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畑作業と開墾と

「さんちゃん・・・誘致機能を」


『「カシコマリマシタ」』


これでよし!っと。農業の誘致を行うとにわかに3人が動き出した。私は、カレンとエレンに貝殻と海藻の補給をお願いし、作業をしているプルーナさんに話しかけた。


「さっき、糸瓜が育たなくなったって話したけど。あれって・・・」


「ん?あぁ!去年実家に帰った時、おかぁさんが言ってたってやつ?」


「そうそう!」


「えっとね・・・アタシが秋口に帰った時なんだけど・・・一昨年位から曇る日が多くなって、肌寒い日が続いているんだって。夏もあまり気温が上がらないから、不思議がってたんだ。でも、晴れた日は、いつも通り気温が上がってたから偶々なんだろうって。まぁ糸瓜は稀に花を咲かせずに終わってしまうものも有るから、そういう種に運悪く当たってしまったんだろうって」


「成る程」


「アタシが実家に居たときも晴れる日は当然あって、過ごしやすい気温だったよ。ただまぁ・・・糸瓜が採れなくても、他の作物を作って売れるから困らない。っておとぉさんも言ってたし・・・それがどうかしたの?」


「いやっ・・・一寸気になってね」


「ふぅん・・・。何か分かったら教えてね!」


「うん」


確かに曇りやすい日が続く。と言うことはあり得ない事ではないんだけど・・・うぅん・・・何か小骨が喉に引っかかる感じがするなぁ・・・。


「───様!アルフレッド様!」


「ん?あぁ。ごめん。また考え込んじゃってた。おかえりなさい。お遣いありがとう」


「いえ。何か気になることでも?」


「いやっ何となぁく物思いに耽ってただけだから気にしないで?」


「はぁ・・・」


「何じゃぁアル。答えが見つからんのか?」


「まっそんなところかな。分かったら教えるよ」


「はい」「うむ」


「それじゃぁ手早く・・・」


『「アルフレッドサマ」』


「ん?どうしたの?」


『「イゼンツクラレタ ヒリョウデシタラ アルフレッドサマノマリョクダケデ フクセイガカノウデス」』


「えっ!?」


『「モチロン スウダン コウカハ サガリマスガ」』


「それを早く言ってよぉ・・・。2人に余計な仕事を頼んじゃったじゃないか。あっでも、今回までこれを使って肥料を作って、次回からってのは有りだね。うん。そうしよう!───ところで、何でも魔力で複製可能なの?」


『「イエ アクマデモ アルフレッドサマゴジシンデツクラレタモノ ニカギリマス」』


「じゃぁ・・・見たことや触ったことが有るものは無理って事か」


『「ハイ タダ 」』


「ただ・・・?」


『「ワタシノカメラデキロクシテイタダケレバ ソノモノノ ショウサイナズメンヲ エガクコトガカノウデス」』


「おぉ!それは・・・どんなに小さくてもどんなに大きくても?」


『「ハイ ジンコウブツニカギリマスガ」』


「成る程・・・。これは良いことを聞いた。水路工事と港の工事が一気に進むかもしれないなぁ」


「そうなのか?」


「うん。例えば、誰かが1つ管を作ったとする」


「ふむふむ」


「それをさんちゃんに記録して、誘致した土地の中で作ることができれば・・・」


「正確に同じものを作ることができる!」


「うん!」


『「アァ タイヘンモウシアゲニクイノデスガ オナジモノツクルニハ コウバヲツクラナイトデス ソモソモ モノヲツクッタケイケンノアルヒトデナイト」』


「まぁそれは農地でも経験してるから大丈夫!ようは、設計図を書く必要なく、また、工場で働く人たちの頭の中に直接必要なものを教えはことができるって言うことに感動したのさ」


『「ナゼテズカ」』


「人口が限られている。しかも色々な経験をして居る人が多い。即ち、即戦力に溢れていると言うこと。本当は、教育に力を入れないといけないことなんだけど、そんなことをしていたらストルネ殿達を祖国に帰すことが遅くなってしまう。だからこそ、手早く済ませることができるならそれに越したことはないってことさ。まぁ・・・作ってもらう人たちにはしっかり休みを取ってもらうけどね」


