製材所を作ろう①
畑から街に戻ってみると、何やら人集りができていた。
「ん?何かあったのですか?」
「ん?あぁ!アルフレッド殿。いやっ・・・なにストルネ殿が工兵と力自慢を集めると言ったら───」
ん?確かに人集めをお願いしたけれど・・・それが何でこんな人集りに?
「どうも腕比べ大会に発展してしまって・・・。今まで余裕無く暮らしていたために、祭り騒ぎもできずにいたところ、降って湧いた力自慢を集める声に・・・」
「なるほど。血が騒いだと。しかし・・・馬鈴薯だけですよ?」
「馬鈴薯だからこそですよ。余計な労力無くすぐに食べることができる・・・お陰で魚を獲る気力も戻りましたからね」
「なるほど・・・」
「ただ・・・もうそろそろ獣肉も食べたいですがねぇ・・・おっ!順番だ。それでは失礼致します」
「えぇ。教えていただき、ありがとうございます」
軽く会釈をして、人集りの中に消えていった男性・・・。こういう小さな娯楽も大切だよね。ただ・・・足りてくると次の欲求が生まれてくる。健全なんだけど・・・獣肉はなぁ・・・。
「アル!ついたぞ?そのまま歩いて行くと海に落ちるぞ?」
「おあっ!ごめん。ありがとう」
まぁまずは工場かな・・・。
「失礼します。ストルネ殿・・・。少々宜しいでしょうか」
この島の集落跡に関しては、殆ど覚えて入るんだけど。この港町は彼らが何処に住んでいるか分からないことだらけだから一応聞かないとね。
「おぉ。アルフレッド殿。どうなさいました?工兵についてはめぼしい者が見つかりつつありますが、力自慢はもう少しお待ちいただければ・・・」
「力比べの大会。あれ良いですね!活気があって。っと。一点お伺いしたいことがあって」
「何でしょう?」
「この辺りで、住居から少し離れてはいるが、歩けなくはない距離で広い土地はあります?」
「土地ならアルフレッド殿の方が良くご存知では?」
「いやぁ・・・何処に人が住んでいるかが分からないので・・・一寸音が大きい施設を作ろうかと思いまして・・・」
「?施設とは?」
「製材所を作ろうかと」
「成る程!であれば住居からある程度離れた方が良いですね・・・。少々お待ちを・・・」
待つこと5分。ストルネ殿は私達に紅茶と蒸かした芋を出してくれた・・・。
「アルフレッド様。流石ですね」
「なにが?」
「この馬鈴薯ですよ!───素朴な味ながら、確かな甘みを感じさせてくれる。ホクホクとした歯触りでありながら舌の上でとろけてしまう。それなのに、お腹には確りと貯まる。これは・・・活力を得るのに相応しい・・・。すぐ動きたくなると言う理由も分かります。私は、アルフレッド様がお持ちの色々な香辛料で味を調えていましたので・・・。純粋な素材の味に舌鼓を打ったのは今が初めてですが・・・これは素晴らしいですね」
「ふむ・・・確かにカレンが作った料理も旨いが。これは元々の素材も良かったのじゃな。しかし・・・若干魔力を感じるのう」
「やはりそうなのですね!でしたら・・・アルフレッド様の治癒魔法かと」
「おぉ!そうじゃ!アルの治癒魔法が蓄積されておるのじゃな。魔力のこもった食材は、手早く料理をしないと、内包された魔力が抜けてしまうと聞くしのぅ・・・。この食べ方は、とても効率が良いのかもしれんなぁ」
まぁ・・・私の魔法云々は抜きにしても、確かに標高の高いところや北方でも寒さが厳しいところでは、獣肉を生で食する文化があると聞くし。調理時間が短ければ短いほど、内包する魔力が抜けなくなるのは確実なのかもしれないな。
「───お待たせ致しました」
「いえ。こちらは・・・あとで回収させていただいても?」
「えぇ。もとよりそのつもりでお出しした次第です」
目の前に広げられたものは、この島の正確な地図であった。・・・やっぱり作ってたんだね。ただ・・・全体ではなくて、港を中心に1粁圏内か。一安心・・・。
