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国王の私室にて③

前回の続きです。

「スキル使用板とは、森人族王家に伝わる一子相伝の技術。と聞こえは良いが、王系の男子に授かる創造神からの贈り物のような物だ」


「そのような物が・・・と言うことは、盗まれたら大変ではないですか!そのような物はいただけませんよ!」

(これで受け取りを拒否すれば…)


「いや。そのような心配は一切無い。万が一、使用者以外の手に渡った場合は、一定距離。大凡10(メートル)ほど離れると使用者の元に戻ってくる。また、登録者の魔力パスが繋がっていなければ、起動及び使用ができん」

「はぁ・・・そのような物が。」

(詰んだーーー!魔王討伐後は好き勝手に過ごす計画がぁ・・・うわぁぁぁ)

「ん?どうした。アルよ。この世の終わりのような顔をして。素晴らしい代物だろう」

「あっハイ・・・。」


国王は満足げにスキル使用板を説明し、アルフレッドは、自身の計画が破綻したことで顔を手で覆っている。

そんな様子をカレンは

(今まで好きにされていたのだから、シャキシャキお働きください。陛下からの発破がけ。とても効果がお有りな様で・・・。私はこのまま城仕えに戻るのでしょうか・・・。)

今後のことを考えつつも二人の様子を窺っていた。


「ハッハハッ・・・わかりました父上。いえ。アーノルド・ディ=アルベロ陛下。王国領東方諸島の開発を謹んでお受け致します」

現実逃避から舞い戻り、キリッとした顔で父王に告げるアルフレッド。

「それでは、これから向かうための準備を行いたく。御前を失礼致します」

と踵を返し部屋を出て行こうとすると


「ところで、余は島の名前を伝えてはいたかな」

「あっ・・・」

「島の名前を知らなければ向かうことすら叶わぬだろうて」

「あっはは・・・これは・・・その・・・」

思わず赤面して、回れ右。白い肌を茹で蛸のように染め上げて国王と向かい合う。


「アル。そのせっかちな性格を少しは直しなさい。まぁよい。其方が向かう島であるが」

「はッはい」

「王国領東方沖に浮かぶ島。《ライラック島》である」

「ライラック島!?あの何もない。唯々木が生えていて東外れに火山が存在するあの!?」

「その通りである。そのライラック島をこの王都のように多くの人々が快適に暮らせるよう開発せよ」


(うっ・・・一からの開発か・・・これは骨が折れる・・・あっ・・・もう一つ大事なことが)


「ちち・・・陛下。もう一つお伺いしたいことが」

「なんだ」

「ライラック島の人口は・・・」

「ゼロだな」

「さすがに100人は・・・ってゼロ!?まさかの人口無し!?」

「そうだな。いやしかし、アルとその従者が住み込むのだから、それに準じた人口になるか。」

「あぁ・・・」

(産業の基盤から、そこで働く人員、インフラ整備まで・・・体よく開発費を浮かせるか・・・ただまぁ・・・[この国の現状]を考えるとそうなるか)


アルフレッドは少しの時間逡巡し、承諾の旨を伝え、王の私室を辞していった。


「ふぅ・・・アルをやる気にさせるのも疲れる」

国王は椅子に深く座り込み、安堵とため息をつく。


「アル様にとかく甘い陛下にしては、よく頑張られましたね」

「あぁ・・・カレン殿にはお見通しだな」

アルフレッドが部屋を辞した後、連れだっては出ていなかったカレンが王に言葉をかける。

「アル様は、やる気になるととことんやりますから。ただ・・・やる気になるまでが長いのですがね」

「そこなのだ。そこなのだよカレン殿。はぁ…」

「お疲れ様でした」


ねぎらいの言葉をかける赤い双眸の侍女とその真正面に座る国王という何とも不思議な構図。


「しかし、カレン殿の敬語には未だに馴れんな─────」


国王の名前が判明!カレンの容姿も少しわかるお話となりました。


あくまでも容姿に関しては小出しにしていきます・・・。

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