「お休みは大事だよねぇ」


「うん。まぁ色々と作ってもらうものが有るから・・・沢山人を集めないとだけどね・・・と言うことは教育も必要なのか・・・?うぅん─────」


「あぁなってしまっては」


「長いのじゃ」


「だねぇ・・・」



───あっ!そうか・・・徒弟制度か・・・。でも・・・元々が同じ隊の方々だしなぁ・・・。ストルネ殿にそうだ・・・


「ん?ん?あれっ?皆!?」


あっ奥の方で木を切る音がする・・・。


「あっ!こんな所にいたんだ!探したよぅ」


「だってぇ・・・」


「アルフレッド様・・・」


「何時もの悪い癖が出てたからのぅ。放置したのじゃ」


「直球過ぎる・・・で?あぁ。整地作業か。その木、乾燥させて建材に使うからとっておいてね!」


「ほむ・・・橅や欅が多いが大丈夫か?」


「うぅん・・・まぁ正直な話しさ、乾燥後に硬化の魔法かけちゃうから大丈夫」


「建材屋も形無しじゃのう」


「でも、この国では一般的な方法だよ?」


「まぁのぅ・・・自然と共に生きる。間伐材は軟らかいものは硬くして、硬いものは作るものによって、加工しやすいよう均す。森人族の知恵じゃな」


「まね!木。というか自然は我々が操作してはいけない。共に生きる隣人だからね」


「成る程ねぇ」


「私達が生きるための糧も燃料も何もかもを齎してくれるのが自然です。私もアルフレッド様に拾われるまでは、自然は己に牙を剥く獰猛な存在としか思っていませんでした。しかし、今の生き方を教えられ、恐れ敬いながらも、良き隣人と思い暮らしています。まぁ・・・稀に容赦ない脅威に晒されますが・・・」


「まぁね。現にアタシ達は晒されていたわけだから・・・ね。ささ!こんな話しより、木を乾燥させて木材にしよ!」


「うん。と言ってもまだ、木材にはならないけどね」


「なんで?」


「乾燥させて、皮を剥いで・・・要するに製材しないと。建物の柱や梁、今手に持っている鍬なんかに使っている木の部分も皮はついていないでしょ?木材にするにも色々と行程があるからね・・・あっ!この島には製材所というか・・・工場(こうば)がない!取りあえず・・・木を乾燥させて、私の持っている携帯倉庫に収納しちゃおうか・・・。その前に、切株と根っこを取り除いて、畝を作ってからだけどね」


「あっ!それ大事!」


プルーナさん達は、話を終えると切株を掘り起こし、根を取り除き、土を篩にかけて軟らかくし、畝を作った。この間約30分・・・流石農業用地・・・。と言うかこのスキルは有能なのでは?動いていた本人達もあまり疲れは感じないみたいだし・・・ただ、今後身体を素早く動かした反動が出るかもしれないから注意は必要かな。


「さっ!胡瓜と南瓜と糸瓜・・・っと!今の時期植えられるのは、胡瓜だけか。皆、この苗を等間隔に植えてね」


「えっ・・・この苗は何処から?すみません私なんかが質問して・・・すみません」


「ん?あぁ!これは、ここに来る前に買っていたモノだから気にしないで!さぁ植えてしまおう!」


ものの10分で30本ほどの苗を植え終わると、さんちゃんが言った。


『「キュウリハ ツルセイナノデ ソエギヲシナイト ハタケジュウニハンモシテ タイヘンナコトニナッテシマイマスヨ」』


「あぁ・・・忘れてた。どの位の高さにするべき?ここはよく育つから・・・」


『「2メートルホドデ ヨイカト」』


「わかった。ありがとう」


そう言って私は、先程切った木の枝から添え木を作り、苗の近くに刺していった。どうやら明日には収穫できるらしい。

さぁ街に戻って、今度は第二次産業を興さないと!

次からいよいよ加工製造に関する部分に入ります。農業は一時お休みです。

今後ともよろしくお願いします。

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