「ははは。ご安心なされたご様子」
「すみません・・・地図作成は・・・」
「存じておりますとも。我々はある意味で運が良かったのかもしれません。あのまま天候がよく、食糧も潤沢であったならば・・・測地面積を拡げようと考えておりました故」
「・・・!もし拡げていた場合は・・・。王都にお連れしなければなりませんでした」
「えぇ。だからこそ本当に運が良かった」
「ですね・・・」
「それで・・・場所ですが・・・」
「おぉ。ここなら・・・」
「えぇ。今から向かいましょう」
「はい。カレン、エレン・・・何してるの?」
「はっ・・・アルフレッド様。失礼致しました」
「馬鈴薯談義をしておったのじゃ」
「まだしてたの!?まぁ良いけれど。2人はどうする?一緒に行く?」
「いえ。私は夕食の準備に入りますので・・・」
「ワシは一緒に行こうかのぅ」
「うん。じゃぁカレン。お願いね」
「畏まりました」
「では、向かいましょう」
「ここです。広さは・・・」
「100坪ほどですね・・・木を扱う工場としては少し手狭ですが・・・うん。収納庫を創れば何とかなるかな。人も歩いて来ることができるし」
「ふむ・・・。ですが・・・鉄がないですが・・・回転鋸は・・・」
「あぁ・・・機械ですね・・・。水を使うので鉄は必要ないですよ」
「水・・・ですか?」
「はい。細く勢いよく噴射することでものが切れるようになります。まぁ・・・魔道具はこれから創るのですがね・・・すぐ創れるのでご心配には及びません」
「アル・・・多分ストルネ殿が聞いているのはそう言うことではないと思うのじゃ」
「へ?だって・・・」
「水はどのようにして・・・ここは畑のアル高さと同じく、港より標高が若干高く位置して・・・抑も・・・乾燥させた木に水は御法度では・・・」
「あぁ───!水路!つくらないと!忘れてた!ストルネ殿!工兵の募集大至急で!」
「へっ!?水・・・使うのですか!?」
「私の創る魔道具には水が必須となるので!急かして申し訳ないですがッ!」
「わっ・・・分かりました!今日の夜には必ず」
「朝令暮改で申し訳ありません。よろしくお願いします!」
そう言ってストルネ殿が急いで帰っていった。申し訳ない・・・あぁ・・・。
「そんなところで四つん這いになっても仕方ないじゃろう。それより・・・やることが有るのではないか?」
「うぅうぅ・・・さんちゃん」
『「ハイ コウギョウユウチ デスネ」』
「うん」
『「デハ ヤマギリニホソナガイセンガ エガカレタモノヲセンタクシ ノウチトオナジヨウニ ヌリツブシテクダサイ」』
「おぉ・・・少し黄色い?」
『「ハイ ケイコウギョウ ナノデウスイイロデスネ」』
「へぇ!よっと」
「ふむ・・・農地と違ってワシには何が必要なのか分からぬ」
2人で工場予定地に入る。エレンには必要な資材が分からないらしい・・・あまりモノを製作してこなかったからかなぁ・・・。
「必要なのは長い丸太が10本・・・必要人員は5人。へ?5人で造れるの?後は魔道具と水・・・あっ建物だから必要なモノが全て揃ってから建てられるのか」
「農地と違って、後からにかするとうことが難しいからなのかのう」
「うぅん・・・多分そうなんだろうなぁ」
『「タテモノトナルト サスガニセイヤクガオオクナリマスネ モウシワケアリマセン」』
「いやいや。さんちゃんのせいではないよ。大丈夫!」
一寸やることが増えるけど・・・先ずは水路を造らないと・・・ん?木を切るのに水を使うと・・・乾燥の意味が無くなる・・・水じゃなくて風で切れるように工夫しないと・・・。あっ!軸を氷にして、風刃を回転させよう・・・。と言うか・・・製材って我が国ではどうしてたっけ・・・。