢いでここまで送っちゃえば?」


「うぅん・・・」


「それは無理という話ですよ。プルーナ」


「中将閣下!」


「ご無沙汰・・・でしたかな?」


「いえ。カレンからは製材所での仕事の速さを伺っております。ピセロ殿」


「お褒めいただきありがとうございます。何やら話し込んでいた様子なので、少々聞き耳を立てておりました。お困りのご様子ですが・・・」


「ええ。実は──────」








「なるほど・・・。分水に関して水路直結の方が簡易的で工事も早く済みますが・・・ここは丘の上ですから、まず水勢が弱まりますね」


「はい」


「であれば、貯水塔か水道橋を築くのは如何ですか?」


「貯水塔・・・」


「貯水塔はご存じで?」


「いえ。我が国にはありません・・・地下に水を貯める施設はありますが」


「なるほど・・・この国で地下にある貯水施設が地上に存在する形になります。ただ、今回は災害に備えて水を貯めるのではなく、必要な分を必要なときに使うための受水塔を作るべきかと」


「受水塔・・・でも、塔にする必要は・・・あぁなるほど」


「お解りいただけましたか?」


「はい。受水塔の上に風車を取り付け、自然の力で水を溜め込み、必要とする側には自由落下で水を流して水勢を維持しつつと言うことですね。自ずと管を大きくし、屋内の管を一回り狭くすることで・・・」


「必要な分を少し下回るかもしれませんが、水勢を維持することで、問題なく分水されるかと。問題は、屋内で水を出す。止める。を制御する機能かと」


「あっそれについては────」





「ん?どうしたのじゃプルーナ」


「いやっ・・・うぅん・・・なぁんか苦手なんだよねピセロ中将のこと」


「ふむ・・・」


「糸目でさ、常に笑顔が張り付いている感じで・・・何考えてるかわからないんだよね」


「確かに・・・何を考えているかわかり辛いのぅ・・・普人族にとっては・・・」


「ん?どういうこと?」


「エレンが言いたいのは、魔力の揺らぎによって、相手が考えていることや何をしようとしているかを感知することが可能だと言うことです」


「その通りじゃが・・・台詞をとらないでくれ・・・」


「ふぅん・・・じゃぁ・・・なんで───」


「プルーナ。感心しませんよ。人のことをとやかく言うのは」


「───!申し訳ありません!」


「ふむ・・・まぁ良いでしょう。アルフレッド殿に心配は無用でしたな」


「いえ。貴重なご意見をありがとうございます。」


「それでは・・・」


「あっ!ピセロ殿」


「・・・はい?」


「・・・あまり広範囲に魔力を拡散するのは宜しくないかと。まるで・・・周りの者を信用していないように感じますので」


「・・・はて?何のことやら・・・失礼致します」


「ありがとうございました」


「魔力の拡散って?」


「うぅん・・・ふぅ。うん・・・あの人は、周囲に魔力を拡散して、色々な人が話している内容を聞いているみたい・・・」


「えっ・・・それって・・・」


「うぅん・・・まぁそう言うことだよね。余り嫌な感じはしないから大丈夫だけど」


「そっか・・・」


雰囲気的にはよく分からない方だけど・・・悪い人では無いと思う。ただ、この団結力だから何かしらをストルネ殿に伝えてるんだろうなぁ。


「それにしても・・・受水塔かぁ。思いつかなかった」


「ふむ。造れそうかのう?」


「うん。白狼石を加工すれば問題ないよ。ただ・・・大がかりになるなぁ」


『「ソウイウトキハ ワタクシニオマカセヲ」』


「おわぁっ!驚いた・・・でも、宜しくね」


『「カシコマリマシタ セッケイズヲカイテイタダクトイウコトヲ オボエテイマスカ」』


「うん。描いて読み込ませるんだよね?」


『「ハイ ソウスルコトデ ユウチカノウトナリマスノデ」』


「わかった!じゃぁ早急にやるねっとその前に、お昼休憩だ」


「今日は、艦の調理担当の方々が作ってくださるそうです」


「おぉ!それは楽しみだ!」

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