石切り場と道路工事
「おはようございます」
「おはようございます。ストルネ様」
「おはようございます。アルフレッド殿。カレン殿・・・。ゆっくりとお話しが出来たようで、何よりです」
「その節はご迷惑をおかけいたしました」
「なんのなんの!お気になさいますなカレン殿。こちらこそ、お節介なことを・・・」
「2人とも謝罪合戦になるからその位で・・・」
「「────ハァ・・・」」
「えっ!なんで溜息!なんで!」
「では。私は皆様の昼食のご用意をさせていただきますので」
「おぉ!それは楽しみですな!」
「ねぇ!ねぇってば!なんで溜息を!」
2人は再度顔を見合わせて、やれやれと言った表情をこちらに向けてきた。カレンは軽く会釈して小屋の方へと歩いて行ったのだけれど・・・何か釈然としない・・・。
「アルフレッド殿。少しご相談が」
「・・・はい」
「はっはっは。そんな脹れっ面は似合いませんぞ!美しい顔が台無しですよ。カレン殿の想いはなかなか通じないようですが・・・」
ストルネ殿が発した最後の方の言葉は小さくて聞き取れなかったけれど・・・人前で拗ねるのは良くないね。
「・・・申し訳ありません。それで、相談というのは・・・」
「───石が採れないのです」
「ん?道具は・・・」
「槌に鑿、楔は用意しているのですが・・・全くもって・・・」
「・・・全ての道具を跳ね返す。と・・・」
「その通りです。一刻程前から作業を始めているのですが、これがさっぱり」
話しながら採石場に歩いていくと、力自慢の人々が座り込んでいた。
「アルフレッド殿が示してくださった場所を少し掘り下げると、見事な白い石材がありましたので、皆は喜んでかち割ろうとしたのですが・・・全く傷がつかず・・・」
「・・・あぁ!これは白狼石だ。これは、一度魔力を浸透させないと切り崩すことすらできないのです」
「なんと!大理石や石灰石・・・あっいや・・・石灰石なら容易に切り出せるか・・・。しかし白狼石とは一体・・・」
「我が国で産出される石の一つで、一度受け入れた魔力以外では加工ができない白い石。それを気高い白狼となぞらえて、白狼石と呼んでいます。我が国でのみ産出及び加工が可能なので、外には出回っておりません・・・しかし・・・なぜ・・・」
「ということは、アルフレッド殿の魔力であれば、容易に加工が可能であると言うことですね」
「・・・はっ!そうか!そうですね!確かにこれは私の魔力でのみ可能ですね。しかし、それだと不便なので、少し待っていてください」
そう言って白狼石に手をあて、軟化の魔法を唱える。加工に関しては・・・道具に私の魔力を限定付与させれば大丈夫か・・・ん?この歪みは────
「ていっ!」
岩と岩の間に僅かな歪みを感じたので、魔力を一点集中させると、3米大の石へと自壊した。
「おぉ!流石はアルフレッド殿!これで削り出す労力が減りますな!」
「いやぁ・・・たまたま歪みを感じたので」
「なるほど・・・ですが・・・加工するとしても、我々の持つ道具では・・・」
「道具の方は、私の無属性魔力を付与しますので、それで何とかできるかと。道を整備するのには、道筋を灰色で示していますので・・・工人が4名と運搬が6名の計10名。道具はこの槌を。残りの必要物資は、敲き土となりますが、灰色の場所に入ることで作り方が分かるかと。あと・・・誰か木工が得意な方は・・・あっ!お2人ですね・・・では他に2人ほど助手となる方を探してください。その外の方は・・・道具を持って私の所へ来てください。それでは!作業開始です!」
「「「ハッ!」」」
「では・・・良い鉄製の道具ですね!」
「工兵たちは自分たちの道具に誇りを持っているらしく、この生活かに於いても手入れを欠かさなかったとのことです。今回は、アルフレッド様のお手伝いと言うことを話すと、快く貸してくれました。全力で励みますので、よろしくお願いします」
「ありがとうございます!では・・・付与《無属性》────はい!全員分終わりました!作業場の整備をするので、少し席を外しますね」
そう言って私はふわりと宙に浮き、岩山の頂上付近にある物陰に隠れた。下ではざわめきが起きていたけれど・・・驚かせてしまったかな。
「さんちゃん」
『「ハイ ゴヨウケンヲナンナリト」』
「この岩山を含んで5米四方を鉱山区域に。そこから道路予定地との間、幅3米、長さ5米の区域を簡易木工所として誘致できる?」
『「カシコマリマシタ タダ モッコウジョ トシテノユウチハデキナイノデ テイミツドコウギョウクイキ トナリマスガヨロシイデスカ」』
「うぅん・・・木材を簡易的にしか扱わないけど・・・それで大丈夫?」
『「コウサクヲスルノニ ダイキボナキカイ ヤ タテヤヲヒツヨウトシナケレバ コトタリルカト」』
「うん。なら、低密度工業区域として誘致して。それで大丈夫かな。よしっ下に降りよう」
下に降りると、驚愕に満ちた目で見られたけれど、作業開始の声かけを改めてすると、皆素早く動き始めた。
「おぉ!あの切れなかった岩が嘘みたいに・・・」
「ほぉ!敲き土ってのはこう作るのか」
「丸太を持ってきたぞ!」
「そこに置いてくれ!よしっ!輪切りにして良く滑るように加工するぞ」
「丸太同士をつなぎ合わせてっと・・・よしっ台車の形になってきた」
「石が足りないぞ!」
「道を作る速度が速すぎるんだよ!少し待ってくれ!」
「早いったってな!身体が勝手に動くんだから仕方ないんだよ・・・なぁ皆!」
「「ウンウン」」
俄に活気が出てきた岩山の周辺。石切の音や木を加工する音。手早く敲き土の上に石材を並べ、道を作っていく様子・・・どれをとっても、この島に命を吹き込む作業のように感じた。
「アルフレッド殿・・・いつ見ても不思議な光景ですな。あの誘致された空間は」
「そうですね・・・全て普段よりも速く動くことができますからね。これも女神様の力ですね」
「なるほど・・・創造の女神様の御業ですか・・・」
「ただ、その人の経験によってはもっと速く動けるみたいなんですよね・・・。だから、経験を積める場所を作るともっと速く動けるかもしれないですね。しかも疲れ知らず」
「そう!それが大きい!だからこそ・・・」
「「道路が繋がったぞぉ!」」
「おぉ!言っている側から完成したようですな」
「そうですね・・・着工から完成まで二刻・・・現在の時刻はっ・・・と・・・おっ!11刻ですね。いやぁ・・・早い!」
距離は約30粁。道路幅は約6米。人が通る場所と荷物が通る場所は別々。水はけを良くするため、多少の傾斜はついているものの、走りやすい道となっている。これで石を港まで運び込む事ができる・・・。